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警視庁の条例改正案に「憲法違反」との批判、その理由は?

「デモが規制される」という不安の声も。

警視庁が検討している東京都の迷惑防止条例改正案が、「デモや取材活動を規制するのではではないか」という懸念が浮上している。

「濫用のおそれ」が大きいとして、憲法違反との批判や廃案を求める声もあがっている。いったい、何がそんなに問題なのか。

そもそもこの改正案は、警視庁が東京都の定例議会に提出しているもの。2018年7月の施行を目指しているという。

「スマートフォン等の普及やSNSの利用者増加」を改正の理由にしており、条例が禁止する盗撮行為や、つきまとい行為などの拡大が盛り込まれている。

そのうち「つきまとい行為」に付け加えられる「行為」は以下の5点だ。

  • 名誉を害する事項を告げること
  • 監視していると告げること
  • 性的羞恥心を害する事項を告げること
  • みだりにうろつくこと
  • 電子メールの連続送信、SNS等への連続送信

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「同様の行為は、ストーカー規制法の改正ですでに規制対象になっているのです。なぜ、いま改正が必要なのかという理由に当たる『立法事実』もありません」

そうBuzzFeed Newsの取材に答えるのは、改正案に反対する意見書を出した「自由法曹団東京支部」の舩尾遼弁護士だ。

改正案の問題点とは

「条文上、非常に濫用のおそれが高い構造になっている」と語る舩尾弁護士。まず指摘した問題点は、「名誉を害する事項を告げること」という項目だ。

「そもそも『名誉を害すること』とは何なのか。警視庁側は、『刑法上の名誉毀損とは違う』と述べています」

刑法上の名誉毀損は、不特定または多数の人に向けて、その人の社会的な評価を低下させる「事実」を示すことで成立する。被害者からの刑事告訴が必要であることもポイントだ。

「しかし、改正案の場合は『名誉を害する』だけなので、名誉毀損よりも範囲が広い。『ムッとする』などといった『名誉感情』を害することを告げるだけでも成立してしまう。しかも、被害者側の告訴がなくても良いのです」

告訴がなくても良いということは、「名誉を害する」かどうかを決めるのは、捜査機関側になる、ということを意味する。

捜査機関が「名誉」を判断?

捜査機関が判断できることは、危険をはらんでいるとも言える。

たとえばデモ隊が官公庁や政治家、企業を相手に批判するフレーズを繰り返していた場合や、個人がSNS上で書き込みを繰り返していることが、「名誉を害する」と捜査機関に判断されれば、処罰されうるからだ。

自由法曹団東京支部では具体的に、以下のようなケースをあげている。

  • 市民が国会前や路上で国会議員の批判をする
  • 労働組合が会社前の集会で会社の批判をする・チラシをまく
  • 消費者が企業に対して不買運動をする
  • 地域で住民がマンション建設反対運動をする
  • 公害事件・薬害事件などで企業の批判をする

さらに舩尾弁護士は、同様に追加される「監視していると告げること」「みだりにうろつくこと」についても「取材活動として関係者を張り込んでも、取り締まりの対象となり得る」と危惧している。

「警視庁側は議会で『正当な市民活動、組合活動、労働活動については適応しない』と断言していましたが、改正案にそれは記されていません」

「正当性」の判断も…

条文では一見、つきまとい行為の対象が「正当な理由なく、専ら、特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的による」ものと絞られているようにみえる。

しかし、そうとも言えないという。

同様の規制がされているストーカー規制法では、行為の目的が「恋愛感情の充足」と限定されており、これは明確だ。一方の改正案では、「その他悪意の感情」がどういうものなのかの限定がなく、あいまいなままなのだ。

「正当性を判断するのも警察です。解釈を変えることもできてしまうため、濫用の危険性が極めて高いのです」

そのうえで舩尾弁護士は、こうした濫用の危険性をはらんだ改正案は、「憲法違反」のおそれもある、と指摘した。

「改正案は、憲法で認められている『表現の自由』や『報道の自由』を侵害する可能性があります。また、刑法上は処罰しないものを横だしして処罰しようとしているのは、『法律の範囲内で条例を制定することができる』という憲法94条にも、反しています」

「たとえ、あす適用されることはないとしても、将来的に解釈が変えられる危険性がある条例を通すべきではありません」

改正案は3月22日午後1時からの警察・消防委員会で採決される予定という。



Kota Hatachiに連絡する メールアドレス:Kota.Hatachi@buzzfeed.com.

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