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桜を見る会「鳩山首相が例年より相当多く呼び、1万人の大台に乗った」は誤り

ジャーナリストの有本香氏がニッポン放送のラジオ番組で発言した内容が、ネット上にも広がっている。参加者数が1万人を超えたのは小泉政権時代。招待数は30年前から1万人規模だった。

費用面や招待者基準などをめぐって批判が集まり、中止が決まった首相主催の「桜を見る会」。

「鳩山首相が例年より相当多く呼び、1万人の大台に乗った」という情報が広がっているが、結論からするとこれは誤りだ。

BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

情報の発端となっているのは、ニッポン放送のラジオ番組「飯田浩司のOK! Cozy up!」でのやりとりを文字起こしした記事【安倍総理主催「桜を見る会」は公金の私物化なのか】だ。

記事には、ジャーナリストの有本香氏と、ニッポン放送アナウンサーの飯田氏とのこんなやりとりが掲載されている。

有本氏:民主党政権時代で唯一行われたのが、鳩山さんのときです。そのときに1万人規模で呼んでいて、それは例年より相当多く呼んでいます。

飯田氏:前の年よりかなり増えて、大台に乗った。

Yahoo! Japanに転載された記事は、Twitterで4000以上シェアされ、拡散。

記事を紹介し、「枝野や蓮舫はなんで黙ってたの?」などというコメントが付いたツイートは、5500近い「いいね!」が集まっている。

30年前から1万人を招待

「鳩山首相の時代に例年より相当多く呼んだ」「前の年よりかなり増えて大台に乗った」という情報は、誤りだ。

まず「呼んでいる」という言葉を招待者数と捉えた場合、こうなる。

招待者が開催の1ヶ月ほど前に発表され、報道されているケースを確認すると、1988年の竹下登首相は、1万人を招待していた(毎日新聞、1988年3月8日)。

また、1991年の海部俊樹首相、1993年の宮澤喜一首相、1996年の橋本龍太郎首相もやはり1万人を招待している(毎日新聞、1991年3月9日 / 読売新聞、1993年3月16日 / 同、1996年3月8日)。

2010年に鳩山首相が招待した人数も、1万人だ(中国新聞、2010年2月24日)。

こうした事実から、有本氏と飯田氏のやりとりが誤りであることが分かる。

参加者数でも「誤り」

次に、有本氏の「呼んでいる」という言葉を「参加者」と捉えた場合でも、この情報は誤りだ。

「桜を見る会」は招待者数と参加者数が異なることがある。招かれても来ない人がいるし、参加者が家族など同伴者を連れてくることもあるからだ。

首相官邸サイトや関連報道による「桜を見る会」のここ15年の歴代参加者数をまとめると、以下のようになる(ここ5年の招待者数は内閣府答弁による)。

2004年(自民党・小泉政権)約8000人

2005年(自民党・小泉政権)約8700人

2006年(自民党・小泉政権)約1万1000人

2007年(自民党・安倍政権)約1万1000人

2008年(自民党・福田政権)約1万人

2009年(自民党・麻生政権)約1万1000人

2010年(民主党・鳩山政権)約1万人

2011年(民主党・菅政権)東日本大震災のため中止

2012年(民主党・野田政権)北朝鮮ミサイル対応のため中止

2013年(自民党・安倍政権)約1万2000人

2014年(自民党・安倍政権)約1万4000人(招待1万2800人)

2015年(自民党・安倍政権)約1万5000人(招待1万3600人)

2016年(自民党・安倍政権)約1万6000人(招待1万3600人)

2017年(自民党・安倍政権)約1万6500人(招待1万3900人)

2018年(自民党・安倍政権)約1万7500人(招待1万5900人)

2019年(自民党・安倍政権)約1万8000人(招待1万5400人)


少なくともこの10年で、参加者が1万人という大台に乗ったのは2006年、小泉純一郎首相のときだった。

民主党への政権交代直後、鳩山由紀夫首相のときも確かに1万人が参加しているが、その前年の2007年には安倍晋三首相(第一次政権)の際にも、小泉首相と同じ1万1千人が参加している。

「安倍政権850人、鳩山政権1万人」も誤り

この問題をめぐっては、「安倍政権850人、鳩山政権1万人」というツイートが3000以上リツイートされ拡散していたが、同様に誤りだ。

850人というのは、安倍首相が招待したとされている後援会関係者の人数で、まさにいま問題視されているもの。

野党はこの点について、招待基準が曖昧で、税金で開催されている行事を私物化しているなどとして、追及を強めている。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

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  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。