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「適切でないとしたら…」自民・甘利議員、学術会議の「千人計画」めぐるブログ書き換えを釈明

「日本学術会議は中国の千人計画に関わっている」という情報は、インターネット上で関連する言説で多く拡散。甘利明氏のブログは複数のメディアやまとめサイトが引用する「ソース」になっていたが、その後書き換えられていた。

日本学術会議をめぐり、中国による科学者の招聘事業「千人計画」に「積極的に協力している」とブログに記していた自民党の甘利明・元経済再生担当相。

ブログを根拠に不確かな情報が拡散されていたが、学術会議事務局、さらには加藤勝信官房長官も会見で否定。甘利氏はその後、記述を「間接的に協力しているように映ります」と書き換えていた。

10月12日夜には新たにブログを更新し、「表現が適切でないとしたら改めさせて頂きます」と、訂正の理由を記した。断定をやめるという大きな書き換えだが、もともとの書き込みの根拠は示されず、謝罪はなかった。

甘利氏は自らのブログ(8月6日)で中国の「千人計画」と日本学術会議の関わりについて言及。以下のように記していた。

日本学術会議は防衛省予算を使った研究開発には参加を禁じていますが、中国の「外国人研究者ヘッドハンティングプラン」である「千人計画」には積極的に協力しています。(中略)中国はかつての、研究の「軍民共同」から現在の「軍民融合」へと関係を深化させています。つまり民間学者の研究は人民解放軍の軍事研究と一体であると云う宣言です。軍事研究には与しないという学術会議の方針は一国二制度なんでしょうか。

このブログはネット上の書き込みや、まとめサイト「アノニマスポスト」(写真)、夕刊フジのサイト「zakzak」やそのほかのメディア記事、さらにはYouTube動画など多くの言説の「ソース」となった。

計測ツールBuzzSumoによると、アノニマスポストの記事はSNS上で4万7000以上シェアされている。これは、過去1年にアップされたネット上の学術会議に関する記事で2番目の拡散だ。

さらにこの情報は「軍事研究に協力している」という言説にも発展し、学術会議の批判につながった。

しかし、学術会議事務局はBuzzFeed Newsの取材に対し、「千人計画」や中国の軍事研究そのものへの関与を明確に否定。加藤勝信官房長官も同日午前の会見で同様に否定した。

示されなかった根拠

甘利氏はそもそもこの記述の根拠を示しておらず、10月11日のフジテレビ「日曜報道 THE PRIME」でブログの件について「真意」を問われている。

しかし、「千人計画」に参加している日本人の研究者が複数いることを示しながら、「学術会議のメンバーかどうかは私確認していませんけど」などと回答。

学術会議と中国科学技術協会の覚書を批判しつつ、千人計画に関する何かしらの声明を出すべきとは述べたが、自らが記したように組織として学術会議がどう計画に「積極的に協力」しているのか、ここでも根拠を示すことはなかった

さらに甘利氏は10月12日午後3時ごろまでに、「積極的に協力している」と記していたブログの内容を、以下のように書き換えていた。

日本学術会議は防衛省予算を使った研究開発には参加を禁じていますが、中国の「外国人研究者ヘッドハンティングプラン」である「千人計画」には間接的に協力しているように映ります。

また、「軍事研究には与しないという学術会議の方針は一国二制度なんでしょうか」という点も「軍事研究には与しないという学術会議の方針は日本限定なんでしょうか」に書き換えられている。

書き換えの理由は

書き換えについて当初はSNSやサイト上での告知は一切されていなかったが、甘利氏は12日夜、ブログを更新。書き換えの理由について、こう記している。

「積極的に協力」と云う表現が適切でないとしたら「間接的に協力していることになりはしないか」と改めさせて頂きます。

そのうえで、自らの伝えたかった趣旨を6項目にまとめている。まず「千人計画に日本から何人もの学者が招聘されている」ことに加え、中国が「民事と軍事を融合」させているとして計画そのものを問題視。

さらに、日本学術会議が2015年に中国の科学技術協会と協力覚書を交わたことについて、覚書は日中研究者の受け入れやサポートなどに関する「積極的な約束」であると指摘。

その一方で2017年には防衛装備庁の研究費申請に関する声明を発表したことに触れ、「千人計画には何ら警鐘を鳴らしていないばかりか、研究者の交流について積極的にサポートすると約束した」「日本の公的機関でありながら対日本と対中国との対応の落差を指摘したかった」などと述べている。

しかし、「積極的に協力」の根拠はやはり示されていない。また、謝罪などの言葉もなかった。

なお、甘利氏がここで批判した覚書は、会議やセミナーなどを通じた「情報交換」や、研究者間の交流、共同ワークショップの開催などの取り組みを進めていくことに関する内容。

学術会議事務局によると、そもそも学術会議の予算面の問題から、国際的な研究プロジェクトなどを実施することは、中国だけではなく、そもそもそれ以外の国ともできていないとしている。

大西元会長の見解は?

当時学術会議の会長だった大西隆・東京大名誉教授はBuzzFeed Newsの取材に対し、覚書の要請は中国側からあったことを明らかにし、「拒むほど強い理由もない」ことに加え、「善隣友好」の意味合いを持って結んだものの、結果として実効性を伴わないものになった、としている。

批判があがっていることについては、「日中友好条約があり、国同士も友好関係にある。そのなかで、様々な団体が先方と友好関係を結ぶのは、なんらおかしくないのではないでしょうか。財界や、たとえば自民党でも交流されているように、学術会議も国の機関として覚書を結びました」と指摘。

また、「内容も出版物の交換や会議、セミナーなどによる交流などで、これに関連して、日本の情報が流出するということもないでしょう。中国のために軍事的研究をしようなら問題だが、そもそも学術会議は研究機関ではありませんし、そういうことを奨励したこともありません」とも語った。

BuzzFeed Newsは甘利議員の事務所に、学術会議側が否定しているとして情報の根拠についての取材を10月5日にFAXで申し込んだ。13日17時までに回答を得ておらず、また、ブログ更新に伴う連絡もなかった。ブログ書き換えの件を含め、改めて回答を要請している。回答があり次第、追記する。

UPDATE

甘利議員の事務所は10月13日午後6時、FAXで「国会リポート第410号訂正と同日リリースした第413号記載の通りです」と回答しました。