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「収入は月100万円」まとめサイト管理者が語る運営手法

ネット上の情報をつなぎ合わせる「まとめサイト」。大手メディア並みのビューを持つサイトもあるが実態は知られていない。ある管理者がBuzzFeed Newsの取材に実態を語った。

インターネット上の情報をつなぎあわせて伝える「まとめサイト」は、訴えられた保守速報など大量にある。デマや無断転載などが問題視されるが運営元が不明で実態がわからないサイトがほとんどだ。

月1000万ビューある中堅まとめサイトの管理者がBuzzFeed Newsにその実態を語った。まとめサイトが広がる背景には、ネットの特性をついた編集方針や、運営指南する企業の存在がある。

まとめサイトの記事が拡散する2つの理由

Takasuu / Getty Images

まとめサイトに明確な定義はない。ネット掲示板の書き込みやTwitterなどの情報を集めて、見出しをつけただけのものもあれば、そこに独自の文章を加えてよりニュース的な発信をするサイトもある。

多くのまとめサイトに共通するのは、新聞やテレビや一部のネットメディアなどとは違い、取材をせずに記事を書くことだ。

個人や少人数で運営しているまとめサイトが、大手メディアにも匹敵するようなビューを獲得できるのは、2つの理由がある。

1つ目は、事件事故や大きなニュースが起きたときに、断片情報を素早く集めて提示することで、その話題について知りたいネットユーザーのニーズに答えていること。

2つ目に、大げさな見出しの過激な内容にまとめることで読者の感情を刺激し、その力でSNSを通じて拡散させていること。

その具体的な手法や指南企業の存在について、ある管理者がBuzzFeed Newsの取材に答えた。

「月1000万PV」を超えることも

Kota Hatachi / BuzzFeed

名古屋市内で取材に応じたのは、20代の男性。運営しているサイトの記事に関して、BuzzFeed Newsが以前、誤りを指摘したことがあり、今回の取材に至った。

待ち合わせ先の喫茶店に現れた男性の物腰は柔らかく丁寧で、自らの名刺を差し出し、話を始めた。

「情報をわかりやすくして伝えるのが一番大切だと思う。埋もれている話題を掘り起こす。今の話題をわかりやすくピックアップすることを、目指しています」

自らの運営方針についてこう語る男性のサイトは、主に政治や経済、さらには災害情報などの速報系に特化しているニュースサイトだ。一人で運営している。

1ヶ月のページビュー数(PV)は毎月500〜600万。ユニークユーザー数(UU、アクセスした人数)は200万が平均だ。1000万PVを超えることもあるという。

「収入は10アクセスで1円。月100万くらいの収入ですね。ゲーム実況や時事ネタのYouTubeなども軌道に乗り始めていますが、収入の柱はこのサイトです」

男性はメディア関係の企業に務めた経験はない。こうしたサイトをつくり始めたのは、大学に入ってからだった。

栄養学を学んでいた延長で、料理系のまとめブログを始めたことがきっかけだった。SEOなどを勉強しながら、徐々にアクセスを拡大させていったという。

「東日本大震災をきっかけに、福島原発や放射能に関して調べて書き始めて、政治ネタが増えてきたんです。自分も書きながら興味を持つようになり、勉強を始めました」

サイトが軌道に乗ってきた2年後から、専業にすると決めた。

「『物議』や『炎上』という言葉は反応が大きい」

Kota Hatachi / BuzzFeed

SNSでの拡散がアクセスを伸ばす鍵だ。そのために一番大切にしているのが、タイトルだという。

「記事のタイトルで断定したり、派手に強調したりします。『物議』や『炎上』という言葉を入れると、反応が大きい。与野党どちらかを批判する言葉も、わかりやすくインパクトが大きい言葉ですね」

戦略が功を奏していることは、数字が裏付ける。このサイトの記事のシェア数を計測ツール「BuzzSumo」で調べてみると、1000シェアを超えている記事は250本以上あった。新聞社が運営しているサイトでも、これだけ拡散しているものはあまりない。

安倍政権に関する記事で、5万シェア近くを獲得しているものもある。これはこの1年間にネット上でシェアされた「安倍」というキーワードがある記事のなかで、ロイター通信に次ぐ多さだ。

記事執筆は1日10本

Kota Hatachi / BuzzFeed

記事は1日10本を目安に出している。多いときは20本を超えることもある。取材をして記事を出す大手メディアの記者は、多くても1日1本程度。比較にならない執筆量だ。

「選挙の時は1時間で10記事書きましたね。西日本の豪雨の時も20記事ぐらい書きました」

ネタ探しのために大量のニュースを読むことが、日々のルーチンだ。ネットのトレンドからも目は離さない。読者からの情報提供もあるという。

「新聞のお気に入りリストをまとめてチェックしています。NHK、朝日、読売。そのあと、ネット上で話題のトレンドランキングや、2ちゃんねるなどの掲示板を確認しています」

