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年30人が死亡することも。子どもに大流行中の「RSウイルス」が恐ろしい本当の理由

初めての感染では重症化しやすく、特に1歳未満の赤ちゃんにとっては命の危険もあるRSウイルス感染症。季節外れの流行を起こしていますが、どのような病気で、どのような対策を取ればいいのでしょうか。ワクチンや予防薬、そして治療薬は……?

子どもが多く感染する「RSウイルス」が昨冬にほとんど感染者がいなかった反動で季節外れの流行を起こし、全国で猛威をふるっている。

「風邪のひとつ」であるものの、人生で初めての感染では重症化しやすく、乳児では死に至る危険性もある病気だ。

横浜市で保育園に通う記者の娘(1歳3ヶ月)も感染し、さらには記者も……。

いったい、どのような病気で、どのような対策を取ればいいのだろうか。小児科医の森戸やすみさんに話を聞いた。

国立感染症研究所

国立感染症研究所の最新の週報(7月16日発表)では、RSウイルスの定点あたり報告数が4.13となり、7週連続で前の週を上回った。すでに2019年の流行は超えている。

そもそも「RSウイルス感染症」は、文字通りRSウイルスによる呼吸器系の感染症で、子どもに多くみられる。ほぼすべての子どもが4歳ごろまでには1度は感染する病気だ。森戸さんが解説する。

「RSウイルスは、子どもが必ずかかる感染症です。何度も感染する病気で、大人もかかりますし、よくある風邪の一種ではありますが、小さいころの初めての感染では症状が重くなりやすく、入院を必要とする場合もあります。また、1歳未満の赤ちゃんでは命に関わることもあるんです」

「本来であれば冬に流行する病気ですが、コロナ対策の影響なのか、昨年はひとりも患者さんを見ませんでした。前のシーズンでかからず抗体がない子が多いため、この夏に一気に広がってしまっているのかもしれません」

RSウイルスは、新型コロナウイルスと同様に「飛沫感染」や「接触感染」を通じて広がる。

手洗いや咳エチケットが有効な対策だが、感染力は強く、「保育園で3分の2休んでいるなんてことも聞きます。なかなか防ぎきれないかもしれません」という。

恐ろしいのは「初感染」

Kota Hatachi / BuzzFeed

RSウイルスに初めて感染しぐったりとしている記者の娘

一度かかっても免疫はできず、一生の間に何度も感染する可能性がある。

2回目以降の感染では風邪症状で済むが、注意しなければならないのが、森戸さんのいうような「初めての感染」だ。

初めて感染したときの一般的な症状の特徴をまとめると、以下のようになる。

  • 潜伏期間は3〜5日ほど
  • 鼻水や発熱の風邪症状から始まり、せきや高熱が出る
  • 重症化すると「喘鳴」(ぜんめい、ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)の症状が出る


重症化すると、呼吸困難をともなう細気管支炎肺炎を発症することもある。

また、RSウイルスに感染したことを契機に気管支喘息を発症する場合があり、ゼーゼーすることが長引いたり繰り返したりする際には注意が必要だという。

突然死のおそれも

Smith Collection / Getty Images

国内では2012〜19年まで、144人がRSウイルスで命を落としている(人口動態統計による)。死亡数が30人を超えている年もある。

なかでも、月齢の小さい赤ちゃんでは症状がないまま突然死に至るケースがあるという。

「乳児は症状がいきなり悪くなることもあります。もっと怖いことに、月齢が1、2ヶ月ぐらいだと不整脈が出てしまい、乳幼児突然死症候群の原因のひとつであるとも言われています」

赤ちゃんへの感染を防ぐためには、どうしたらいいのだろうか。森戸さんはこう語る。

「大人や上のきょうだいが風邪を引いてしまったら、特に生後半年よりも若い子には近づかないようにしましょう」

「物理的に離れることが難しかったら、飛沫感染・接触感染をしないように感染した人が家の中でもマスク、手洗いを徹底します。とくにきょうだいは、赤ちゃんの顔に向けて咳をしたり、顔を触ったりしないようにしましょう」

重症化のサインは?

Monzenmachi / Getty Images

重症化をしているか、入院を必要とするかどうかを見分けるポイントは、「呼吸が苦しそうか」「食事やミルクが取れているか」だという。

「ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音が特徴の『喘鳴』(ぜんめい)や、お腹や胸がペコペコと凹む『陥没呼吸』の症状が出ていると、重症化のサインです」

「それ以外にも、呼吸で精一杯になってしまい、丸1日水分を取れていませんという状況になったら、入院を勧めることになると思います」

入院をすると点滴をしたり、気管支拡張薬や酸素吸入の措置をとったり、痰の除去をしたり、必要があれば炎症を抑えるためのステロイド治療も行われるという。

特効薬やワクチンはない

Runphoto / Getty Images

生まれつき心臓や肺に疾患があったり、早産で生まれたりした子、ダウン症の子も重症化しやすい。こうした子どもは「シナジス」というRSウイルスの予防薬の対象となる。

そのほかのケースでは、特効薬やワクチンはない。安静にするほか、解熱剤やせきや鼻水を緩和する薬など、症状にあわせた「対症療法」をするしかないのが現状だ。

「処方された薬も病気を治すものではないので、本人が嫌がっていたり、せきがあまりにもひどかったりする場合に無理矢理に飲ませる必要はありません」

「また、解熱剤を使う目安は38度5分ですが、痛みを抑える効果もあります。寝られていなかったり、機嫌があまりにも悪かったりした場合は、38度でも37度5分でも使ってもいいと思っています」

同じ理由から、鼻に綿棒を突っ込まなければいけない「RSウイルス検査」を無理にする必要もないという。検査は1歳以上では保険適用外になってしまうことにも注意しなければならない。

日常生活にはいつから?

Kota Hatachi / BuzzFeed

取材に応じる森戸さん

では、症状がどの程度落ち着けば、日常生活に戻って良いのだろうか?

学校保健法では「呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」とされているが、森戸さんはこう説明する。

「個人的な見解としては、まず、熱が下がっていること。そして、食事がいつもの半分以上食べられるようになっていたら登園してもいいのではないでしょうか」

とはいえ熱が下がるまでには、数日間を要する。森戸さんも、「40度近くの高熱を伴う症状が1週間続いた例もありました」と語る。自宅療養であれど、長期戦に備える必要がある。

記者の娘(1歳3ヶ月)の場合は、鼻水と軽いせきの症状が出た翌日に40度近い高熱と激しいせき症状が出るようになり、平熱に戻るまでに5日間を要した。幸いにして、喘鳴の症状はなかった。

なお、大人がかかった場合は「軽い風邪」とされているが、筆者の場合は40度近い高熱が2日ほど続き、その後も体調を崩した。看病をする側の対策も怠らないようにしよう。

Contact Kota Hatachi at kota.hatachi@buzzfeed.com.

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