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「自分のファンばかりに囲まれて…」河野太郎氏のTwitterは本当に「暇つぶし」なのか?

フォロワー数約226万人。日本の現役閣僚としては最多、現役政治家としても2位を誇る河野氏のTwitterは、これまでも注目を集めてきた。新型コロナワクチンを担当することにもなったが、そのコミュニケーションは「トランプ氏的」であるとの指摘もあがる。その危険性とは。

自らの意見と合わないフォロワーへのブロックを連発し、さらにメディアを「フェイク」「デタラメ」と批判する河野太郎行政改革相(自民、衆院神奈川15区)。

新型コロナウイルス感染拡大の切り札であるワクチンを担当することにもなったが、そのコミュニケーションは「トランプ氏的」であると識者は指摘する。

分断を産む、大きな危険性を孕んでいる、とも。Twitterの一部では人気を博す、その手法の何が問題なのか。上下連載でお伝えする。


フォロワー数約226万人。日本の現役閣僚としては最多、現役政治家としても安倍晋三前首相に次ぎ2位を誇る河野氏のTwitterは、これまでも注目を集めてきた。

自らの日常に止まることなく、外務、防衛、行政改革と大臣を歴任するなかで、関連情報や国際会議の裏側などの発信も続けている。

「タローを探せ」といった写真クイズなどを交え、「ファン」との交流にも勤しんでいる一方、批判的なユーザーに対しブロックを連発することから「ブロック太郎」などと揶揄されることもある。

「私もそれで失敗することがあるのですが、Twitterは私的なコミュニケーションと公的な情報発信が混在しやすく、使い方が難しいメディアです。河野さんは『暇つぶし』と、私的なものであると強調していますが、公的な情報も多く発信している。どういう性格なものなのか、いまいちわかりません」

政治とメディアの関わりにくわしい法政大学の津田正太郎教授は、河野氏のTwitterの使い方について、そう指摘する。

河野氏は自らのTwitterについて、たびたび「暇つぶし」と言及してきた。たとえば昨年2月に沖縄タイムズ記者へのブロックが問題視されたとき、会見で「個人が暇つぶしでやっているものにとやかく言われることはない」と答えている。

「都合よく使い分けている」

しかし、津田教授はこうした言い分には「無理がある」と強調する。

「河野氏は防衛大臣に就任した際に自衛隊の活動施策について発信していきたいと述べている。つまり、公的な性格を持つということを全面的に否定しているわけではありません」

この発言は、2019年9月に防衛相に就任時のもの。実際、河野氏は自らのTwitterを防衛省についての発信、つまり公務に「使わない手はない」と述べているのだ。

多くの方にツイッターをフォローしてもらうと、その中で外交的な話を出して読んでもらえた、という部分がありましたので、できれば自衛隊の活動や安全保障政策について、あるいは、防衛省について情報発信を織り交ぜていきたいと思っています。私のツイッターは元々暇つぶしで始めたものですから、これだけフォローしてくれる方が増えましたので、それを使わない手はないなと思っております。

津田教授は「フォロワーも200万人おり、閣僚という立場であることからすれば、純粋に私的な暇つぶしと正当化するのは無理がある」と指摘する。

「批判が飛んだ際の防弾幕として、都合よく私的、公的を使い分けている疑念はぬぐいきれません。私的な情報発信をやるなというわけではありませんが、自分のアカウントには公的な性格があるんだということをハッキリ言ってしまったほうが良いのではないでしょうか」

「そもそもブロックについても、ふたつの問題点があります。河野さんの発信する公的な情報について、批判的な立場を持つ一部の人びとが見られないということは、情報公開の観点からすると大きな問題。知る権利を侵害していると言えます」

「また、自分にとって耳の痛い意見をブロックしていくのも、政治家としては感心しません。批判に対し耳を傾けないまま、自分のファンばかりに囲まれて政治をやっていくと、周りが見えなくなり、サレントマジョリティが望んでいることと自らの方向性とが乖離してしまう可能性があるのではないでしょうか」

