アメフト問題で注目を集めている日本大学・危機管理学部の「名誉会長が安倍晋三首相」という情報がネット上で出回っている。結論から言えば、これはデマだ。
出回っているのは一般社団法人「日本安全保障・危機管理学会（JSSC）」の役員表だ。そもそも日本大学危機管理学部とは、別組織だ。
同会は2005年に設立。以下のような目的を持った組織だという。
日本国民全体を対象とし、安全保障および危機管理に関する 理論とその応用・実践についての研究を深めつつ、有為な人材を育成し、 大学、自治体および企業等へ送り込むことに寄与する
講演会やセミナーを開いており、役員には、名誉会長の安倍首相を筆頭に、与党幹部や元警視総監や元自衛隊幹部などが名前を連ねていることがわかる。
また、特別顧問には出雲大社の千家尊祐宮司が、名誉顧問には渡辺喜美参議院議員がついているほか、顧問には中谷元・元防衛大臣、佐藤正久・外務副大臣、自民党・和田政宗参議らの名前も並んでいる。
その一方で、日本大学危機管理学部との関係性はまったく、明記されていない。
この誤情報の拡散に一役買っているのが、「情報速報ドットコム」というサイトだ。
5月28日夜に配信された「日大の危機管理学部、名誉会長に安倍晋三首相！現職議員も多数！設置は日大と加計系列のみ」という記事では以下のように記している。
日本大学のアメフト問題で危機管理学部の存在に注目が集まりましたが、この危機管理学部のトップには安倍晋三首相の名前があることが分かりました。
公式ホームページを見てみると、役員リストのトップに名誉会長として安倍晋三首相の名前があり、他にも和田政宗議員や元みんなの党代表・渡辺喜美議員、元防衛大臣・中谷元議員の名前などが並んでいるのです。
特別顧問には出雲大社の千家尊祐氏の名前も見られ、普通の大学の危機管理学部とは別格の存在であると言えるでしょう。
上記にある通り、もちろんこれはすべて日本大学の話ではなく、「日本安全保障危機管理学会」の話だ。
記事はTwitterやFacebookで拡散。ブログなどにも情報が転載されている。
間違いに気が付いたのか、遅くとも5月29日昼には記事タイトルや内容が修正された。しかし、TwitterやFacebookは当初のまま（6月2日正午現在）にされている。
タイトルはまず、「日大の危機管理学部、上位組織の名誉会長に安倍晋三首相！現職議員も多数！設置は日大と加計系列のみ」と書き換えられ、いまでは「日本安全保障危機管理学会、名誉会長に安倍晋三首相！現職議員も多数！設置は日大と加計系列のみ」に変わっている。
本文は以下のように書き換えられているが、ただ、やはりこれも間違いだ。
この危機管理学部が所属している上位組織の一般社団法人「日本安全保障危機管理学会（JSSC）」には安倍晋三首相の名前があることが分かりました
同会には、日本大学の危機管理学部は所属していないという。
同会の事務局担当者は、BuzzFeed Newsの取材に「危機管理という名前がついているが、日本大学危機管理学部はまったく関係がない。上位組織でもなく、人的交流もない」と話している。
一方、日本大学危機管理学部の担当者も取材に対し、同会との関係性を否定。「教員個人で活動しているかもしれないが、大学としては把握していない」としている。
計測ツール「Buzzsumo」 によると、記事はTwitterとFacebookで4千以上シェアされている。
「情報速報ドットコム」の「免責事項」には、こんなことが記されている。
掲載内容に関しては、万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。当サイトを利用したことによる間接、直接の損害、その他如何なる損害に関して、一切当サイトは責任を負いません。当サイトをご利用される場合は、以上のことをご理解、ご承諾されたものとさせて頂きます
BuzzFeed Newsは「情報速報ドットコム」に経緯や、SNSをそのままにしている理由、訂正文がない理由を6月1日午後3時に問い合わせたが、6月2日正午時点で返信はない。回答があり次第、追記する。
UPDATE
「情報速報ドットコム」の管理人は6月2日午後、当該記事を削除したことを明らかにした。その後、午後5時26分に、「謝罪：記事の修正と削除について」という記事を配信している。
管理人は取材に対し、以下のようにコメントした。
「誤った情報が広がってしまった点は大変申し訳なく、これから謝罪記事を投稿した上で誤報の拡散を出来るだけ防ぎたいと考えております。今後は記事掲載前の情報確認を強化し、出来る限り再発防止を徹底する方針です」