日本の“病”をうつした白黒写真が、いま問いかけること。「水俣病は、終わっていない」

    雑誌『ライフ』を中心に様々な作品を発表していたユージン・スミスは、1971年から3年間、水俣に滞在。妻のアイリーン・美緒子・スミスとともに、患者たちの様子をフィルムに収め、写真集「MINAMATA」を発表。絶版となっていたが、クレヴィスから復刻されることになった。

    写真家、ユージン・スミスを描いた映画『MINAMATA』(ジョニー・デップ主演)が公開され、改めて注目が集まっている水俣病。

    © Larry Horricks

    クレヴィスから再販されたユージンの写真集や、長年水俣の人々を撮影し続けてきた塩田武史氏の写真などから、当時の空気と問題の経緯を振り返る。

    海の幸に恵まれている、水俣湾。水銀に汚染されているとは知らずに魚介類を食べた多くの住民が、病を発症した。

    Photo by W. Eugene Smith © Aileen Mioko Smith

    水俣湾での漁猟の様子

    原因は大企業「チッソ」の工場排水に含まれたメチル水銀だった。

    Photo by W. Eugene Smith © Aileen Mioko Smith

    チッソ水俣工場の排水

    猫が狂い死ぬーー。そんな噂話が集落に広がり始めたのは、1950年台前半のことだった。

    Kota Hatachi / BuzzFeed

    1954年8月の熊本日日新聞

    「公式確認」は1956年5月1日。2歳と5歳の姉妹の発症がきっかけだった。当初は「原因不明の奇病」とされ、差別が広がった。

    Kota Hatachi / BuzzFeed

    1956年5月の西日本新聞(現在の観点からは不適切な言葉遣いが含まれています)

    2歳11ヶ月だった妹の田中実子さんは「くつがはけない」を最後に言葉と自由を失った。寝たきりとなった姉の静子さんは8歳で亡くなった。

    撮影 塩田武史

    実家から海を眺める田中実子さん

    原因と言われたチッソは、実験で工場廃液を餌にかけた猫の水俣病発症が確認されても公表せず、排水を止めることもしなかった。

    Photo by Aileen M. Smith © Aileen Mioko Smith

    チッソの工場で抗議する住民たち

    その間に被害は広がった。母親の胎内で水銀にさらされ、重い障害を持って生まれた胎児性水俣病患者も確認された。

    Photo by W. Eugene Smith © Aileen Mioko Smith

    胎児性患者、上村智子さんの手。写真「入浴する智子と母」は、多くの人に衝撃を与えた。両親の意向から1998年に「封印」され、写真集も絶版となっていたが、今回の映画公開を合わせ、クレヴィスから復刻された。

    水俣病が「チッソの工場廃水に含まれたメチル水銀が原因の公害」であると政府が公式に認めたのは、工場の生産が止まったあと、1968年9月のことだった。

    Photo by Aileen M. Smith © Aileen Mioko Smith

    中央公害審査会での上村智子さん。

    患者やその家族はチッソや国、県の責任を問い続けた。症状がありながら認定されていない人たちによる裁判は、いまも続く。

    Photo by Aileen M. Smith © Aileen Mioko Smith

    7万人が救済対象になっているが、被害の全容は明らかになっていない。

    水銀の問題も未解決のままだ。ヘドロは汚染された魚介類とともに湾内に埋め立てられ、「エコパーク水俣」という名前の公園になった。

    時事通信

    しかし、護岸の耐用年数や、災害時の液状化などをめぐる課題もたびたび指摘されている。

    ユージン・スミスにカメラを向けられ、笑顔を見せる田中実子さん。

    撮影 塩田武史

    成人の日に、両親と記念写真を撮った田中実子さん。

    撮影 塩田武史

    着物姿で鏡を覗き込む。

    撮影 塩田武史

    言葉と自由を失ったまま、68歳となった。義兄と一緒に、いまも水俣市内に暮らしている。

    撮影 斎藤靖史

    両親が亡くなってから、笑顔はほとんど見せなくなったという。

    チッソの経営陣を睨みつける胎児性患者の坂本しのぶさん。

    撮影 塩田武史

    セーラー服姿で通学する坂本しのぶさん。

    撮影 塩田武史

    65歳になったいまも精力的に活動を続け、「水俣病は終わっていない」と訴えている。

    撮影 斎藤靖史

    取材協力 斎藤靖史(フリージャーナリスト)、塩田弘美

    Contact Kota Hatachi at kota.hatachi@buzzfeed.com.

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