北朝鮮ミサイル発射、なぜ「Jアラート」は北海道から長野にまで出されたのか?

    対象地域は12道県と、広範囲に及んだ。

    8月29日午前5時58分ごろ、北朝鮮西岸からミサイルが発射され、その4分後に全国瞬時警報システム(Jアラート)を通じて「国民保護に関する情報」が出された。

    対象となった各自治体では「国民保護サイレン」が鳴り響き、携帯電話には緊急速報が配信された。

    ミサイルは午前6時6〜7分ごろに北海道の上空を通過し、午前6時12分ごろに襟裳岬の東方沖、約1180kmの太平洋上に落下。破壊措置の実施や被害はなかったという。

    北朝鮮のミサイルが日本の上空を通過したのは2016年2月以来、5回目。事前通告なしに通過させたのは異例だ。

    推定される飛行距離は約2700km。最高高度は550km、襟裳岬付近上空の宇宙空間だ。防衛省は中距離弾道ミサイルの可能性があると見ている。

    北朝鮮のミサイルに関連したJアラートは、沖縄県で2012年12月12日と2016年2月7日に出されたが、北海道と本州が対象になったのは今回が初めて。対象となったのは以下の12道県だ。

    北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県

    ミサイル発射後、安倍晋三首相は記者団に対し「発射直後から北朝鮮ミサイルの動きは完全に把握していた」と語っている

    それならば、なぜ北海道から800キロ近く離れている長野にまで、Jアラートが出されたのか。

    Jアラートを出す判断をしているのは、内閣官房だ。「事態室」の担当者は、BuzzFeed Newsの取材にこう語る。

    「不測の事態に備えるため、想定された飛行経路を飛ばなかったことを考慮するなど、様々なパターンを踏まえて、念のために対象を広めにしています」

    対象自治体の決定は自動的なものではなく、発射の情報を受けて人為的に決められているという。

    その決め方が合議なのか、担当者一人の意思決定なのかどうかなど、詳しい決め方ついては「オペレーションに関わるためお答えできない」と語った。

    ミサイルが発射されたとしても、必ずJアラートが出されるわけではない。ミサイルが「我が国の領土・領海に飛来する可能性があると判断した場合に出す」(内閣府の担当者)ことになっているからだ。

    たとえば、2017年3月6日にミサイルが発射されたときにはアラートが出なかった。「途中の段階で日本海に落ちるだろうと予測した」(同)ことがその理由だった。

    今回で3回目となった、北朝鮮ミサイル発射によるJアラート。これを受け、NHKや各メディアが速報を打ったほか、東北、上越、北陸の各新幹線や在来線が一時運転を見合わせた。北海道や青森、長野で休校措置を取った小中学校もある

    Jアラートが出された自治体の防災無線からは、自動的に「国民保護サイレン」が鳴り響いた。さらに、その地域にいる個人の携帯電話には、エリアメールや緊急速報がアラーム付きで配信された。

    緊急速報は、発射4分後の午前6時2分に、「頑丈な建物や地下への避難」を呼びかける内容が、そしてミサイル通過が判明した午前6時14分には、「不審なものを見かけても、決して近寄らないように」とする内容が配信されている。

    聞きなれないサイレンの音に、緊急速報。Twitter上には、その様子が「めっちゃ怖い」「起こされた」「初めて聞いた」などという言葉とともに、多く投稿されている

    菅義偉官房長官は記者会見で「国民の方々には冷静に、平常通りの生活を送っていただきたい」と呼びかけた


    BuzzFeed Newsでは、政府が呼びかけている避難情報についてまとめた記事「もしもの時にすべき3つの行動」を掲載しています。