中国・武漢で発生した新型コロナウイルスによる肺炎の感染が拡大するなか、「関西空港に武漢から来た観光客から咳と熱を検知し、病院へ搬送したものの検査前に逃げた」という情報がネット上で拡散した。
この情報は事実無根で、厚生労働省関西空港検疫所はBuzzFeed Newsの取材に「そのような事実はない」と否定している。
大阪府の吉村洋文知事も1月24日午後、こうした情報を広げていたまとめサイト「Share News Japan」の記事を取り上げてツイートし、「この情報はデマです」と指摘した。

ネット上に拡散しているのは、中国版Twitter「微博」(weibo)の書き込みとされるものだ。
「今日中国から関西空港へ入国した中国武漢人観光客から咳と熱を検知し、病院へ搬送したものの検査前に逃げた。理由はUSJと京都へ遊びに行きたいから」
こうした訳文とスクリーンショットは2万リツイートを超えるなど、拡散。
「新型肺炎感染者の可能性が高い」として関西方面に住む人に注意を呼びかけるような内容だが、まとめサイト「Share News Japan」も以下のような見出しでツイートを引用した。
《中国から関西空港へ入国した中国人観光客、肺炎症状出るも検査前に逃走との情報出回る…》
記事中では「デマであって欲しい」という”ネットの声”も引用しているが、「本当の情報であればだが道徳性を疑う」「バイオテロじゃないか」など、排外的な感情や差別意識を煽りかねない発言もまとめられている。
実際、記事には「日本侵略のために?」「完全にテロリストじゃねーの」などというリプライも寄せられている。
検疫所「冷静に対応を」
この情報はデマです。 〉中国から関西空港へ入国した中国人観光客、肺炎症状出るも検査前に逃走との情報出回る… https://t.co/N6OFzeErpX
前述の通り、そもそもこの情報は、事実無根だ。
関西空港検疫所の担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、「そのような事実は一切ございません。事実ではない情報に惑わされず、冷静に対応していただきたい」と回答している。
関西空港検疫所では新型肺炎の発生から1月24日正午までの間、中国人を含むすべての人で、「新型肺炎の疑い」があるとして病院を紹介した事例は一件もないという。
一方、吉村知事は「現時点で府内感染者は確認されていない」としたうえで、「現状の水際対策で完全に流入を防止することは困難」とも指摘。リスクマネジメントの観点から府に対策本部を設置し、対策を強化するとツイートした。
パニックが起きやすいからこそ

新型肺炎をめぐっては、感染者と死者が増えている。1月24日には、日本国内でも2人目の感染者が確認された。
原因となっている新型コロナウイルスを予防できるワクチンや、治療できる薬は現段階では存在しない。感染症には潜伏期間があるほか、検査を強制できるわけではないため、検疫でも完全には防ぐことはできないという現実もある。
一方、現時点で重症例の増加については報告されていないほか、多くの人がすでに回復しているという。日常で可能な対策は、通常の感染症対策と同じく、手洗いやアルコール消毒が有効な手段だ。厚労省も以下のように呼びかけている。
「過剰に心配することなく、マスクの着用や手洗いの徹底などの通常の感染症対策に努めていただくようお願いいたします」
パニックが広がりやすい状況だからこそ、情報の選定には注意が必要だ。
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