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「韓国が小池知事に謝罪と賠償を要求」は誤り。関東大震災の朝鮮人虐殺めぐり、まとめサイトが拡散

韓国側の大学教授らが求めている内容は、都内で毎年9月1日に開かれている虐殺の追悼式典に「小池知事に追悼文を送ってもらうこと」であり、謝罪と賠償ではない。追悼文をめぐっては、小池知事が就任翌年の2017年から、歴代の知事が送ってきた送付を止めたという経緯もあることに留意が必要だ。

関東大震災後の混乱のさなか流されたデマなどによって、朝鮮人らが虐殺されたことをめぐり、「韓国が小池百合子都知事に謝罪と賠償を要求」などという情報がネット上に拡散している。

この情報は、「誤り」だ。韓国側の大学教授らが求めている内容は、都内で毎年9月1日に開かれている虐殺の追悼式典に「小池知事に追悼文を送ってもらうこと」であり、謝罪と賠償ではない。

追悼文をめぐっては、小池知事が就任翌年の2017年から、歴代の知事が送ってきた送付を止めたという経緯もあることに留意が必要だ。BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

(*この記事にはヘイトスピーチの文言が直接含まれます。閲覧にご注意ください)

まとめサイト「ツイッター速報」によって広がっている情報は、以下のようなタイトルの情報だ。

「韓国 小池都知事に関東大震災時の朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだぞデマ虐殺の件で謝罪と賠償を要求」

韓国日報の8月31日付の記事を引用。さらに5ちゃんねる上の「キチガイタカリ国家だからほっておけ」「チョンコは殺されて当然のことをしてた」「朝鮮人虐殺って証拠あるの?」などという書き込みをまとめている。

明確にヘイトスピーチと言えるような発言のほか、歴史修正の流れを汲んだものもあり、憎悪や偏見を煽る内容となっている。

「ツイッター速報」の記事はTwitter上で500近くリツイートされている。また、同様の記事はほかの複数のまとめサイトにも掲載されている。

しかし冒頭に記した通り、この件をめぐって韓国側が「謝罪と賠償を要求」したというのは、誤りだ。

そもそも、もとの韓国日報の記事で紹介されているのは、小池知事に対して追悼文を送ることを求め、日本国内のTwitterで広がったハッシュタグキャンペーン「#小池百合子は9月1日に追悼文を送れ」のことだ。

なお、「Yahoo!リアルタイム」で分析する限り、8月31日〜9月2日にかけて、このハッシュタグを付けた投稿が3000件以上あることがわかる

そのうえで、記事では韓国の大学教授が、このキャンペーンに韓国人も参加するよう訴えているという内容になっている。

ツイッター速報などに記されているような「謝罪と賠償」という文言は明記されていない。

BuzzFeed Newsは記事の元になっている教授のFacebook投稿も確認したが、それは同様だった。つまり、事実でないことは明らかだと言えるだろう。

追悼文めぐる経緯は?

大前提として、関東大震災後の混乱で多数の朝鮮人らが虐殺されたということは、史実だ。内閣府の中央防災会議報告書(2008年)によると、虐殺の犠牲者は、震災による死者10万人の1~数%、1千~数千人とみられている。

正確な人数は別として、根拠のないデマから各地で朝鮮人の殺害が相次いだことは否定できない事実であり、次の災害時の犯罪抑止にも活かすべき教訓だと、この報告書は位置づけている。

そのうえで、こうした虐殺の被害者を追悼する式典は、都立横網町公園に立つ朝鮮人犠牲者追悼碑前で1974年から毎年、震災のあった9月1日に開かれている。日朝協会などでつくる実行委員会が主催している。

都知事による追悼文には、これは少なくとも10年以上前、石原慎太郎知事時代から続いていた慣例。犠牲になった朝鮮人への追悼の意や、それを繰り返さないとする思いなどが記されていた。

小池知事も就任当初の2016年は同様の対応をしていたが、17年3月議会で追悼碑に記された虐殺の被害者「6000人あまり」が無根拠であるとして問題視した自民都議(故人)からの質疑があったことを機に、方針を転換した。

小池知事はこの際、「追悼碑にある犠牲者数などについては、さまざまなご意見がある」と答弁している。都側は当時のBuzzFeed Newsの取材に対し、同様の抗議が「都民」から寄せられたことも、見直しの理由であると回答した。

なお、小池知事が送付を取りやめた2017年からは、同様に虐殺された人数を問題視し、虐殺そのものを否定するような主張をする保守系団体が追悼式典と同時刻にすぐ横で集会を開催するようになった。

ここ数年は式典側との間でトラブルも起きているほか、保守系団体の集会の参加者による発言が都によってヘイトスピーチに認定するなどの事態にも発展している。式典側はこうした件をめぐる適切な対応を都に求めているほか、小池知事への追悼文送付も訴えているが、知事は応じていない。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

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  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
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  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。