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関東大震災の朝鮮人虐殺、否定集会で「ヘイトスピーチ」 東京都が認定、公表

都立横網町公園に建立された朝鮮人犠牲者追悼碑前で毎年、震災のあった9月1日に開かれていた追悼式典。保守系団体が虐殺を否定する集会を間近で同時刻に開催するようになり、都側が双方に「誓約書」を求めるなど混乱が広がっていた。

関東大震災で朝鮮人が虐殺されたことを否定する保守系団体が、2019年9月1日に東京都墨田区内で開いた集会における発言を、東京都が人権尊重条例に基づきヘイトスピーチに認定し、8月3日、公表した。

この集会は、朝鮮人虐殺の犠牲者を追悼する式典のすぐ近くで2017年から開催されていたもの。追悼式典の主催者側は「虚偽の主張とヘイトスピーチを叫び、妨害されている」などと訴えていた。

都は条例に基づき、ヘイトスピーチが行われる蓋然性の高い集会が行われる場合、公園の使用制限に関する基準を設けており、2020年の集会の行方が注目されている。

(*この記事にはヘイトスピーチの文言が直接含まれます。閲覧にご注意ください)

都の発表によると、同条例に基づく公表は7例目。情報提供に基づき審査会を開催し、以下の3つの文言をヘイトスピーチに認定した。

  • 「犯人は不逞朝鮮人、朝鮮人コリアンだったのです」
  • 「不逞在日朝鮮人たちによって身内を殺され、家を焼かれ、財物を奪われ、女子供を強姦された多くの日本人たち」
  • 「その中にあって日本政府は、不逞朝鮮人ではない鮮人の保護を」


こうした発言について、都の審査会は「不逞朝鮮人という言葉を用いながら、本邦外出身者を著しく侮蔑し、地域社会から排除することを煽動する目的を持っていたものと考えられる」と指摘。

そのうえで「別の集会に対して挑発的意図をもって発せられたもの」「その表現内容も朝鮮人を貶め、傷つける差別的表現」と意見。

これに基づき、最終的に知事の判断で、ヘイトスピーチ(本邦外出身者に対する不当な差別的言動に該当する表現活動)に認定したという。

都はあくまで啓発が目的として当該団体の詳細などは明らかにしていないが、発言内容は当該団体のものと一致する。

なお、都人権部企画課の担当者によると、条例の趣旨はあくまで啓発にあるため、当該団体に直接連絡をするなどの手続きは取っていないという。

今年の式典をめぐる混乱も

追悼式典は日朝協会などによる実行委員会が主催し、都立横網町公園に建立された朝鮮人犠牲者追悼碑前で1974年から毎年、震災のあった9月1日に開かれていた。

しかし2017年からは、保守系団体が、虐殺を否定する集会を間近で同時刻に開催するようになった。追悼式典側は、保守団体側が虐殺を否定する内容を拡声器で流したり、今回認定されたようなヘイトスピーチを行ったとして、「式典が妨害を受けている」と指摘していた。

こうしたなか、公園管理者である都は2020年の集会について、会場となる都立横網町公園の使用許可をめぐり、都が双方の団体にトラブルを防止する目的の「誓約書」を求めた。

この件に関し、追悼式典の主催者側は「トラブルを惹起している」保守系団体側に対して「個別に問題行動について注意する」べきだとして反発。批判が高まった。

都は8月3日までに、誓約書を求めることを撤回。その理由について、公園緑地部の担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、「当日行事を平穏に行っていただくということを確認する方法として注意事項を渡し、その内容を確認していただいたことをもって意思を確認した」としている。

ヘイトスピーチによる公園使用制限は?

なお、この注意事項には、ヘイトスピーチ解消法の趣旨を踏まえ、「いかなる差別的言動もしないこと」とする趣旨の内容を盛り込まれている。

また、都では人権尊重条例に基づき、「不当な差別的言動の解消を図る」ために「公の施設の利用制限」に関する以下の基準を2019年に設けている。

  1. ヘイトスピーチが行われる蓋然性が高いこと。
  2. ヘイトスピーチが行われることに起因して発生する紛争等により、 施設の安全な管理に支障が生じる事態が予測されること。


都によってヘイトスピーチが認定された団体による集会であれば、この基準に合致する可能性もあるのではないかーー?

しかし、8月4日に人権部から発表されたヘイトスピーチ認定については、公園緑地部は「答えられる立場にない」という。あくまで発表は発言そのものに限られていることなどが、その理由だ。

「こういった件に関して人権部のほうと連携はさせていただいていますが、公表された内容についてお答えできる立場にありません。また、9月1日に向け、各団体のほうから事前の相談なども出てきていますが、個別の申請者について答えることはできません。あくまで、条例を含む関係法令を踏まえた形で手続きをやっていくことになります」

ヘイトスピーチに関連した利用制限に関する基準では、事前に判明している内容に加え、集会主催者や参加予定者による同種集会における過去に言動の内容などを含んだ「施設利用の態様等を総合的に勘案」することが定められている。

また、必要な場合は「審査会の調査審議を経ること」になる。審査会は「表現活動の萎縮を生まないように十分に配慮」しながら、「迅速かつ的確な判断を行うことに努める」とされている。今後の動きが注目されることになる。

追悼式典実行委員会事務局の担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、「(保守団体側の)発言がヘイトスピーチとして認定されたのであれば、対策法や人権尊重条例に基づいて都にしっかり対応してもらいたい」と語った。