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菅首相「ワクチン接種、先進国の中で最速」はミスリード。会見で強調、実際は…

菅首相の発言があったのは、東京に4度目の緊急事態宣言を発令することになったことを受け、7月9日に開かれた記者会見。「先進国の中でも最も速いスピードだと言われてます」などと述べた。

日本での新型コロナウイルスワクチンの接種状況について、菅義偉首相が会見などで「世界で最もスピード接種」「先進国の中でも最も速い」「先進国でも例を見ない速さ」などと発言した。

これは、「ミスリード」だ。たしかに日々の接種数では日本が主要7カ国(G7)でここ最近は1位だが、それは各国よりも接種の開始が遅れたため。

全体の接種率や、日々の接種数の人口比でみると日本は上位にいるとは言えない。そのほか、首相の発言には誤りもある。BuzzFeed Newsは、ファクトチェックを実施した。

AFP=時事

菅首相の発言があったのは、東京に4度目の緊急事態宣言を発令することになったことを受け、7月9日に開かれた記者会見。

冒頭発言で日本のワクチン接種状況について、「自治体や医療などの関係者のご尽力により、今や世界でも最もスピードで接種が行われていると言われてます」(原文ママ)と強調。

また、そのあとの質疑応答でも、一部自治体で供給の不備が生じていることに対して、「先ほど申し上げましたけれども、先進国の中でも最も速いスピードだと言われてます」と述べた。

さらに会見に先立ち開かれた対策本部でも「先進国の中でも例のない速さで接種が行われており」発言している。

菅首相は、何をもってしてこの「速さ」を強調しているのか。

BuzzFeed Newsの取材に応じた内閣府広報室によると、データの出元はワクチン接種の状況などをまとめているサイト「Our World in Data」で、河野太郎担当相が7月2日の会見で示した、同日13時時点のものであるとしている。

割合は最下位、接種数でも?

Pool / Getty Images

このデータだけをもとに「最速」と強調するのは正しいのだろうか。

BuzzFeed Newsが同様に「Our World in Data」で主要7カ国(G7)やその他の国との比較(7月6〜7日現在)からまとめた結果がこうだ。


  • 1度でも接種した人の割合はG7で最低(総数は6位)
  • 2度接種した人の割合もG7で最低(総数は6位)
  • 100人当たりの接種数(6月下旬〜7月上旬)はG7で2〜5位
  • 100人当たりの接種ペース(同上)はカナダが日本よりも速い
  • 日々の接種数(7日間平均)は6月後半以降、G7で1位になることもあるが、アメリカと競り合っている。
  • ただし、1日の接種数の最多はアメリカの338万回。日本は最多119万回。
  • G7以外だと日々の接種数はインドがはるかに多い。

ここからわかる通り、全体の接種率や、100人あたりの接種数で、日本は上位にいるとは言えない。

一方、日々の接種数については、首相の言う通りここ最近のデータでは「先進国で最多」となるが、それは他国よりも接種の開始が遅れ、すでに他国で接種の伸びが鈍化するなかで日本の接種数が増えたからだ。

また、内閣広報室が言及したデータは、G7からアメリカが抜けていることにも留意が必要だ。アメリカの接種回数からすると、日本の接種が「先進国でも例を見ない」というのは正しいとは言えない。

また、インドのように現状で日本よりも日々の接種数が多い国があるため、「世界で最も」というのも誤りだ。

実際にデータを見ると…

まず、少なくとも1度ワクチン接種をした人の割合(人口比)で見ると、トップは68.97%のカナダ。2位は67.05%のイギリスで、日本は26.49%と最下位であることがわかる。

また、割合ではなく総数だけを見ても、日本は6番目になる。

Our World in Data

2回の接種を終えた人の割合(人口比)を見てみると、1位は50.12%のイギリス。2位は47.22%のアメリカだ。

日本はやはり最下位の15.13%となる。下から2番目だったカナダが、6月に入り日本よりもペースをあげていることもわかる。

また、こちらも割合ではなく総数では、6位になる。

Our World in Data

日々の接種回数(人口100人あたり)でみると、やはり1位はカナダになる。

すでに全体の接種率が高いアメリカやイギリスではペースが鈍化していることもわかる。

日本は6月下旬には「瞬間風速的」に2位だったこともあるが、その後ペースは落ち、5位に下落している。

Our World in Data

この「100人あたりの接種回数」のグラフは、河野太郎担当相が自らの英語版Twitterで「悪くないでしょ?」とツイートしたことでも注目された。

河野担当相のグラフでは日本が上位にいるように見えるが、G7で首位のカナダが含まれていないことがわかる。

また、上述の通りこれはツイートした6月27日ごろ、もっとも日本のペースが高かった時期の「瞬間風速」であるといえる。

Twitter: @konotaromp

一方、日本が1位になるデータもある。日々の接種数の1週間平均を出すと、アメリカと日本が競り合い、現状はトップになっていることがわかる。

これは前述の通り、各国は日本より接種が先行しているため。最近は接種回数の伸びが鈍化した一方、接種開始が各国より2ヶ月ほど遅かった日本では最近になって接種数が増えているからだと言える。

なお、内閣広報室の担当者はBuzzFeed News取材に対し「日本が頭ひとつ抜けている」と説明していたが、出元となったデータからは前述の通りアメリカが抜けているため、そのような状況になっていると言えるだろう。

実際、6月22日〜7月1日までは日本が1位だが、2〜4日はアメリカが1位になる。5日以降は、再び日本が1位と競り合っていることがわかる。

また、1日の接種が最多だったのはこのデータ上ではアメリカの4月13日の338万回となる。現段階における日本のピークは、6月27日の119万回だ。

Our World in Data

さらに、菅首相は「世界で最もスピードで接種」とも述べているが、G7以外を含めると、下のグラフのように、最近ではインドやブラジルが日本を上回っている。

Our World in Data

こうしたことから、菅首相の一連の発言は、データを切り取った「ミスリード」であると言える。

もちろん、東京五輪を前にして、日本のワクチン接種が一気に加速しているのは事実だ。しかし、五輪が開催されるにもかかわらず、G7各国に割合でも、総数でも及んでいないこともまた、事実である。

菅首相は会見で、7月末には希望するすべての高齢者の2回接種が終わる予定であると強調。同月中に、感染減少に一定の効果がみられる可能性がある国民4割の1回接種を終えることを目指すとしている。

一方でグラフからもわかる通り、日々の接種数は7月に入り減少に転じている。ワクチンの一部自治体への供給に滞りが生じたり、職域接種の新規受付が停止されたりするという事態も起きている。


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