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「セックスで男女を産み分け」「つわりの原因は精神面」“たまひよ”記事を医師が「誤り」と批判、編集部の見解は?

『たまひよ』には「つわり」「産み分け」のほかにも、「男女の脳の違い」「胎内記憶」「電磁波の赤ちゃんへの影響」など、医学的に根拠のない情報が複数掲載されていた。

妊娠初期に女性を苦しめる「つわり」をめぐり、「原因は精神面」「スマホも影響」などとする記事が、大手育児情報サイト『たまひよ』に掲載されていた。

しかし、これは「誤情報」だ。そもそもつわりの原因は明らかにはなっておらず、個人差が大きいもの。記事は医療関係者から批判の声を浴び、その後削除されている。

『たまひよ』はこのほかにも「セックスの仕方などで希望の性別を授かる確率を上げる」とする「産み分け」など、複数の誤情報を掲載しており、専門家からは問題視する声もあがっている。

たまひよオンライン

批判が集まったのは、『たまひよONLINE』に掲載されていた「スマホも影響!?つわりが[重くなる][軽く済む]タイプってあるの?」という記事。

もともと雑誌『初めてのたまごクラブ』に2017年に掲載されていた内容を転載したもので、助産師の監修を得ていると記されている。

記事は「つわりが重い人・軽い人の傾向って?」と投げかけ、重いタイプは「神経質、心配性な人」「ストレスが多い」「冷え性」など複数の項目を列挙(写真)。以下のような指摘していた。

注目したいのは、精神面。とくに、「不安や過度のストレスはつわりを悪化させる」といわれています。つわりを悪化させないようにするには、できるだけリラックスを心がけ、自律神経のバランスを整えるようにするといいですね。

また、スマホやパソコンの画面の見すぎなど、目の使いすぎもつわりを悪化させます。とくに就寝前はスマホやパソコンの画面を見ないようにしましょう。

医学的な見解は…

たまひよオンライン

こういった要素がつわりの軽重に影響を及ぼすとする情報は、『たまひよ』に限らず一般的にも広がっているが、医学的には「誤り」だ。

産婦人科医の重見大介さん(公衆衛生学修士)は、BuzzFeed Newsの取材に「つわりは個人差がとても大きく、重い人や軽い人を単純な要素から予測することは医学的には不可能です」と指摘する。

「つわりは妊婦さんの5割から8割が経験すると考えられています。『初めての人の方が多い』『双子を妊娠しているとひどくなりやすい』『前回の妊娠でつわりがひどい人は今回も重くなりやすい』などという点は、ある程度データで示されていますが、症状の個人差が大きく、傾向がわけられるものではありません」

「精神面やストレス、スマホの使い過ぎや冷え性などはどれも個人の見方によって変わるもので、それらがつわりの重さに関わるという情報には、医学的なエビデンスはありませんし、誤解を招く表現だと思います」

「生活習慣を整えて、ストレスを最小限にしていても、重くなる人もいるのがつわりです。生活のコントロールは症状をどう受け止めるかに影響を及ぼすことはありますが、症状の重さ自体は誰にもコントロールできないものなので、自らの性格や生活に原因があると感じる必要はありません」

セックスの方法で「産み分け」?

Kota Hatachi / BuzzFeed

『たまひよ』のサイトにはほかにも、医学的に「誤り」である情報が掲載されていた。

たとえば、「男女の産み分け」だ。これは、「セックスのタイミングや回数などの工夫で、希望の性別を授かる確率を上げる方法」とされている。これも、やはり雑誌にも掲載されていた。

記事では、精子にはX精子とY精子が存在し、それぞれが「酸に強く寿命が長いけれど、数が少ない」「数が多く運動能力が高いけれど、酸に弱く寿命が短い」という対照的な特性を持っていると指摘。

これを生かすため、男の子を授かりたいなら「女性の性感が最も高まったときに射精」するように、女の子を授かりたいなら「浅く挿入したあっさりとしたセックス」などと記されている。

「X精子とY精子」をもとにした「産み分け」情報は、『たまひよ』に限らず広く拡散されているものだ。重見さんはこう指摘する。

「産み分けができる方法は確立されていません。性生活の工夫で赤ちゃんの性別をコントロールするということはできません。X精子やY精子という言葉は、少なくとも臨床診療のレベルでは一般的ではないものです」

「主張している研究者の人たちによる報告があるかもしれませんが、産婦人科の専門学会やガイドラインで書かれている内容として見たことはなく、そういったレベルにはおよそ到達しない話です」

「こうした情報は、実際に試して希望する性別を授からなかった人に、自分たちに責任があるという精神的なストレスを与えてしまう可能性があります。また、性別に対する強いこだわりを持ち続け、生まれてきた赤ちゃんに対して意識的に押し付けてしまうことを助長させてしまうかもしれません」

「完全なデマ」警告の医師は

Kota Hatachi / BuzzFeed

今回、『たまひよ』のつわり記事について、SNSで「完全なデマです」と指摘した小児科医の今西洋介さんは、BuzzFeed Newsの取材にこう語る。

「つわりは妊娠初期にお母さんに大きなダメージを与えるものです。専門家の監修として誤った情報を発信してしまうと、お母さんが自責の念を持ってしまったり、家族が妊婦を精神論で責めてしまったりする根拠になってしまう。それを否定しておきたいという気持ちで、発信をしました」

