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Updated on 2020年10月8日. Posted on 2020年2月4日

ネットで拡散「新型コロナウイルスの危険度と対策」を医師が検証した結果… 「気軽に情報ひろめないで」

「インフルエンザより恐ろしい」「ウイルスは48時間生き続ける」「服はアルコール消毒、ゴーグルで角膜感染を防ぐ必要がある」「発熱せず死亡する」「治療の後遺症で亡くなる人がいる」「人工的とみられる特徴がある」などの情報をファクトチェックした。

「新型コロナウイルスの危険度と予防・対策」をまとめた4枚の画像が一時期、ネット上で拡散した。

ネット上に広がっている様々な情報を集めたもので、すでにツイートは削除されているが、過度に不安を煽るなど、誤りやミスリードを多く含む内容となっていた。

BuzzFeed Newsは、米国国立研究機関博士研究員として免疫学やウイルス学を専門とする峰宗太郎医師の協力を得て、それぞれの情報について、ファクトチェックを実施した。

Twitterより

一時、Twitter上で拡散していたのは「新型コロナウィルスの危険度と予防とコロナウィルスに掛かった時の対策をまとめました」という4枚組の画像だ。

「インフルエンザより恐ろしい」「ウイルスは48時間生き続ける(インフルとノロのハイブリッド)」「服はアルコール消毒、ゴーグルで角膜感染を防ぐ必要がある」「発熱せず死亡する」「治療の後遺症で亡くなる人がいる」「人工的とみられる特徴がある」

上記のような内容をまとめた4枚組の画像は、一時5000リツイート、1万いいねを超えるほど拡散していた。ツイートには「日本の医者は(ウイルス感染症対策の)専門では無いので対策方法が間違ってます」などという言葉もあった。

指摘が相次いだこともあり、その後、一部の内容については修正されているほか、元々拡散したツイートは謝罪のうえ、削除されている。

BuzzFeed Newsが、ツイートやYouTubeで発信されていたいくつかの情報について取材したところ、峰医師は「大きく間違っているというより、針小棒大にいったり恐怖感を煽ったりしてつくられているものが多い」と指摘した。

発信者は自らのYouTubeでもその内容を抜粋して伝えており、情報は一人歩きしている可能性が高い。以下、ファクトチェック結果を一覧にまとめた。

インフルエンザより恐ろしい?

AFP=時事

中国・武漢、1月30日

拡散している内容:インフルエンザと同じくらいの感染力だが、恐ろしいのはインフルエンザよりも長い潜伏期間。最大14日の潜伏中に感染する

ウイルスの感染のしやすさというのは基本再生産数R(0)という数字(1人の感染者から感染をひろげた人数の平均値)が大事です。

今回の新型コロナウイルスのR(0)については現時点で1.4-2.6程度と推測されています(ただしこれは状況により変わってきます)。

季節性インフルエンザウイルスでR(0)は1.4-4ですから、感染力しやすさという意味では同じぐらいといって良いかもしれません。

新型コロナウイルスの潜伏期間については2〜14日程度に収まるようです。インフルエンザの場合は1〜4日と考えられますので、新型コロナウイルスのほうがやや長いですね。

潜伏期間にどの程度ウイルスが排出される、つまり他者に感染させる可能性があるかについてはわかっていないのが現状です。基本的には発症者からより感染しやすく、無症状であると感染させにくいとは推測されますが断定はできません。

症状がないときに他者にうつすとすると、知らずにうつしてしまう可能性はたしかにあります。しかし単純比較はできず、基本再生産数の検討も仕方によってはこの要素も含まれることになりますので、そこまでインフルエンザとは差がないとも考えられます。

拡散している内容:コロナウイルスは日本で100万人近くが感染する可能性がある。

現時点で推測しようもなく、この可能性は、「可能性」という言葉では0ではないでしょうが、根拠は全くないですね。

ウイルスは48時間生き続ける?

