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「誰かが死ぬまで待っているんですか?」川崎で起きたヘイトクライム、法務省に問うた理由

「ふれあい館」に送りつけられた脅迫文書は、「日本人ヘイトを許さない会」を名乗り、館長宛てだった。同日付で神奈川県警川崎臨港署に脅迫罪で刑事告訴し、受理された。この施設には2020年にも、在日コリアンの「虐殺を宣言」する年賀状が送りつけられている。

川崎市にある多文化交流施設「ふれあい館」に在日コリアンの殺害をほのめかす脅迫文書が届いていた問題。

弁護士などでつくる「外国人人権法連絡会」は4月23日、法務省人権擁護局に対し、緊急対策を求める声明を提出した。

政府には差別的動機に起因したヘイトクライムに関する法整備や、刑事政策を含めた対策を引き続き求めていくという。

「川崎市ふれあい館」に、封筒が送付されていたのは3月18日のこと。神奈川県警川崎臨港署に脅迫罪で刑事告訴し、受理された。

この施設には2020年にも、在日コリアンの「虐殺」を宣言する年賀状が送りつけられ、送り主だった川崎市の元職員の男(70)が威力業務妨害の罪で懲役1年の実刑判決を受け、確定している。

今回の文書は同館の館長で在日コリアン3世の崔江以子さんに宛てたもので、消印は3月15日付、東京都足立区内。実在しないとみられる「日本人ヘイトを許さない会」を名乗っていた。

文書には「死ね」という単語が14回にわたり記され、殺害をほのめかす「殺ろ」という言葉や「祖国に帰れ」「日本から出ていけ」などというヘイトスピーチ、在日コリアンに対する複数の差別・侮蔑表現が多く羅列。

さらに開封済みの菓子の空き袋が同封されており、手紙には「コロナ入り残りカス」と記されていた。

在日コリアンというだけで…

これを受け、外国人人権法連絡会は3月31日、「止まらぬヘイトクライムを非難、政府に緊急対策を求める声明」を出し、以下のように訴え、政府に緊急対策を要望。

「このようなヘイトクライムを放置すれば、在日コリアンというだけで攻撃されても仕方がないとの雰囲気が社会に蔓延し、さらなる差別、暴力、ついにはジェノサイドや戦争につながることは歴史が示しており、決して許してはならない」

さらに声明では、人種差別撤廃条約に加入している日本政府に対し、国連人種差別撤廃委員会が2001年以降4回にわたりヘイトクライム対策を勧告していることにも言及。

ふれあい館に脅迫年賀状が届いたあとも、政府が特段の対策をとっていなかったことを批判し、「ヘイトクライムを特別な対策が必要な問題として認め、実際に止めるために対策をとることを宣言すること」を求めた。

防刃チョッキを身につけ…

この声明には130を超える団体が賛同。人権法連絡会は4月23日に直接、法務省に提出した。法務省側は人権擁護局の総務課長が対応。刑事局の公安課企画官も同席した。

もともとは人権擁護局長が受け取る予定だったが、国会日程の関係で直前に変更となった。被害を受けた崔さんも参加し、30分ほどの会合があった。

同席した師岡康子弁護士は会見で「これまでマイノリティに対する攻撃を社会は許してきたし、政府も対応をしないままでいた。誰かが死ぬまで待っているんですか、と言いたい。今回こそ、法整備や刑事政策を含めた具体的な対策をとってほしいと思っています」と話した。

一方、崔さんは「職場にも、家にも、私がいるから被害が生じるのではないかという恐怖があり、身も心も置き場がない。正直ギリギリの状態です」と語る。普段は、防刃チョッキを身につけて生活をすることを強いられているのが現実だ。

「法務省には自分の力では解決しようのないことがあると伝え、いまある被害に対策をしてもらうよう、お願いしました。私や同じ属性の人に何かがあったときに『残念です』というふうに言われるのでは遅い。未然に防ぐようなメッセージが必要だと思っています」

師岡弁護士によると、法務省側の担当者からは「このようなことは許されず、社会の意識を変えていかなきゃいけない」(擁護局)「具体的に何ができるか考えていきたい」(刑事局)などという話があったという。


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