『たまひよ』には「つわり」「産み分け」のほかにも、「男女の脳の違い」「胎内記憶」「電磁波の赤ちゃんへの影響」など、医学的に根拠のない情報が複数掲載されていた。

医療漫画『コウノドリ』の一部医療監修を行なった経験を持つ今西さんは、「『たまひよ』にはきちんとした医療情報も掲載されている」と前置きしつつ、「影響力強い雑誌などが間違った情報を発信することには大きな問題がある」と指摘した。

「妊娠や出産、育児に関する情報にはまだエビデンスが少なかったり、わかっていなかったりすることが多くあるため、個人の経験に基づいた『ナラティブ』(物語)な情報が共感を呼び、広がってしまいやすい分野であるといえます」

「しかし、医療情報の発信というのは科学的根拠に基づいて書くというのが大切です。間違った情報は命の危険につながりかねませんし、そうした分野でお金儲けをする“専門家”による『トンデモ医療』にも注意が必要です」

「過去には誤った体操法(大阪ズンズン運動死亡事件,2014年)や、ホメオパシーに基づいた診療で乳児が死亡する例(山口新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故)もありました」

では、読者はどう「正しい情報」を入手すればよいのか? 今西さんは「厚生労働省など公的機関や、日本小児科学会あるいは日本産婦人科学会など各種学会からの発信を大事にしてほしい」と呼びかける。

「『かかりつけ医』にすべてを聞くことはできないでしょうから、これらを元に啓発している医療関係者を普段から探してほしいと思います。情報が多すぎて自分である程度見極めなければいけない時代ではありますが、それが正しいのかどうか、常日頃から気をつけていくことが大切です」

たまひよ編集部の回答は

Kota Hatachi / BuzzFeed

『ひよこクラブ』(2019年2月号)などにも掲載されていた「産み分けメソッド」

『たまひよ』はこれまでも、批判を集めた複数の記事を削除している。実際、今回の「つわり」の記事も同様だ。その理由は以下の通りだ。

記事内にあったつわりの症状の傾向について、『初めてのたまごクラブ』内の特集では、助産師さんのお話をもとに「※上記は、あくまで傾向です。つわりの症状には、ほかにもさまざまな要素が関係します。」など注釈付きで掲載しておりましたが、「たまひよONLINE」へ転載する際に、上記の注釈の部分の説明が不十分であった点をお詫びし、こちらの記事は非公開とさせていただきました。

BuzzFeed Newsは『たまひよ』編集部、ベネッセ広報部に対し、こうした誤情報の問題点や批判への見解、編集方針、今後の対応を問い合わせた。

編集部は書面で回答。記事制作は、「WEBメディアポリシー」に基づいているとして、以下のようにコメントした。

編集部内でテーマを選び、必要と判断したものについては、医師、各分野の専門家の監修をいれております。また、育児マンガや弊社コミュニティサイトの投稿コメントのまとめ記事は、「個人の体験に基づいたもの」としてご紹介しております。

なお、ポリシーには「正確な情報を発信します」と記され、「ひとつの記事が起こし得る情報の偏り、ミスリードを忌避し、読者が判断を下す材料となり得る良質の記事を発信します」と記載されている。

また、掲載後の記事に外部からの指摘があった場合については、「必ず再検証を行う編集方針を徹底」しているとした。

記事掲載後、また時間が経過した過去記事につきましても、読者の皆さま、そして専門家・関係者等の皆さまから様々なご意見を頂戴しております。

編集部では、頂戴した全ての貴重なご意見を真摯に受け止め、公的機関のガイドラインや指針の制定・改定、妊娠・出産・育児に関する定説の変化や多様性への配慮も踏まえ、必ず再検証を行う編集方針を徹底しております。

その結果、編集部および監修者で議論を重ね、何らかの対応が必要と判断した時点で、速やかに、コメントの追記・修正・削除などの措置を行っております。

今回、BuzzFeed Newsが指摘した個々の記事については、「貴重なご意見を賜り、改めて御礼申し上げます」としたうえで、再検証の作業に入るとした。

今回ご指摘いただきました対象記事とその内容について、上記編集方針にもとづき、直ちに再検証などの対応を進めさせて頂きます。

影響力の強い「たまひよ」に、医学的根拠のはっきりしない情報や、不正確な情報が掲載されている問題への見解についても問うたが、具体的な回答はなかった。

なお、個別の記事制作に関する見解については、現時点で個別の回答は差し控えさせて頂きます。再検証の結果、掲載記事に何らかの対応を行う場合は、修正日および理由を掲載させて頂きます。何卒ご理解のほどお願い申し上げます。

「たまひよONLINE」編集部では今後も、全てのお客様のご意見を編集部として真摯に受け止め、赤ちゃんとそのご家族に寄り添い、安心して妊娠・育児期を過ごしていただける情報を提供できるような記事制作に取り組んでまいります。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーです。2019年7月からそのガイドラインに基づいたファクトチェックを実施した記事には、対象言説のレーティングを必ず記載しています。

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Contact Kota Hatachi at kota.hatachi@buzzfeed.com.

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