AFP=時事

アメリカ疾病予防管理センターが作成した新型コロナウイルスのイメージ

拡散している内容:金属に付着してもウイルスは48時間生き続ける(ノロウイルスとインフルエンザのハイブリッド的な感染経路)

新型コロナウイルスが環境中でどの程度の長さ経てば不活化(感染力を失う)するのかは不明です。


インフルエンザウイルスの場合には8時間程度は感染力を維持することがあると考えられており、コロナウイルスもそれに近い可能性はあります。48時間という根拠はないでしょう。

ノロウイルスは環境中で乾燥しても20日ほど活性状態を保っています。ちなみにノロウイルスの基本再生産数 R(0)は2-4と推定されています。

コロナウイルスは「ノロウイルスとインフルエンザのハイブリッド」というようなことはなく、どちらかといえばインフルエンザに近いものと考えてよいでしょう。

拡散している内容:感染した中国人観光客の触った手すりが感染源になる。

手すりなどに感染者が唾液・鼻水などで汚染された手でさわったり、しぶきが付着したりすれば感染源になる可能性は否定できません。

手洗いが奨励される理由でもありますが、中国人観光客以外にも感染者はすでにでています。人種差別的ですね。

洋服のアルコール消毒に、ゴーグル着用?

時事通信

東京都内で売り切れたマスク

拡散している内容:感染対策は手洗いうがい(イソジンでのうがい必須)顔洗い、鼻洗い、眼洗いも

手洗いは正しいでしょう。接触感染対策として重要です。

うがいの効果ははっきりしません。風邪症候群に対する検討ではイソジンなどのうがい薬を使うほうがむしろ成績が悪いぐらいのものなので、水道水で十分でしょう。イソジンなどの効果は実証されていないということです。

顔洗い、鼻洗い、目洗いについては実証されていません。

拡散している内容:マスクは着用必須(N95マスクでないと意味がない)

一般的なマスクは完全な予防効果はなく、発症者がしぶきをまき散らすのを抑えるために使うことが推奨されるものです。もちろん多少はリスクを下げるかもしれませんが、過信はできないですね。

N95マスクを使用すれば確かにリスクはかなり減らせますが、正しく装着し長時間つけているのは不可能であり、これも一般に対しては推奨されません。

拡散している内容:帰宅後は上着や着用したものをアルコール消毒、防水用ゴーグルで角膜感染を防ぐ必要もある

上着などをアルコールで完全に消毒するのは困難です。

消毒薬というのは濃度・温度・時間の要素で効きますので確実に消毒するならびちゃびちゃに浸してしまう必要が出てきます。時間がたてばウイルスも不活性化しますので、クローゼットなどに入れておけばよいでしょう。

ゴーグルは飛沫感染対策として濃厚接触時、つまり医療従事者などでは推奨されますが、一般にはしぶきを直接浴びないのであれば必要ありません。

発熱せずに死亡する?

AFP=時事

中国・武漢の病院、1月24日

拡散している内容:恐ろしい点は他の持病との併発により、体の抵抗力がなくなり肺や肝機能の停止により発熱せず死亡する

そういう症例は報告されていません。

The Lancet(1月24日30日)に報告された入院例では肺炎の発症は100%でした。発熱は80%以上にみられています。

合併症としては急性呼吸窮迫症候(ARDS)などが起きますが、これは肺炎が重症化すると起こりえます。腎不全も報告されていますが、これは全身状態が悪くなると起こりえます。

体の抵抗力がなくなる、というのは表現が漠然としていますが、エイズなどのように免疫細胞が直接ダメージを受けるという証拠はなにもありません。

新型コロナウイルスによる病態は、全体として重症肺炎として臨床的にも理解可能な病態であると考えられます。重症肺炎自体が恐ろしいですが、これはインフルエンザや麻疹、細菌性肺炎でも同様です。

拡散している内容:ステロイド治療かリバビリンでの治療になる。ステロイドは体に悪く、後遺症で亡くなる人がたくさんいる

ステロイドではなくインターフェロンという薬がまずは主に使われるでしょう。これについてはSARSなどの治療経験が活かされることになると思われます。

ARDS などでは場合によってはステロイドの使用も考慮されますが、その後遺症が原因で亡くなるということはほぼないでしょう。

リバビリンは候補薬として挙げられていますが、他の抗ウイルス薬のほうが有用かもしれません。現時点でリバビリンが治療薬ということではないですね。

後遺症で亡くなる人、というのは嘘です。

人工的なウイルスの可能性が高い?

