東名バス事故、ドライブレコーダーが直後に公開された理由 社長が語る「安全性への投資」とは

    軽井沢スキーバス事故を受けたドライブレコーダーの導入が、事故後の迅速な対応に繋がった。

    愛知県新城市の東名高速道路上り線・新城パーキングエリア付近で、6月10日午前7時30分頃、乗用車とバスが衝突した事故。

    乗用車の男性が死亡、バスの乗客ら45人がけがをした事故の瞬間を写したドライブレコーダーの映像は、その日の正午のNHKニュースで初めて報じられ、瞬く間にネット上に広がった。

    2016年1月に起きた、軽井沢・スキーバス事故を受けて導入が進むドライブレコーダー。なぜ今回のケースでは、事故のたった4時間半後に公開されたのか。

    リアルタイムでネットに保存

    東神観光バスの発表によると、事故のあった貸切バスに搭載されていたドライブレコーダーは、速度や距離を記録する「デジタル式運行記録計」に組み込まれているものだ。

    メーカーサイトによると、この装置はLTE回線に常時接続し、リアルタイムで運行情報や映像をクラウドに保存する仕組みになっている。SDカードなどだけに映像が保存されるものとは異なり、高性能なタイプだと言える。

    同社の齋藤雅宣社長はBuzzFeed Newsの取材に「事故を受け、会社ですぐに映像を確認したうえで公開に踏み切りました」と語る。

    報道を通じて映像を発信することが、事故の状況を「的確に伝える」一番の手段だと考え、映像をNHKや各報道機関に提供した。

    導入のきっかけは軽井沢バス事故

    国土交通省によると、全国にある約4万3千台の貸切バスのうち、ドライブレコーダーが搭載されているのは約2割(2014年)と高くはない。

    一方、東神観光バスでは全車(約45台)にドライブレコーダーを搭載している。

    これは、2016年1月に長野県軽井沢町で発生し、大学生ら15人が亡くなったスキーバス事故を受けた自主的な措置だったという。

    「事故を受けて役員会を開き、安全性への投資は惜しまないようにしようという話になったのです。命を預かる仕事として、当たり前のことだと」

    中でも、新型の貸切バス車両15台には優先して、高性能な機器を導入することにした。そして、それが今回事故にあった車両だった。

    「事故の瞬間がいち早く、すぐに確認できた。事前の対策が功を奏しました」

    ドラレコ義務化は17年12月から

    「今回の事故のドライブレコーダーの映像は、原因分析のために有益なものになると思います」

    国交省安全政策課の担当者はBuzzFeed Newsの取材にそう語る。

    2010年度からドライブレコーダー設置の補助金支給も始めている国交省。軽井沢バス事故を受け、貸切バスへの設置を義務化することを決めた。

    義務化は、まず新車に対して2017年12月から施行される。中古車や既存品などへの猶予期間を経て、2024年12月に100%の設置を目指す。

    「ドライブレコーダー映像を使って事故分析をすることで、新たな事故防止にも繋がります。国交省としても、設置を推し進めていきたい」

    一方の齋藤社長も言う。

    「このような装置は、保険のようなもの。何かがあったときにしか役に立ちません。それでも本当に大切なものなのだと、今回改めて痛感しました」

    「今後は休憩場所やルートもリアルタイムで把握のできる、より性能の高いものを導入し、二重三重の安全策を講じる予定です」

    ドライブレコーダーの映像はこちら。

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    BuzzFeed Newsは、新型バスの安全性について【東名高速事故 バス会社社長が語る「新型車両」導入の難しさ】という記事にまとめています。