「報酬をもらっている」元SEALDsの女性を誹謗中傷、慰謝料100万円の判決。性差別的な内容も

    訴えを起こしたのは、「SEALDs」(自由と民主主義のための学生緊急行動)の福田和香子さんら女性2人。判決では、書き込みが原告2人の「社会的評価を低下させた」としたほか、書き込んでいた被告の女性が「憶測に憶測を重ね」ているとも指摘した。

    安全保障関連法に反対する市民運動を展開した「SEALDs」元メンバーの女性2人が、ネット上で誹謗中傷を受けたとして、投稿者を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、東京地裁(藤沢裕介裁判長)は6月1日、投稿者に慰謝料など約100万円の支払いを命じた。

    判決では「政治的言論」については批判的な意見交換が保証されるべきとしたうえで、事実に基づかない誹謗中傷は攻撃性が強く、悪質なものだったと指摘した。

    会見を開いた原告の女性は「政治的なイデオロギーとは関係のない、性差別的な誹謗中傷が多かった」と当時を振り返った。

    (*この記事には差別的な文言が含まれます。閲覧にご注意ください)

    訴えを起こしたのは、「SEALDs」(自由と民主主義のための学生緊急行動)の福田和香子さんら女性2人。

    判決によると、団体が結成された8ヶ月後の2016年1月から「売春婦と自称している」「報酬をもらっている」「ソロス財団の操り人形」「科研費を私的流用した」などという誹謗中傷ツイートを受けるようになった。

    判決では、こうした書き込みが原告2人の「社会的評価を低下させた」としたほか、書き込んでいた被告の女性が「憶測に憶測を重ね」ているとも指摘。以下のように結論づけた。

    「政治的主張、政治的言論については、批判的立場からの自由な意見交換も十分に保証されるべきと言う側面を考慮したとしても、各投稿は、そもそも公共性、公益性を欠くものが含まれ、公共性があるものも、自身の憶測と強引な関連付けによって個人を攻撃した色彩が強いもので、悪質である」

    また、組織や団体の支援を受けた草の根運動であるという隠語「人工芝」を用いた表現についても、真実性がないとして退けたほか、「言論弾圧目的のスラップ訴訟」などという被告側の主張も同様に退けた。

    会見を開いた弁護団によると、2人に対しての誹謗中傷は複数人から膨大な量に及び、「botのようだった」。

    若い女性であることを理由にした性差別的、侮辱的なものも多かった。複数の発信者情報開示のすえ、特定できたケースについて訴訟を起こした。

    開示請求も含め、長期間にわたって執拗に続いたことが斟酌されていないとして、より厳しい判決を求め、控訴も含め検討しているという。

    「女は口を出すな」という書き込みも

    都内で実名で会見に臨んだ福田さんは、当時は「反日売国奴」「首吊って死ね」「女は政治に口を出すな」「レイプしたい」などという誹謗中傷が大量に送られていたと語った。精神的にも厳しい状況に追いやられていたという。

    「顔と名前を出している私に対して、1日何百件と匿名の誹謗中傷が届いていた。職場や電車の車両、友人に誘われて行った先、どこかに犯人がいるかもしれないという恐怖がつきまとっていました」

    「多くは政治的な主張とは無関係なもので、建設的な批判ではなかった。性差別的なものも多く、イデオロギーとは関係なく、声をあげる若者、女性を黙らせたいというような人が多かったように感じました」

    そのうえで、「誹謗中傷で命を落とす人もいる。黙っているよりは前例を増やすことで、現状改善につながれば」と訴訟を起こした理由に言及。

    誹謗中傷をしていた人たちに対しては、「言葉には良くも悪くもパワーがある。責任を持ってください」と涙ながらに訴えた。今後も誹謗中傷が寄せられた場合は、弁護団とともに毅然と対応していくという。

    また、いまも社会運動に対して声をあげている若者に対しては、「あなたの言葉が真摯である限り、無責任な言葉には負けないはず」と呼びかけた。