繰り返されるメディア批判

河野氏のTwitterには、ブロック以外に、もう一つの特徴がある。メディアへの批判も繰り返している、という点だ。

たとえば、自らが新型コロナワクチンの担当相になった直後の1月20日には、NHKが報じていた接種スケジュールを「デタラメ」と一蹴した。

「うあー、NHK、勝手にワクチン接種のスケジュールを作らないでくれ。デタラメだぞ」

共同通信が「一般へのワクチン接種5月想定と政府関係者」と報じたことにも、「ワクチン担当になって昨日の今日で、まだ想定していない」と反論

多くの報道のソースの「政府関係者」ついても「全く根拠のないあてずっぽうになっている。信用しない方がいいよ」などとツイートし、注目を集めた。

NHKや共同通信などが報じた接種のスケジュールは、厚生労働省が自治体向けにつくっていた「イメージ」と同様のものだ。

これらの報道は、厚労省内で一定の内部的な了承を得た書類や幹部への取材をもとにしており、報道機関からすれば、「デタラメ」との指摘は承服しがたいだろう。

一方で河野氏の側からすると、担当相となったばかりの自分がまだ意思決定していないことをメディアが勝手に報じた、あるいは厚労省がリークしてメディアに報じさせた――と見えた可能性もある。

着任直後の担当相が厚労省という「部下」をSNSで公然と非難することは、今後の業務を考えれば好ましくない。であれば、社会一般に根強く存在するメディア批判の空気に乗るかたちで報道機関を牽制しつつ、「政治主導」をアピールする方が、ある意味では理にかなっていると考えることもできる。

なお、接種のスケジュールはその後、ワクチン確保の関係から「イメージ」よりも予定が後ろ倒しになることが明らかになっている。

また、報道機関が用いる「政府関係者」というソースは情報源の秘匿、取材条件などの観点から名前は伏せられているものの、一定の信頼性が担保されているために記事化されている、ということにも留意が必要だ。

河野氏は防衛省時代にも秋田県における「イージス・アショア」の配備停止をいち早く報じた読売新聞に対し、「フェイクニュース」と批判。続けて報じたNHKにもやはり同じ言葉を使った。

この際には「フェイクニュース」と題したブログも公開。「正式に発表されるものを、一日早く、今日、報道することは、報道機関の社内的には褒められることかもしれないが、社会的な付加価値はない」と記していた。

しかし、そのわずか1ヶ月後に、イージス・アショアの配備計画は撤回されることになった。これを自ら発表したのは河野氏だったが、結果から見れば、読売新聞などの報道は間違っていなかったことになる。

河野氏が「スルー」しているもの

とはいえ、政策決定の過程においては、いわゆる「族議員」をはじめとする多くの政治家や関係各官庁、自治体など多くのステークホルダーが報道機関を巻き込み、それぞれの狙う方向性に持ち込もうと「情報戦」を繰り広げている現実もある。

検討中の政策に対する社会の反応を見たり、議論の主導権を握ったりするために、官僚が意図的に報道機関にリークすることや、政治家が公の場やオフレコの場で刺激的な発言をすることは少なくない。「アドバルーンをあげる」「観測気球をあげる」とも呼ばれ、永田町と霞ヶ関の常套手段だ。

そして報道機関は「特ダネ」を求めてより多くのリークを受けるべく競争し、このゲームに参加するかたちとなっている。

読売新聞とNHKがイージス・アショアの配備停止を報じた段階では、河野氏は担当相として最終的な決定を下していなかったかもしれない。

しかし当時、その方向に向かおうとする政治家や担当官僚は存在し、読売などは彼らへの取材を元に報じた。そして最終的に、その流れに落ち着いたと考えるのが自然だろう。

河野氏はこうした水面下の「駆け引き」の部分をあえてスルーし、メディアだけにフォーカスするかたちで「フェイクニュース」批判を展開しているようにも見える。



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