流行が懸念されている「サル痘」が「帯状疱疹」と同じ病気であるとする情報が、拡散している。
サル痘に関して伝えるサイトと、帯状疱疹に関して伝えるサイト、それぞれが利用していた写真が同じだったことが発端となり、「恐怖を煽ろうとしている」などと広がっている。
しかし、そもそも双方の病気はウイルスの種類が異なる。元となったサイトもすでに画像を修正しており、注意が必要だ。
Twitter上で広がっているのは、上のような画像の比較。左はインドの医療情報サイト「TheHealthSite.com」で、右はオーストラリア・クイーンズランド州の保健省のサイトだ。
前者は昨年7月にアメリカで確認されたサル痘に関して、後者は帯状疱疹の一般的な症状について説明している記事だが、使用している画像が一緒であることから、海外で誤情報が拡散。
「メディアが恐怖を煽っている」などと、新たなパンデミックを演出しているなどとする「陰謀論」も重なり、日本にも波及したとみられる。
なかでも「騙されてはいけない!」とする5月21日のツイートには、1万以上のいいねが集まるなど、拡散している。
しかし、帯状疱疹とサル痘は、原因となるウイルスの種類がまったく異なる。
帯状疱疹はヘルペスウイルスの一種が、サル痘は天然痘と同じオルソポックスウイルス属の一種がその原因。症状として双方ともに発疹が出ることがあるが、別の病気だ。
2つの病気の違いは?
そもそも、帯状疱疹は子どもの頃に水ぼうそうとして感染したウイルスが潜伏後、加齢やストレス、免疫低下などから発症するもの。
日本人の多くがウイルスを持っており、厚生労働省によると、80歳までに3人に1人が発症するとされる。重症化や発症を予防するワクチンの接種は、50歳以上に勧められている。
一方のサル痘は、動物が感染源。ヒトとヒトの間では接触や性交渉などを通じてまれに広がる。致死率は1〜10%で小児が重症化しやすいが、国立感染症研究所によると、先進国での死亡例は確認されていない。
予防と治療には天然痘ワクチンが有効だが、日本では1976年以降生まれの人は予防接種を受けていない。これまで国内では感染例は報告されていないが、現在海外で感染が広がっていることから、注意が呼びかけられている。
画像の出どころは…?
なぜ、こうしたまったく異なる病気に関して説明をする2つのサイトの画像が一緒だったのか。
双方のサイトで使用されていた画像は、「iStock」というストック写真サイト(上)のものとみられる。同様のサービス「Getty images」にも同じ画像があることも確認できた。
日本語では「皮膚に感染したヘルペス帯状疱疹ウイルスの腕」と説明されており、2017年4月にアップロードされていた。そもそもサル痘ではなく、帯状疱疹を示した写真であることがわかる。
異なるメディアが同じストック写真を利用することは多い。上述の2つのサイト以外にも、使用しているサイトは複数確認できる。
今回のケースでは、インドの健康情報サイトが異なる病気のストック写真を利用していたことが、誤情報の拡散のきっかけとなったといえる。
なお、同サイトは5月23日(現地時間)に更新され、画像は別のものに差し替えられている。拡散している情報に注意が必要だ。
BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。
ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知しました。
また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。
- 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
- ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
- ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
- 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
- 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
- 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
- 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
- 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
- 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。