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外国人実習生の「死者数」を削除 内閣府所管の機構サイト

入管法改正に合わせて削除した意図はない、としている。

外国人技能実習制度を推進する内閣府所管の「国際研修協力機構(JITCO)」が、ホームページ上から実習生の死者数に関するデータを削除していたことが、BuzzFeed Newsの取材でわかった。

実習生については、その低賃金や長時間労働などの問題点が指摘されており、失踪者が相次いでいる。

死者数についても、2010年からの8年間で174人にのぼることが法務省の資料から明らかになったばかりだ。

JITCOは、「外国人技能実習・研修制度の円滑な運営・適正な拡大に寄与することを事業目的」として、1991年に設立された財団法人。

法務、外務、厚生労働、経済産業、国土交通の省共管だったが、2012年4月に内閣府所管の公益財団法人に移行した。

BuzzFeed Newsが調査したところ、サイト上から削除されていたのは、少なくとも以下の3つのページだ。

  1. 死者数の経年変化(2013〜15年度)や内訳に触れた「ストップ不適正事例」
  2. 2015年度外国人研修生・技能実習生の死亡者数のPDF
  3. 2008年度外国人研修生・技能実習生死亡事故発生状況


(1)の資料には、画像(Google キャッシュより)にあるような死亡者の経年変化や、作業中かそうでないかの割合を示す表が差し込まれていた。

JITCO側の説明は

BuzzFeed Newsの取材に応じたJITCOの担当者によると、この統計は厚労省の委託事業として調査・公表していたもの。

「JITCO白書」に毎年掲載していたが、08年度と15年度分はサイト上にも掲載していたという。

ただ、2017年に技能実習法が成立したことを受け、委託も同年度で終了。それに伴い厚労省に資料を戻し、2017年12月にトップページから辿れない措置をしていた、としている。

しかし、サーバ上に残っていることで、取材や一般からの問い合わせがあったことから、12月11日にデータを削除したという。

12月8日の入管法改正に合わせて削除した意図はない、としている。資料の所管がJITCOではなくなったため、削除したという説明だ。

一方、委託をした厚労省の担当者は、「現段階で公開する予定はない」としている。情報は「JITCO白書」には掲載されているが、インターネット上では一部の資料が閲覧できなくなったことになる。

死亡事案の実態は

死者数については12月12日、法務省から資料を入手した立憲民主党の有田芳生参議院議員がTwitterで公開。BuzzFeed Newsも同様のものを入手した。

それによると、国籍は▽中国98▽ベトナム46▽インドネシア12▽フィリピン6▽タイ4▽ミャンマー3▽モンゴル3▽ラオス2の計174人。

うち20代が118人で、溺死が25人、自殺が12人、凍死が1人。以下のように、死亡原因が細かく記されているものもある。

  • 東日本大震災で津波に巻き込まれて溺死した(中国28歳、24歳男性2人、牡蠣養殖)
  • ロープが絡まり漁具とともに海中に落下、そのまま行方不明になってしまった(インドネシア19歳男性、漁船農業)
  • 水道管の工事中に生き埋めになった日本人従業員を助けようとして巻き込まれた(フィリピン28歳男性、配管)
  • パソコン用LANケーブルで首を吊って自殺していた(フィリピン33歳男性、夫人子供服製造)

溶接中の爆発(中国22歳男性、溶接)や鉄骨が崩れて下敷きになった(中国19歳男性、溶接)、鍛造用プレス機に挟まれた(ベトナム22歳男性、鍛造)など、作業中の事故に巻き込まれて亡くなっているケースも多く散見される。

また、凍死していたのは耕種農業に従事していた中国人の28歳男性だが、その詳細は記されていない。

外国人実習生の労災死比率は、10万人当たり年平均で3.64人で、日本の雇用者全体の労災死の比率は1.73人(2014〜17年平均)を大きく上回っていることが厚労省のまとめで明らかになっている。

政府・与党は今国会での入管法の改正を成立させたが、この審議過程で実習生制度が抱える問題点が浮き彫りとなったと言える。

UPDATE

厚労省のコメントを追記しました。

UPDATE

一部表現を修正しました。

UPDATE

「国際研修協力機構」の呼称を修正いたしました。