タンカーが日本の排他的経済水域に沈没 油流出の影響は?

    海保は「ただちに重大な影響が及ぶ状態ではない」としている。

    東シナ海で衝突・炎上事故を起こし、漂流後に日本の排他的経済水域に沈没したイランのタンカーから流出した油による海洋汚染が懸念されている。

    AFP通信によると、イランから韓国に向かっていたタンカー「SANCHI」は1月6日よる、上海から約300キロの沖合で香港の貨物船と衝突。

    その後、爆発を繰り返しながら漂流し、14日に日本の排他的経済水域(EEZ)内に沈没した。乗員32名は死亡したとみられる。

    タンカーには11万1000トンの原油の一種「コンデンセート」(超軽質原油)などが積まれていた。

    1月22日現在で3方向に別れた帯状の油膜が332平方キロメートルにわたって拡散。中国海警局が対処に当たっているという。

    ロイター通信は「数十年で最悪の事故」と伝えており、イギリス海洋センターの「汚染された水が1ヶ月以内に日本に到達する可能性がある」というシミュレーション結果を報じた。

    The worst tanker oil spill in decades is unfolding across hundreds of miles of the East China Sea after an Iranian… https://t.co/rM8AoGmOxo

    日本の海岸や魚介類への影響は

    事故海域を管轄する第10管区海上保安部の広報担当者は、BuzzFeed Newsの取材にこう説明した。

    「濃い油膜は認められず、日を追うごとに油膜は薄くなっています。コンデンセートは揮発性が高い油のため、浮流油の範囲も縮小している。末端のほうは拡散、消滅しています」

    「現在も巡視船1隻で『航走拡散』という作業を実施し、油粒を細かくしています。また、航空機1機で現場の調査などを行なっています」

    海洋生物の影響については「油が浮いている状況のため、全く影響がないとは言えないが、現在のところで影響が出ているという情報は入っていない」と指摘。

    また、日本への油の漂着についても、「ただちに重大な影響が及ぶ状態ではないが、風潮流の流れによって変化するため、引き続き調査を継続したい」とした。

    環境保護団体は「予測は不可能」

    一方、環境団体NGOグリーンピースは1月24日、声明を発表。

    状況は進展中ですので、既に流出した原油の量と、今後も増える見込みの流出量についての正確な情報は得られていません。今回の原油流出の最終的な規模の大きさを予測するのは不可能に近く、それに伴う環境への影響は予測不可能です。

    そのうえで、各国の当局に「生態系に及ぼす重大な影響を見極めるために、系統的な監視体制を敷かなければならない」と呼びかけている。

    グリーンピース・ジャパンの広報担当者は、1月15日に出された報告書に言及しながら、このようにコメントした。

    「コンデンセートは揮発性が高く、原油漏れに見られるような粘り気のある濃密な黒い油とはならないが、環境へのリスクは全くないとは言えません」

    「コンデンセートがこの規模で流出した例は過去にありません。また、多くの海洋生物が移動している海域にもなるため、今後も注視していきたい」

    UPDATE

    グリーンピースの声明部分で表現を修正しました。