アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が「新型コロナウィルスは存在しないと認めた」という情報が、ネット上に広がっている。
ただ、これは「虚偽」だ。新型コロナウイルスはCDCを含む世界中の多くの研究機関で「分離」に成功しており、その存在は明らかだ。
拡散しているのは、イギリスの個人が発行している新聞であり、陰謀論を流布していると指摘をされている。画像は欧米でも昨年秋ごろに広がって、すでに否定されている。

「アメリカ疾病予防管理センター(CDC)もコロナウィルスは存在しないと認めた」
このようにツイートされた3月14日のツイートは、英語の新聞記事とみられる画像が添付されており、1000以上リツイート、2000以上いいねされるなど拡散。
「日本ではマスメディアがまったく報道しない」「対策やめれば全て解決」などのコメントがついているほか、複数のツイートやブログで転載され、さらに広がっていることがわかる。
この新聞記事の出どころは、イギリスで個人が発行している「The Light」という媒体。「Truth Paper」(真実の新聞)をうたっている。
新型コロナウイルスの感染拡大そのものが「デマ」であるとして、ロックダウンやマスク着用などに反対する「陰謀論」を流布している。
'Truthpaper': the anti-lockdown newspaper bypassing online fact-checkers https://t.co/2ZJTgrd8ss
英紙「The Guardian」も「The Light」を発行している人物について報じている
「The Light」の2020年8月の記事では、同年7月にCDCが発行した文書に「現在、利用可能な定量化されたコロナウイルスがない」と記されていると指摘。
「CDCにはウイルスがない」とし、「分離された新型コロナウイルスの検体を持っている人はいない。誰も存在を証明していない」などと結論づけている。
この記事の画像は秋ごろに欧米のSNSで広く拡散。コロナ対策を批判するために使われており、ファクトチェックの対象となった。
日本でも一部で「コロナは未確認」「科学的には存在しない」などと広がっていた。
文書は本物、でも…

前提として、ここで引用されているCDCの文書は本物だ。
これは、PCRによる検査手法に関するもので、最初にまとめられたのは2月4日のこと。CDCに「定量化された分離株がない」と記されていたのは、そもそもアメリカで本格的な流行が始まる前の段階だったからだ。
あくまで当時、検体から分離できたウイルスがCDCになかったからといって、ウイルスそのものが「存在しない」などと主張することは、まったくの虚偽であると言えるだろう。
そもそも、日本では2020年1月末の段階で国立感染症研究所が分離に成功している(写真上)。
アメリカでも流行が広がるなかで、新型コロナウイルスそのものが多く分離されており、CDCも2月14日までにアメリカにおける最初の感染例から分離されたウイルスの写真を公開。
さらに5月20日までには、「(新型コロナウイルス は)実験室で分離され、科学および医学界による研究に利用できます」とサイト上に記されている。
件のCDCの文書は何度か更新されている。たしかに「The Light」が引用した7月の更新では該当箇所は当初のままになっているが、2020年12月の更新では「この検査が開発され、研究が実施された当時」と書き加えられていることにも留意が必要だ。
新型コロナワクチンをめぐっては、不安を煽ったり、その有効性を否定したり、副反応ばかりを強調したりする報道や、ネット上の陰謀論などが相次いで拡散されている。情報の取り扱いには、注意が必要だ。
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