岸田新総裁、就任会見で「16回」も繰り返したある言葉

    河野太郎氏との決選投票のすえ、新総裁に選出された岸田氏。臨時国会での首班指名を経て、次の首相となる。

    自民党の新総裁となった岸田文雄氏の就任会見が9月29日夜に開かれた。

    政治と国民の距離が開いているとの現状認識を「民主主義の危機」と表現した岸田氏。会見では「説明」という言葉をBuzzFeed Newsの集計で16回も繰り返し、自らの「丁寧さ」を強調した。

    一方で会見が30分で打ち切られたことには、記者から批判の声もあがった。いったい、どのような会見となったのか。

    河野太郎氏との決選投票のすえ、新総裁に選出された岸田氏。臨時国会での首班指名を経て、次の首相となる。

    同日夜に開いた会見では、冒頭発言で以下のように自らの危機感と「特技」を示した。

    「国民の皆さんの中に、国民の声が政治に届かない、あるいはこの政治の説明が国民の心に響かない、こうした厳しい切実な声が溢れてきました。今まさに我が国の民主主義そのものが危機にあるという強い危機感を持ち、私は我が身を顧みず、この総裁選挙、真っ先に手を挙げた」

    「私、岸田文雄の特技は、人の話をよく聞くということであります。ぜひ山積している課題に対して、できるだけ多くの国民の皆さんの声を聞かせていただきながら、一つ一つ丁寧に答えを出していきたいと思っています。丁寧で、そして寛容な政治を行い、国民の一体感をしっかりと取り戻していきたいと考えております」

    総裁として最初の会見となったこの場で、岸田氏は「丁寧な対応」を見せる姿勢を強調していた。

    質問はメモに取り、目線も手元の資料などには目を落とさず、記者の方向に向けることが多かった。さらに答える際には「〜の質問をいただきました」などと述べるようにしていたのも特徴的だ。

    しかし、「政治の説明不足」とされていた問題については「必要があれば説明をしたい」などと、報道陣の追及にはまっすぐ答えなかった場面もあった。

    「説明しない政治の弊害」については…

    質疑では記者から、安倍・菅両政権を名指した「説明しない政治の弊害」に関する質問があがった。岸田氏の回答はこうだ。

    「説明については、特にコロナ対策などを考えましたときに、今の様々な政治課題は、国民の協力なくして結果を実現することはできない、こういった時代であると認識をしています」

    「そういった点から、説明ということについては、国民の声をしっかり聞く、さらには丁寧で寛容な政治をを行うということを私も掲げておりますので、こうした説明、国民の皆さんに政治の説明責任を果たしていくことは、しっかり取り組んでいきたいと思います」

    また、岸田氏が再調査を否定した森友・加計学園の問題や、地元・広島における河井元法相夫妻の選挙買収事件についての「説明」をどうするのかも問われた。

    前者については行政の調査報告がなされ、司法の場で捜査や裁判が進んでいるとして、「それを前提に、国民の皆さんにしっかり寄り添う政治の立場からも必要であれば説明させていただきたい」と述べ、再調査には否定的な見方を示した。

    そのうえで、一連の問題の最も重要な点は「公文書の管理」であるとし、「公文書は行政の基本、そして国民の行政への信頼の根幹。今回指摘されたようなことが2度と起こらないように公文書管理の適正化をして、再発防止を政治の責任として行っていかなければいけない」とも述べた。

    後者については、自民党から「最終的には総務省にしっかりとした報告書が出される」との認識を示し、それを確認した上で必要があれば説明するとした。

    「記者の皆さんの後ろには国民の皆さんがいる」

    会見自体が30分で打ち切られた点については、記者から以下のような質問があがった。

    「このコロナ禍の国難の中で、総裁のメッセージは非常に大きいと思います。その1回目の会見を30分で終わらせることは短くないでしょうか」

    岸田氏は「総裁のメッセージは重要である30分でいいのかというご質問がありました」と質問を繰り返し、「ご指摘はしっかり受け止めたいと思います」と以下のように述べた。

    「できるだけ多くのこのご質問を受けて、双方向の対話をさせていただく。私も総裁選挙の際に、記者の皆さんの後ろには国民の皆さんがいるんだという意識で、できるだけ時間をとって、確か……出馬表明も含めて全部で6時間、記者の皆さんと記者会見という形で意見交換をさせていただきました。こういった姿勢は大事だと思います」

    「ただ、現実、総裁あるいは今後総理という立場になった場合に、全く時間制限なしで対話を続ける、これは現実として難しい部分もあると想像しています」

    「できる限りこうした記者の皆さん、さらには国民の皆さんとの双方向のやりとりを大事にさせていただきたいとは思っておりますが、現実の政治日程の中で、記者の皆さんにもできるだけ協力していただいて、コンパクトに、そして効率的に行わさせていただければと願っております」

    なお会見では、意図せずしてなのか答えのない質問もあったが、記者からの再質問、いわゆる「更問い」もなかった。