AFP=時事

中国・武漢の病院、1月30日

拡散している内容:毛の数が自然界で生まれないはずのため、人工的なウイルスの可能性が高いらしい。人工的なウイルスは自然のウイルスに弱く、自然淘汰に頼る必要がある。自然の多い状況で換気して寝ると治る

ありえません。まず毛ではなく(絨毛でもないので)スパイクという構造を指しているのだと思いますが、コロナウイルスにはスパイクは多くあり、これは自然のものでもあります。

人工的にウイルスを作るとしても、そのような構造に大きな差があるほどのことはないでしょう。人工的なウイルスというのが何をさしているかわかりませんが、自然のウイルスに弱い云々はナンセンスです。

自然淘汰に至っては全く意味不明です。自然の多い状況というのも意味不明ですね。インフルエンザやノロウイルス天然ものですが、そこで深呼吸すればうつるでしょう。

拡散している内容:日本の医者は国家試験でウイルスの勉強をしないため「ウイルス感染症対策」について無知

これについては嘘です。

微生物学というのは医学部の教育において重要なものでカリキュラムに組み込まれています。基本的に、細菌学・ウイルス学・寄生虫学を中心に微生物、特に病原性微生物については学習することになっています。

また、そういった基礎的な微生物学を土台とし、内科学の一環として感染症学を学ぶことになっています。感染症は全身臓器にわたるため、横断的にひろく学ぶ形になります。

さらに、薬理学では抗生剤・抗ウイルス薬も重要な部分を占めますので、治療学の面からも学習しているといえます。公衆衛生学、感染制御についても国家試験に出されており、予防や制御についても学びます。

パニックや実害につながるおそれ

時事通信

「新しい、未知の感染症がひろがると情報が錯綜し、事実の確認が難しくなります」

新型コロナウイルスをめぐる情報に関し、峰医師はBuzzFeed Newsの取材にそう語る。大切なのは「公的な情報源を複数利用」することだという。

「新しいものに対しては急速に新しい情報がでてきますが、わかっていないことや不確かな情報が多く混じります。できるだけソースが明らかで、根拠が明確で、複数の人によって確認がなされた情報を、できれば公的な情報源を複数利用して入手するのが大切です」

ネット上では、根も葉もないデマから善意の「真偽不明」情報までが入り混じっている状況だ。そうした内容は過度に不安を煽るものや、差別や排外的なものも多い。峰医師も「パニックや実害」が招かれることを危惧する。

「ソースがわからないものや根拠が不明確な情報は、『その可能性だってあるではないか』という理屈でひろめる人も多くいますが、結局は踊らされることになったり、パニックなどで実害を及ぼされたりすることにもなりかねません」

「こういった時には専門家であってもわからないことは多いものです。憶測・推測、ましてや妄想でものをいうべきではなく、聞いたこと見たこと検索したことを信じ込むべきでもありません。入手した情報を気軽にひろめないことも非常に重要です。煽られて不安になるのではなく、より確実な情報を入手し『正しく恐れる』ことが大切であると思います」


厚生労働省のQ&Aサイトはこちらから。峰医師もブログで新型コロナウイルスに関する情報を発信している。

また、世界中で広がる「あやしい情報」のファクトチェック一覧はNPO法人「ファクト・チェック・イニシアチブ」(FIJ)の特設サイトで見ることができる。

BuzzFeed Newsでも「新型コロナウイルス どれぐらい警戒したらいいの? 感染症のスペシャリストに聞きました」などのコンテンツを配信しています。一覧はこちらから。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知しました。

また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。

  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。


Contact Kota Hatachi at kota.hatachi@buzzfeed.com.

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