ジョニー・デップ主演映画の上映会、後援を拒否した水俣市に監督「何が優先されているのか」と苦言

    映画では、ジョニー・デップが演じる写真家のユージン・スミスが水俣病と出会い、現地で患者らと関係性を築きながら、企業による犯罪的行為を写真の力で告発するまでを描いている。

    日本の四大公害と言われる水俣病を世界に伝えたフォトジャーナリスト、ユージン・スミスを描いた映画『MINAMATA』(9月23日公開、配給:ロングライド、アルバトロス・フィルム)。

    映画をめぐっては、水俣市長が制作段階で「負のイメージが広がらないように」などと議会で注文をつけ、先行上映会の後援を拒否するなどの事態も起きている。

    こうした対応について、アンドリュー・レヴィタス監督はBuzzFeed Newsの単独インタビューに対し、「何が優先されているのか」「非常に悲しい状況」と苦言を呈した。

    © Larry Horricks

    水俣病は、化学メーカー「チッソ」が海に垂れ流した水銀によって起きた公害病だ。公式確認は1956年で、汚染された魚などを食べた住民らが脳や神経を侵された。

    患者やその家族は告発を続けたが、チッソは長年にわたってその責任を認めなかったため、被害が拡大。こうした状況を写真家ユージン・スミスが写真集「MINAMATA」で伝え、世界に大きく知られることになった。

    映画では、ジョニー・デップが演じるユージンが水俣病と出会い、現地で患者らと関係性を築きながら、企業による犯罪的行為を写真の力で告発するまでを描いている。

    水俣病をめぐっては、いまもチッソや国を相手取った裁判が続いている。症状がありながら患者と認められない人たちも多く、被害の全容は明らかになっていない。

    チッソは「JNC」(「ジャパン・ニュー・チッソ」の頭文字)という子会社をつくり、いまも水俣市で工場の操業を続けている。当時と変わらず、関わりを持つ住民は少なくない。

    また、いまの高岡利治市長は、JNCの労働組合から全面支援を受けて2018年に初当選した人物だ。

    上映会の後援を拒否した理由

    時事通信

    映画の制作段階では、市側から繰り返し注文がつけられた。

    たとえば高岡市長は2019年3月の市議会で、映画の内容について「当時の様子や歴史などに加えて、現代の水俣の姿も発信されることを望んでいる」とし、以下のように要望している。

    「水俣で起こったことが正確に伝えられることは大切であるというふうに思っておりますけども、一方で、地域にとって負のイメージだけが広がらないようにお願いしたい、という風にも考えております」

    また、副市長も2020年12月の市議会で市長の発言を補強する形で、「市民、とりわけ次代の水俣を担う若い世代が、自らのふるさとに自信を持てる内容となっていることを願っているところです」と発言。

    副市長は今年6月の議会で映画のPRについて、現状では内容がわからないとしつつ、「若い世代が、自らふるさとに自信を持てる内容であれば、市内外にPRすることも考えてまいります」と繰り返している。

    市はその後、「差別や偏見の解消につながる作品なのか判断できない」(西日本新聞、7月13日)「映画が史実に即したものか分からず、制作者の意図も不明」(熊本日日新聞、7月14日)などという理由から、水俣市で予定された映画の先行上映会への後援を断った。

    高岡市長は上映会が市の施設で開かれることに触れながら、「上映会自体を否定しているわけではない。複雑な住民感情に配慮し、後援は適切ではないと判断した」(読売新聞、7月14日)と語ったという。

    なお、熊本県は上映会を後援する方針を示している。朝日新聞によると担当者は「歴史や教訓を学んでもらうきっかけになる。世界的に発信されることに意義がある」としている。

    監督は「当時のチッソと全く同じ言い分」

    © Larry Horricks

    チッソ社長は國村隼さん(右)が演じた

    BuzzFeed Newsの単独インタビューに応じたレヴィタス監督は、こうした市の対応について苦言を呈した。

    「現在も必要な支援を得ていない患者の方々や、認定されていない方がいる。助けを求める人々には、注目される機会が必要です。地方行政は本来ならそうした声を代弁し、大きくして届ける立場のはずですが、その機会を逃し、企業の利益を優先しているように見えてしまうことは、非常に悲しい状況です」

    市側の「負のイメージが広がらないように」という注文は制作段階で把握していたという。

    「何が優先されているのか、誰の命が軽んじられているということがわかる言葉ですよね。患者さんや被害者の存在をなきものにして、経済的な利益を優先したいのではないでしょうか。それは、当時のチッソと全く同じ言い分ですよね」

    ただし、水俣市やJNC(チッソ)から直接的な圧力や抗議を受けたわけではない、とも明らかにした。

    「私たちが日本の構造の中にいないということが功を奏したのではないでしょうか。距離があったからこそ、直接的な圧力は受けなかった。(間接的な)圧力からも自由でした」

    一方で支援者からは「患者や家族を傷つけない作品に」という声もあがっていた。水俣を訪問し交流、制作の許可を得ていたレヴィタス監督は、その意見をできる限り反映させることを心がけたという。

    「世界の人たちが同じような犠牲を受けないように、映画をつくってほしいという声がありました。そうした患者の方々の声をしっかりと受け止めて、一番の注意を払ってきました。いまも責任を持ち続けています」

    「水俣のことを忘れかけている、あるいは知らない若い世代が多いとも聞きました。この作品が、そうした世代が過去の史実を学び、自分ごととして捉え、声をあげる人たちの手助けをするきっかけになれば、と思っています」


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