在日コリアンに対する憎悪感情をもとにした「ヘイトクライム」が相次いで起きていることについて、岸田文雄首相は10月19日の参議院予算委員会で、「不当な差別的言動や、そのような動機で行われる暴力や犯罪は、いかなる社会でも許されない」と述べた。
2021年から今年にかけ、京都府宇治市のウトロ地区などで在日コリアンを狙った放火事件などが連続して起きたほか、今月の北朝鮮による弾道ミサイル発射後には、朝鮮学校への嫌がらせや生徒への暴行事件も発生している。
立憲民主党・打越さく良議員への答弁。岸田首相は「連帯の表明」や被害者との面会についても「検討したい」と述べた。
在日コリアンへのヘイトクライムは、各地で相次いでいる。昨年7〜8月には犯行当時22歳の男が京都府宇治市のウトロ地区や、名古屋市の韓国学校などで連続放火事件を起こした(京都地裁で懲役4年の実刑判決が確定)。
さらに今年3月には大阪府茨木市のインターナショナルスクール「コリア国際学園」でも、犯行当時29歳の男が放火事件を起こしている。双方の事件とも、在日コリアンへの嫌悪感を根底に、その排除を煽ろうとした「ヘイトクライム」であることが明らかになっている。
また、10月4日の北朝鮮による弾道ミサイル発射と「Jアラート」発令後には、ネット上でのヘイト書き込みや、朝鮮学校への嫌がらせ電話や暴言、中学生への暴行も相次いで起きている。
打越議員はこうした経緯とともに、ウトロなど連続放火事件の京都地裁判決にある「在日韓国・朝鮮人という特定の出自を持つ人への偏見と嫌悪に基づく身勝手な犯行で、民主主義社会では到底、許されない」との内容に言及。こう問いただした。
「北朝鮮のミサイル問題には、断固として抗議いたします。しかし、朝鮮学校の子どもたちや、 在日コリアンの方々を攻撃するのは不合理であり、差別です。総理もそのようにお考えいただけますか」
岸田首相の答弁は…
これに対し、岸田首相は「おっしゃるように、特定の民族や国籍の人々を排斥する趣旨の不当な差別的言動、まして、そのような動機で行われる暴力や犯罪、これはいかなる社会においても許されないと考えております」と応じた。
さらに打越議員は、アメリカのバイデン大統領がアジア系住民へのヘイトクライムが起きた際に現場を訪れ、メッセージを発したことに言及。
「総理にも現場に行っていただいて、被害者の思いを聞き、被害者と共にあると表明していただけませんでしょうか」と求めた。
岸田首相は「差別的言動については許されないということを重ねて申し上げさせていただいた上で、政府としては、法と証拠に基づき、適切に対応してまいります。そして引き続き、全ての人が輝く、包摂的な社会をつくってまいりたいと思います」と答弁。
そのうえで「連帯の表明につきましては、適当な機会について考え対応したいと思っています」「関係者の話を聞く、あるいは意見を汲み上げさせていただくことは重要だと思います。どなたに会うのか、具体的な対応は総理大臣の立場から整理し、検討をいたします」とも述べた。
前日の18日には、朝鮮学校関係者や支援者らが法務省人権擁護局に具体的対応を求め、緊急要請をしたばかり。ヘイト問題の専門家らは差別を禁じるための法整備に加え、国・政府としてメッセージの発信「ガバメント・スピーチ」を述べることを求めている。