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「プレス機に挟まれ…」外国人技能実習生の死亡事案、174人分が明らかに

国会審議後に法務省から出された資料から明らかになった。

外国人技能実習生の死者数が、2010年からの8年間で174人にのぼっていることが、法務省の資料から分かった。

うち20代が118人で、溺死が25人、自殺が12人、凍死が1人だったという。国別では中国が一番多く、ベトナム、インドネシアが続いた。

法務省から資料を入手した、立憲民主党の有田芳生参議院議員がTwitterで公開。BuzzFeed Newsも同様のものを入手した。

それによると、国籍は▽中国98▽ベトナム46▽インドネシア12▽フィリピン6▽タイ4▽ミャンマー3▽モンゴル3▽ラオス2の計174人。

以下のように、死亡原因が細かく記されているものもある。

  • 東日本大震災で津波に巻き込まれて溺死した(中国28歳、24歳男性2人、牡蠣養殖)
  • ロープが絡まり漁具とともに海中に落下、そのまま行方不明になってしまった(インドネシア19歳男性、漁船農業)
  • 水道管の工事中に生き埋めになった日本人従業員を助けようとして巻き込まれた(フィリピン28歳男性、配管)
  • パソコン用LANケーブルで首を吊って自殺していた(フィリピン33歳男性、夫人子供服製造)


溶接中の爆発(中国22歳男性、溶接)や鉄骨が崩れて下敷きになった(中国19歳男性、溶接)、鍛造用プレス機に挟まれた(ベトナム22歳男性、鍛造)など、作業中の事故に巻き込まれて亡くなっているケースも多く散見される。

また、凍死していたのは耕種農業に従事していた中国人の28歳男性だが、その詳細は記されていない。

劣悪な環境、失踪も増加

「外国人技能実習制度」は、「途上国に技能を伝えるための実習」という建前がある。しかし実態としては、低賃金で働く労働者の供給源になっているという批判も多い。

低賃金や虐待などが理由で職場から逃亡する例が相次いでおり、2017年に7000人を超えていた。

さらに、2015~17年の3年間に実習生69人が死亡していたことは、立憲民主党の要請を受けて開示された法務省の資料で発覚。

うち12人が実習中の事故、6人が自殺、殺害された人が4人いたことが明らかになった。

安倍晋三首相はこの資料について、「見ていないから答えようがない。今までの制度に問題がなかったと思っているわけではない」などと答弁。野党から、批判を浴びていた。

野党議員が聴取票を「書き写し」

技能実習生をめぐっては、衆議院と参議院の法務委員会の附帯決議に基づいて実施された、失踪経験のある実習生2870人へのヒアリングも注目された。

入国管理局は当初、これに基づき失踪動機で最も多かったのは「より高い賃金を求めて」で87%だったなどと説明していたが、本当の最多は「低賃金」で67%を占めていたことが判明。

調査のずさんさが浮き彫りとなり、そもそも非公開だった聴取票は野党側の要望を受ける形で、「閲覧」が認められることになった。

ただ、政府は「プライバシー」「今後の調査への支障」などを理由に「閲覧」だけを認め、コピーを禁止。野党議員が手分けして2870人分全てを「書き写す」作業に追われた。

浮き彫りになった問題点

聴取票をもとにした野党側の早期の集計では、実習生は受け取っていた時給で最も多かったのは、500円台だったことが明らかになっている。

また、すべての票を書き写した後に行われた全体分析では、67%(1939人)が最低賃金以下で働いていたことや、10%(292人)が過労死ラインである月80時間を超える残業をしていたことがわかった

失踪の原因は▽指導が厳しい(181人)▽暴力(139人)▽強制帰国(81人)▽いじめ(12人)などの理由だったという。

政府・与党は今国会での入管法の改正を成立させたが、この審議過程で実習生制度が抱える問題点が浮き彫りとなったと言える。今回明らかになった8年間の死亡者数も、国会審議が終わった後に出されたものだ。

来年度以降から入ってくる外国人労働者の権利がきちんと守られるのか、日本人を含めた賃金の切り下げにつながるのではないかといった点が懸念されている。

立憲民主党国民民主党は、書き写された聴取票の内容をサイト上でPDFとして公表している。