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もし大災害に襲われたら。傷つく子どもたちと向き合うために知っておきたいこと

専門家じゃなくても大丈夫。

緊急地震速報の音を真似しながら、母親に向かって「地震です、地震です」と繰り返す女の子。ブランコを大きく揺らし「地震だ」と叫ぶ男の子たち……。

熊本で新聞記者をしていた私が、本震の翌日、震度7に見舞われた益城町の避難所で見かけた光景だ。いったい、これは何を意味するのか。

「子どもたちは、言語化できないストレスをそうやって表現しているだけ。一緒にそのまま『避難ごっこ』をするなど、怒るのではなく、良い結果をもたらすように接してあげてください」

そう話すのは、DMAT (災害派遣医療チーム)の事務局で運営室長補佐を務める河嶌譲さん。精神科医として、東日本大震災や熊本地震の現場を踏んできた災害時医療のプロフェッショナルだ。

東日本大震災だったら、ミニカーを並べて津波で流されるようにしたり、熊本地震だったら、机をガタガタと揺らしたり。河嶌さんも、そんな子どもたちをたくさん見てきた。

大震災や津波、台風に水害。災害が起きたとき、子どもたちは心に大きな傷を負う。13歳以降の思春期では、それがリストカットなどの自傷行為につながる場合もある。河嶌さんが入った熊本の現場でも、そういったケースがあったという。

災害時、子どもたちに出る反応は

まずは、子どもたちの異変に気づかなければ始まらない。5つにまとめたものがこれだ(出典:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)

①身体症状

手足が動かなくなる、声が出なくなる、立てなくなる、意識を失う、お腹や頭が痛くなる、おねしょをする

②退行現象(赤ちゃん返り)

わがままになる、年齢にそぐわない甘え方をする

③マジカル・シンキング

現実にないことを言い出す、自分の悪事のせいで災害が起きたと思い込む

④災害ごっこ

地震だったり津波だったり、災害で体験したことを思わせる遊びや話を繰り返す

⑤精神症状

突然パニックになる、泣く、眠れなくなる、食欲を失う

「どれも、不安な気持ちの表れ。当たり前の反応です」。河嶌さんは説明する。

では、周りの大人たちはどうすれば良いのか。

河嶌さんに教えてもらったのは「心理的応急処置(PFA)」というアプローチ方法。「専門家でなくてもできる支援」だという。

もともとはWHOが2011年にマニュアル化し、DMATの隊員講座にも2014年から取り入れられている。子ども向けのマニュアルは、セーブ・ザ・チルドレンがまとめ、日本でも2年前から関係機関への研修が始まったばかりだ。

見る:子どもたちのストレスを見分ける

まずはストレスを抱えている子がいないか、サインを出している子がいないかを確認すること。

「症状が出るのは正常とも言えるのですが、逆に、ずっとふさぎ込んでいるような子どもは要注意です」

痙攣などの身体的な症状が出ている子どもを見たときに、「大人が慌てないこと」も重要だという。

「一番不安なのは本人。こちらが動揺せず、近くにいてあげることで、安心感を与えることが大切になります」

聴く:子どもの話に耳を傾ける

こちらから無理に話させるのではなく、あくまで聞いてあげること。

「気持ちを整理させるつもりで、振り返りをさせてしまうのは禁忌。逆にトラウマを呼び返し、PTSDを悪化させてしまいます」

視線を合わせる、声のトーンを穏やかにする、相槌を打つ……。泣いている子どもに対し「それが普通」「みんな同じだよ」と伝えることもテクニックのひとつ。

「不安だったね、と共感することや、パニックになっている子どもに対して、聞いていた話をまとめてあげることも効果的です」

つなぐ:適格なサポートや社会的支援につなげる

深刻なストレスを抱えている場合は、専門家による支援につなぐこと。

「日常生活に支障を来すような反応が出た場合は、すぐに医師に相談してください」

精神保健福祉センターやスクールカウンセラーを頼ることもできる。普段から、どんな行政サービスがあるのか、情報を集めておくことも大切だ。

西日本新聞によると、震度7の地震に2度見舞われた熊本では、少なくとも3222人の小中学生が心のケアのため、「カウンセリングが必要」と判断されたという。

「復興が見えるか、見えないかでは、大きな違いがある。周囲の環境がもとに戻らない限り、子どもたちの抱えるストレスも続いてしまいます。近くにいてあげながら、『時間とともに良くなっていくよ』と伝えてあげてください」

まずは、身近な人たちができることを。非日常がいまだに続く熊本のことを思いながら、河嶌さんはそう語った。

Kota Hatachiに連絡する メールアドレス:Kota.Hatachi@buzzfeed.com.

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