【都知事選】自民分裂選挙に負けた自民党 都議会のドンは「完敗だった」

    小池知事とどのように向き合っていくのか

    東京都知事戦に自民・公明の組織戦で臨んだ増田寛也氏。陣営の中核にいた石原伸晃・自民党都連会長も、「都議会のドン」と評される内田茂・都連幹事長も「完敗」と振り返った。

    午後8時。NHKが小池百合子氏の当選を報じた。数人からため息が漏れたが、ほとんどが黙りこくり、会場には報道陣のシャッター音だけが鳴り響いた。

    午後8時20分ごろ、待機していた自宅から、増田氏が支援者や報道陣の詰めかける事務所へと姿を現した。拍手で出迎えられるが、すぐに2度、深く頭を下げた。

    安倍晋三首相、公明党の山口那津男代表、自民党の谷垣禎一幹事長……。名だたる政治家たちから届いた「祈 必勝」。数十枚の「為書き」に囲まれた増田氏が壇上に立つと、報道陣からフラッシュが一斉に焚かれる。

    あいさつは、お詫びから始まった。

    「これだけ強力な皆様方のご支援をいただいたにもかかわらず、こうした結果を招きました。ひとえに私の力不足、至らなさのせい。申し訳ございません」

    そう語る増田氏は、何度も謝罪を繰り返した。

    この日、増田氏のほかにマイクを握ったのは、石原氏と、公明党の高木陽介・東京都本部代表の2人だけ。当選した場合、内田氏や支援団体の関係者が参加する「セレモニー」が開かれる予定だったが、それはなくなった。

    「選挙は完敗でした。本当に申し訳ございませんでした」

    口を真一文字に結んだ増田氏の横に立った石原氏の声は力強い。しかし表情はおぼろげで、目の焦点が合っていないように見える。

    「私は増田寛也さんの大ファンの一人として、これからも手を携えて仕事をしていきたい。重ね重ね、力不足、申し訳ございませんでした」

    スピーチは手早く終わった。拍手はない。続いた高木氏もほぼ、謝罪に終始。今度はぱらぱらと、拍手が聞こえた。

    増田氏はその後すぐ、事務所を後にした。報告会が開かれた時間は、15分にも満たなかった。

    本来あいさつする予定だった「都議会のドン」は、なにを語ったのか。

    自民党の所属議員と親族が増田氏以外の候補を応援した場合、除名処分の対象になるという文書を出した内田氏。出陣式では鳥越氏をけん制し、野党批判を強めていた。

    帰り際、大勢の記者に囲まれた内田氏は、選挙戦の感想を聞かれこう答えた。

    「会長が言ったように、完敗でしょうね」

    「責任はどう考えているのか」との問いには、「みんな責任を感じているんじゃないですか。みんなで決めたことだから」。

    この二言を最後に、「ドン」は口を閉ざした。

    「小池さんの処分については」「ご自身の進退は」。矢継ぎ早に切り出される質問に対し、うつむくだけで何も答えない。

    そのまま、おしくらまんじゅうの状態が続く。「危ない。車が来るから」と一言、周りを囲う記者を諭す。

    その後は黒塗りのセダンに乗り込むまで、記者の問いに答えることはなかった。

    自民党所属でありながら、独自に立候補し、自民党都連を批判した小池氏が知事となる。自民党と知事はどう向き合っていくのか。この日の自民党陣営からは、その答えは見えなかった。