【加計学園】「総理のご意向」文書の存在ではない 問題の本質は別にある

官僚の忖度があったのか、そして前川喜平・文科前事務次官が言う通り「行政が歪められた」のか。改めて問題点をまとめました。

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加計学園をめぐり「総理のご意向」などと記された文書について、文部科学省は6月15日午後、19の文書のうち14の文書の存在が確認できたと発表した。

松野文科相は「大変申し訳なく、結果を真摯に受け止めている」と陳謝した。

加計学園の獣医学部の新設をめぐり、「総理のご意向」などと記された文書について、文部科学省が再調査を実施する方針を固めた。

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6月9日、松野博一文科相が発表した。「文科省に寄せられる国民の声をもとに総合的に判断した」といい、安倍晋三首相からは「徹底した調査を速やかに実施するように」との指示があったという。

BuzzFeed Newsはこれまでの報道や国会答弁、取材をまとめ、7つの項目でこの問題を振り返る。

1. いま取りざたされているのは、「総理のご意向」「官邸の最高レベル」と書かれた文書だ。

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この文書は、2016年9〜10月に内閣府と文科省の間で開かれた会合を記録したものとされる。

獣医学部の新設が政府に認められる前から、すでに今治市で加計学園の学部新設を進めるよう、内閣府が文科省に求めているような内容だ。

5月17日に朝日新聞が報じた当初、菅義偉官房長官は「怪文書のようなもの」と一蹴。文科省も関係者数人へのヒアリングや共有フォルダなどの調査をもって「存在は確認できなかった」としていた。

しかしその後、前川喜平・文科前事務次官が文書は本物だと証言。さらに、NHKは文科省が調べなかった職員の個人PCに文書がいまも存在していると報じ、朝日新聞も「省内の複数の部署で共有されていた」ものだと伝えた。

政府は当初、「文書の出所や入手経路が明らかにされていない」ことを理由に再調査を拒否し、野党などは反発。

6月9日になって突如として、再調査の方針を決めた。「国民の声」を受けたもので、総理からは「徹底した調査を速やかに」との指示があったという。

2. 文書の真贋、そして存在の有無に焦点が当たっているが、問題の本質はここにはない。獣医学部設置をめぐり、本当に「行政が歪められた」(前川氏)のか、否かだ。

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「総理のご意向」「官邸の最高レベル」と発言したと前川氏が名指ししたのは、内閣府の藤原豊審議官。

藤原審議官は、内閣府で国家戦略特区を取り仕切る事務方の実質トップだが、「申し上げたことは一切ない」と発言を否定している。

また、これらの発言があった会合の存在が「確認できない」という閣議決定までされている。

安倍首相が学園の加計孝太郎理事長とアメリカ留学時代からの「腹心の友」であることから、「官僚による忖度があったのでは」と野党が批判しているこの問題。

ただ、前川氏が会見で訴えたのは、この文言による「忖度」の有無だけではなかった。今治市が「国家戦略特区」に認定されるまでのステップに問題がある、という点を強調したのだ。

3. そもそも、獣医学部はこれまで、獣医師の増えすぎを防ぐために新設が抑制されていた。

実際、今治市と加計学園は2007年から新設を15回にわたって求めてきたが、いずれも文科省によって認められていなかった。

民主党政権下の「構造改革特区」でも検討は進んでいたが、節目は安倍政権下で「国家戦略特区」が生まれてから訪れる。

2015年6月に閣議決定された「日本再興戦略」で、獣医学部設置についての以下の条件が示されたのだ。

現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。

つまり、新たな分野における獣医学部の需要が明らかになり、いまのままでは不十分だとした場合に設置ができる、ということだ。

当時の国家戦略特区担当相が石破茂氏だったため、「石破4条件」とも呼ばれる。これさえ満たせば、獣医学部を新設するという規制緩和が可能になる、ということだ。

この特区を決める内閣府「国家戦略特別区域諮問会議」の議長は、安倍晋三首相が務めている。

前川氏が「行政が歪められた」というのも、この点だ。会見ではこう語っている。まず、内閣府への批判だ。

「4つの条件に合致しているかどうかを判断すべき責任がある内閣府は、そこの判断を、十分根拠のある形でしていない」

そして、農林水産省と厚生労働省への批判もある。

「将来の獣医学部で養成すべき人材について、その人材需要を明確に示すべき農水省、厚労省は人材需要について見通しを示していない」

これらが満たされぬままに文科省が設置認可を審査するステップまできてしまったことに、問題があるという見方だ。

「極めて薄弱な根拠のもとで規制緩和が行われた。また、そのことによって、公正公平であるべき行政がゆがめられたと私は認識しています」

今治市が正式に獣医学部の新設を目指したのは2016年1月。この年の3月には京都府が同様に名乗りをあげた。

しかし、2016年9〜10月の記録とされる「文書」の中では、内閣府側が今治市に言及するこんな文言がある。

「今治市の区域指定時より『最短距離で規制改革』を前提としたプロセスを踏んでいる状況で、これは総理のご意向だと聞いている

「平成30年4月にこの学部を開学するのを大前提に、逆算して最短のスケジュールを作成し、共有いただきたい。成田市ほどは時間はかけられない。これは官邸の最高レベルが言っていること

京都か今治かまだ決まっていない段階から、「今治・加計ありき」だったようにも受け取れると、野党は批判している。前川氏も会見でこう指摘している。

「関係者の間の暗黙の共通理解としてあったのは確かだと思います。この、国家戦略特区で議論している対象は今治市で設置しようとしている。加計学園の獣医学部だという共通認識のもとで仕事をしていたと認識している」

特区諮問会議が獣医学部新設を認めたのは2016年11月。「空白地域」に限るという条件がつけられたため、すでに獣医学部のある関西圏の京都府は脱落した。

6. 2015年4月、今治市の職員が官邸を訪れていることも明らかになっている。「石破4条件」が示される2ヶ月前のことだ。

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野党はこの点について、事前調整だったのではないか、と指摘している。

いずれも、野党が情報開示をして得た、今治市の行政文書に基づいたものだ。しかし、政府側は「記録が確認できない」との答弁を繰り返すのみ。

実際のところはどうなのか。今治市企画課の担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、訪問の事実を認めた。

「国へ向いて常に陳情や要望活動をしているので、その一環としてその職員2名が官邸を訪問したことは事実です。ただ、相手方内容については今治市情報公開条例の趣旨により、お答えは差し控えさせていただいている」

7. 加計学園の獣医学部設置に際しては、多くの税金が投入される。

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今治市に新設される獣医学部の土地(評価額36億7500万円)は今治市から無償で、さらに事業費の半分(96億円)が市から提供される。また、私学助成金も毎年支給されることになる。

民進党の青柳陽一郎議員は、国会でこう指摘した。

「これはスキャンダルではなく、税金の使い道の問題です」

2017年3月の答弁で、問題について「働きかけがあれば、責任を取る」と明言している安倍首相。6月の答弁ではその内容について「申し上げる必要はない」と語っている。

Kota Hatachiに連絡する メールアドレス:Kota.Hatachi@buzzfeed.com.

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