記事を大量生産する中で、間違いはつきものだという。

「ネットは速く書いた方が勝ちなんです。内容よりも記事の速さとタイトルが大切。ただ、速さを追求するとどうしても間違えてしまう」

「恣意的なデマは書くことはありませんが、細かく確認せず間違えてしまうこともあります。コメントで指摘があれば、すぐに修正しますが」

訴訟リスクと「免責事項」

「まとめる」という行為を「独立した別個の表現行為」と指摘。管理人の「一定の意図」があるとした6月28日の大阪高裁判決
Kota Hatachi / BuzzFeed

「まとめる」という行為を「独立した別個の表現行為」と指摘。管理人の「一定の意図」があるとした6月28日の大阪高裁判決

そんな中で、男性が注意をしているのが「訴訟リスク」だ。

大阪高裁では今年6月にまとめサイト「保守速報」に掲載された差別的な記事をめぐり、「まとめ行為も表現の一部」という判決を出した。

男性は「訴訟になるような行為は避けています」と言い切る。

「まず、削除要請に応じるようにしています。それに、特定の個人を批判するような記事を書くことはありません。政治家とか犯罪者、有名人ぐらい。個人に対しては慎重にしています」

また、画像は基本的に「著作権フリー」のものを使っているという。ただ、「テレビ画像のスクショなども使っています」といい、実際には、大手メディアが著作権者だろうと思しきものが、大量に並んでいる。

リスクを避けるべく、男性のサイトには、こんな免責事項が記されている。

  • 公開されている文章・画像・動画は、各関連企業や団体とは一切関係がない
  • 版権物の知的所有権は、それぞれの著作者・団体に帰属している。削除要請には応じる
  • 掲載内容に関してその内容を保証するものではない
  • サイトを利用したことによる間接、直接の損害、その他いかなる損害に関して責任を負わない


いったい、なぜこのような文言を記しているのか。

「免責事項についてはある会社からアドバイスをもらって、それから記載するようになりました」

サイト運営を手伝う企業が

イメージ写真
Ademay / Getty Images

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男性の説明によると、まとめサイトの運営全般を支援してくれる企業があるのだという。

広告の最適化だけではなく、サーバーの提供や維持管理、サイトデザインなども手伝ってくれる、いわばワンストップのコンサルサービスだ。

担当者が1人つき、電話やメール、時には直接会いにくることもある。広告料の一定割合が手数料になるという。

「アクセスが伸び始めてきたころに『うちと提携しませんか』『ブログの買取もしたい』という依頼が10社以上からきました」

なかには「人を増やしませんか」「手配しますよ」と言ってくる「人材派遣会社みたいな」企業もあるという。

男性によると、まとめサイトの多くは、そういった企業と連携をしている。中には企業の手配を通じて実際に人を雇い、事務所をつくり、法人化しているところもあるそうだ。

そういう他サイトの情報は、まとめサイトなどの管理人たちとのオフ会などで共有しているという。「月1億アクセスぐらいの人たちが来てます」と話す。

「良い情報」は主観

Kota Hatachi / BuzzFeed

個人情報の漏洩、炎上や「ネットリンチ」とも呼ばれる叩き行為、さらにはデマなどの誤情報やフェイクニュースの拡散……。

ネット上に乱立する「まとめサイト」をめぐる批判は尽きない。断片情報をまとめるだけの「まとめサイト」とは異なるが、ニュースサイト「netgeek」をめぐっても、名誉毀損を訴える集団訴訟の動きがある。

「netgeekさんも、アクセス稼ぎをやりすぎて個人攻撃するなど、歯止めが効かなくなってしまったのではないでしょうか」

男性自身は、自らが発信する情報についてどう捉えているか。

「良い情報を発信していきたい、とは思っています。ただ、良い情報って、主観ですよね。ネットは自分の好きな、気持ち良い情報を見る場所なんです」

「自分の信じる政治家を持ち上げるサイトが良いサイト。批判するサイトはフェイクニュースになってしまう。ネットの構造的に自分の好きなものしか見られない。良いか悪いかよりも顧客第一。それに近いのかもしれませんね」

当面の目標は「月1億アクセス」だという。

「将来的には人を雇って、大手のまとめブログとも対抗できるようにしたいんですよ。いずれは自分で、現場に出られるようにもしたいですね」


BuzzFeed Newsは政治家の発言やメディアの報道、ネット情報などを検証する「ファクトチェック」を行っています。 チェックが必要と思われる情報があれば、BuzzFeed Japanのニュースチーム(japan-report@buzzfeed.com)までご連絡をお願いいたします。

Kota Hatachiに連絡する メールアドレス:Kota.Hatachi@buzzfeed.com.

バズフィード・ジャパン 創刊編集長

Daisuke Furutaに連絡する メールアドレス:daisuke.furuta@buzzfeed.com.

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