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なぜ学校では、ゴムのつけ方を教えないの? 文科省に聞いてみた

知りたい性の知識は、いつもネットで調べていた。

セックスのこと、コンドームのこと。性病のくわしい知識、ピルのこと。そういう大切なことって、学校の保健の授業で、習っただろうか。

妊娠のこととか避妊のこととか、性病の知識は、いつもネットで調べていた。何が正しいのかもよくわからず、不安にもなっていた。

なぜ学校では、実践的な性教育を教えてもらえないのか。文部科学省に聞いた。

コンドームを習うのは……

「時間が足りないんですよ。保健の時間はそれほど多くない。限られた時間のなかで何を優先するかという話なんです」

そうBuzzFeed Newsの取材に話すのは、文科省の保健教育の担当者だ。

そもそも学校における授業の指針を決めているのは、中央教育審議会だ。そこで出された答申によって文科省が指導要領を改定し、現場の教師に周知され、教科書に反映されていく。

さらに文科省は、「保健教育の手引き」を出している。それぞれの学年でどんなことを教えるべきか、指導要領の内容を説明している。

たとえば、コンドームについて教えるのは中学3年生が最初だ。ただ、つけ方を実践的に教えるというよりは、性病の予防という観点からその存在を伝えるのだという。

「コンドームを中3で教えるのでは、遅くないんですか?」と聞いてみた。担当者はいう。

「いろいろな意見がありますよね。遅いという人もいるし早いという人もいる。調査結果も参考にはしています」

青少年を対象にした「性行動全国調査」(日本性教育協会)がある。

6年ごとだが、最新の調査(2011年)では、中学生男子の性交経験率は3.7%、女子は4.7%。たしかに割合としては少ないが、ゼロではない。

「学校で教えるべきだという人もいるし、家庭で教えるべきだという人もいます。考え方は多様です。やっぱりコンドームについてこの時期に教えなきゃいけないという落としどころが中学3年生になっているんです」

でも、つけ方を教えたほうが、より安全なセックスを子どもたちに周知させることができるのではないだろうか。

僕(28歳)自身、どうやってコンドームをつければ良いのかを知ったのは、それこそ箱に入っていた説明書だった。

中学時代に彼女ができたとき。使う予定もないのに買ってみて、ひとりで試行錯誤した記憶がある。

「保健は正しい知識を教える場です。具体的な対処については、学校だけじゃなく家庭や地域社会で学べる場を作ることも重要になってくるんです」

また、それぞれの学校が生徒たちの状況を鑑みて、「特別教育」の枠で保健でカバーできない部分を補充することもあるそうだ。

一方、ピルについて学ぶのは高校生になってから。あくまで避妊目的としてだという。

「家族計画の関する項目でピルについても教えるようにしています。結婚は現状では女性は16歳、男性が18歳でできるということを考えると、高校では知っておくべき最低限の話。中学生が家族計画を立てることはありませんから」

また、望まぬ妊娠を防ぐために使う緊急避妊薬(モーニング・アフター・ピル)については、「リスクが高い子たちに対して、生徒指導の一環」として教えるにとどめているそうだ。

「基本的には保健の内容は、ほぼ全ての子が対象になるように構成されている。そこがまず優先ですよね」

使い方を教えることで、逆に子どもたちが乱用してしまう可能性も危惧しているのだろう。いずれにせよ、時間が足りないのが問題だと担当者は嘆く。

「限られた時間のなかで、何を優先するかという話なんです。保健の時間はそれほど多くない。時間は非常に限られている」

担当者によると、小学校では年間4時間だけ。中学校は、3年間で48時間だ。

保健では防災や交通安全、身体の発達などについても教えないといけない。「役立つ性知識」を保健だけで教える時間はないのが現状だ。

「これだけ健康課題が増えているのに、足りないですよ。全然。ものすごく多くの時間をくれるっていうのなら、やりたいですよ」

高校は70時間あり、年齢も高くなるため、比較的余裕があることもあり、詳しい内容は高校になってから教えることになるのだという。

では、今後の課題はなにか。「情報の取り方を教える必要があります」と、担当者は言葉に力を込める。

背景には、インターネットの存在がある。決して正しいとは言えない医療情報・性情報が氾濫しているからだ。

「以前は友だちや先輩から聞いた情報を生かす人が多かったのですが、いまはネットの情報の方がよっぽど多いですよね」

先ほどの「性行動全国調査」(2011年)を見てみると、中学生男子の20.7%が、女子の19.5%がネットでセックスの知識を得ているという。

高校生男子になるとその割合は44.2%、女子でも23%だ。避妊方法に絞ってみると、高校生男子の21.6%が、女子の12.7%になる。

これはすでに6年前の調査だ。スマホが一気に普及した現代には、すでに当てはまらない数字だろう。担当者は言う。

「性情報に関しては非常に危険性もある。情報がほしい子には、『こういうところで正しい情報を得られるよ』と伝えないといけない」

心や体に傷を残さないために

実際、2016年末の中教審でも、このような答申が出された。

近年では、情報化社会の進展により、様々な健康情報や性・薬物等に関する情報の入手が容易になるなど、子供たちを取り巻く環境が大きく変化している。このため、子供たちが、健康情報や性に関する情報等を正しく選択して適切に行動できるようにする

これに基づき、文科省としても保健教育の現場に「情報の大切さ」を周知させていくことになるという。

性に関する間違った情報を得ると、心や体に将来、傷を残すリスクもある。担当者は憂える。

「性に対する正しい情報、どれが正しいかを選択する基準を自分の中でつくれるような教育のあり方を考えていかないといけない」


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