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加計学園をめぐり「総理のご意向」などと記された文書について、文部科学省は6月15日午後、19の文書のうち14の文書の存在が確認できたと発表した。
松野文科相は「大変申し訳なく、結果を真摯に受け止めている」と陳謝した。
加計学園の獣医学部の新設をめぐり、「総理のご意向」などと記された文書について、文部科学省が再調査を実施する方針を固めた。

1. いま取りざたされているのは、「総理のご意向」「官邸の最高レベル」と書かれた文書だ。

2. 文書の真贋、そして存在の有無に焦点が当たっているが、問題の本質はここにはない。獣医学部設置をめぐり、本当に「行政が歪められた」(前川氏)のか、否かだ。

3. そもそも、獣医学部はこれまで、獣医師の増えすぎを防ぐために新設が抑制されていた。
実際、今治市と加計学園は2007年から新設を15回にわたって求めてきたが、いずれも文科省によって認められていなかった。
民主党政権下の「構造改革特区」でも検討は進んでいたが、節目は安倍政権下で「国家戦略特区」が生まれてから訪れる。
2015年6月に閣議決定された「日本再興戦略」で、獣医学部設置についての以下の条件が示されたのだ。
現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。
つまり、新たな分野における獣医学部の需要が明らかになり、いまのままでは不十分だとした場合に設置ができる、ということだ。
当時の国家戦略特区担当相が石破茂氏だったため、「石破4条件」とも呼ばれる。これさえ満たせば、獣医学部を新設するという規制緩和が可能になる、ということだ。
この特区を決める内閣府「国家戦略特別区域諮問会議」の議長は、安倍晋三首相が務めている。
4. 加計学園の新設を認めた決定は、この4つの条件をクリアしていないままにされた、という指摘がある。

前川氏が「行政が歪められた」というのも、この点だ。会見ではこう語っている。まず、内閣府への批判だ。
「4つの条件に合致しているかどうかを判断すべき責任がある内閣府は、そこの判断を、十分根拠のある形でしていない」
そして、農林水産省と厚生労働省への批判もある。
「将来の獣医学部で養成すべき人材について、その人材需要を明確に示すべき農水省、厚労省は人材需要について見通しを示していない」
これらが満たされぬままに文科省が設置認可を審査するステップまできてしまったことに、問題があるという見方だ。
「極めて薄弱な根拠のもとで規制緩和が行われた。また、そのことによって、公正公平であるべき行政がゆがめられたと私は認識しています」
5. 野党は、こうした状況の裏側には「加計学園ありき」という考え方と、首相への「忖度」があったのではないか、との批判を強めている。

今治市が正式に獣医学部の新設を目指したのは2016年1月。この年の3月には京都府が同様に名乗りをあげた。
しかし、2016年9〜10月の記録とされる「文書」の中では、内閣府側が今治市に言及するこんな文言がある。
「今治市の区域指定時より『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況で、これは総理のご意向だと聞いている」
「平成30年4月にこの学部を開学するのを大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。成田市ほどは時間はかけられない。これは官邸の最高レベルが言っていること」
京都か今治かまだ決まっていない段階から、「今治・加計ありき」だったようにも受け取れると、野党は批判している。前川氏も会見でこう指摘している。
「関係者の間の暗黙の共通理解としてあったのは確かだと思います。この、国家戦略特区で議論している対象は今治市で設置しようとしている。加計学園の獣医学部だという共通認識のもとで仕事をしていたと認識している」
特区諮問会議が獣医学部新設を認めたのは2016年11月。「空白地域」に限るという条件がつけられたため、すでに獣医学部のある関西圏の京都府は脱落した。
6. 2015年4月、今治市の職員が官邸を訪れていることも明らかになっている。「石破4条件」が示される2ヶ月前のことだ。

7. 加計学園の獣医学部設置に際しては、多くの税金が投入される。
