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Updated on 2020年2月18日. Posted on 2020年2月14日

「全体主義的な危うさ」Twitterと青年会議所に批判殺到、専門家は「メディアリテラシー」をどう見る?

日本青年会議所が開設し、Twitter Japanがフォローを呼びかけたアカウント「情報を見極めよう!」。その運用面を疑問視する声が相次ぎ、批判が殺到したが、この問題をめぐっては、そもそも「メディアリテラシー」について考えるきっかけにもなった。いったい、私たちはそうした力をどう高め、「自衛」すればよいのだろうか。

Twitter Japanが2月10日、情報・メディアリテラシーについて、若手経営者らでつくる組織「日本青年会議所(JC)」とパートナーシップ協定を結んだと発表したことが、波紋を呼んでいる。

JCが開設し、Twitter Japanがフォローを呼びかけたアカウント「情報を見極めよう!」は中立性に疑いのある投稿のリツイートなどが相次いでいたため、批判が殺到したのだ。

同社は、JCについて「政治団体ではない」としているが、出身政治家も多く、保守色のある運動も実施している。そうした団体が「メディアリテラシー」を説くことの危うさはどこにあるのか。専門家に取材した。

まず、経緯を振り返る

Kota Hatachi / BuzzFeed / Via Twitter: @medialiteracy20

パートナーシップ協定は2月10日、Twitter Japanの公式アカウント「Twitter 政治」で発表された。

「多量の情報群を正確に読み解く力」「情報の真偽を見抜く力」「情報をスムーズに検索し、正しく活用する力」「適切な情報の発信を行う力」の向上を狙いとしているという。

そうして紹介されのが、JCによるメディアリテラシー確立委員会の公式アカウント「情報を見極めよう!」だった。アカウント運用の趣旨は「メディアリテラシーの理解や発信者側のモラル向上を目的につぶやき啓蒙活動」にあるとされている。

しかし、このアカウントは、協定が発表された時点で、中立性に疑いのあるツイートやリツイートを重ねていた。

例えば、ジャーナリストの津田大介さんを名指しして、「発狂」とツイートして批判。新型コロナウイルスをめぐって、一部のツイートが、情報に誤りがあったり、過度に不安を煽ったりしたことで問題視された高須克弥医師(JC出身)の投稿を連続でRTや「いいね」していた(RTはその後、削除された)。

JCは2018年、「憲法改正議論を起こす」目的で企画したアカウント「宇予くん」が中国、韓国や報道機関への誹謗中傷などを繰り返し、さらに内部資料で「対左翼を意識し、炎上による拡散も狙う」などと記していたため、謝罪に追い込まれたことがある。

こうした経緯から、Twitter上では、アカウントの運用やパートナーシップ協定そのものを批判、疑問視する声が一気に噴出した。

BuzzFeed Newsの取材に応じたTwitter Japanによると、連携はJCから持ちかけられた。「現行の執行部体制が『宇予くん』については過ちであったと認識しており、だからこそ真摯に向き合い信頼回復に努めたいと考えている」との説明を受けたという。

「過去を反省し前向きに努力していこうとする日本青年会議所の姿勢を支援したいと考えました」として、連携を決めたが、今回のリツイートのようなアカウントの運用は想定していなかった、ともしている。

中立は難しい、だからこそ

Twitterより

「メディアリテラシーは、解釈次第で危うさを孕んでいる言葉。『これが正しい情報です』と、一元的な考え方を押し付ける概念に転嫁しかねません。情報の解釈に枠を当てはめていくということは、全体主義的な考え方でもあります」

そうBuzzFeed Newsの取材に語るのは、法政大学の津田正太郎教授(メディア社会学)だ。

「つまり、かなり慎重に考えないといけないものなのです。メディアプラットフォームとしてある種の責任を果たすため、Twitter Japanがデマや中傷を抑制したいという発想自体は良いことですが、なぜJCと組んだのか、その理由が正直わかりません」

「『モラルを高める』に関しても同様です。他人の個人情報の暴露をやめよう、中傷をやめようという指摘はあってしかるべきですが、行きすぎれば『思想統制』になりかねない。その資格がJCにあるのか、という話になりかねません」

「プラットフォームであるということはいろいろな立場の人、主義主張の人が関わっているわけですから、一定の傾向があるという団体と結びつくリスクを認識しておいたほうがよかったのではないでしょうか」

「一定の傾向がある」とはどういうことか。津田教授が指摘するのは、JCの持つ「政治性」だ。

「JCのアカウント名は『情報を見極めよう!』でした。情報の何が正しくて、何が間違っているのかという判断には、政治的な主義主張が分かち難く結びついています。政治思想と離されたところで、情報の真偽を確かめていくのは、ハードルが高いことです」

「中立はとても難しい。ですから、決まった正解にたどり着くのではなく、明快な間違いを避けるという消極的な運用、すごく抑制的にデマだけをファクトチェックするような態度が求められていく。しかし、消去前のリツイートを見る限り、そんな覚悟はどうもJCにはなさそうだ、と感じました」

「国民が正しい情報を得るための…」

Kota Hatachi / BuzzFeed / Via jaycee.or.jp

そもそもJCは政治からは独立し、特定政党や候補者の支援は、組織としては行わないとしている。

BuzzFeed Newsの取材にも「当会は中立公正の立場を主とし、特定の個人又は法人、その他の団体の利益を目的として活動をしておりません。また、特定の政党のために活動をするということもございません」と回答した。

Twitter Japanもパートナーシップについて、「JCが所属する団体向けに展開するソーシャルメディアのリテラシー教育を支援するというもので、政治的な活動を後押しするものではありません。またJCは政治団体ではありません」と答えている。

しかし、JCの会員には企業経営者ら地域の有力者が多いことから、麻生太郎財務相をはじめ多くの保守系政治家を輩出してきた。国政ではその大半を自民党、地方議会でも自民党か保守系無所属が占める。

こうしたJC出身者の議員連盟との交流会も各地で開かれている。各地の選挙では個人の資格で保守系候補者の運動員として活動する会員も少なくない。

「宇予くん」の企画設定にもある通り、自民党と足並みを揃えたかのような、「憲法改正」に向けた情報発信も行っている。また、2020年代運動指針は「国民が国を愛する力を養うために、建国からの歴史認識を深める事業を行う」としており、保守色があることは否定できない。

運動指針の「国家×人材」という項目には、「国柄を継承し時代を創る日本人の育成」という言葉とともに、こうした項目が並んでいる。

  1. 日本の課題を解決するために、有権者の質を高める教育を行う。
  2. 総活躍社会を創るために、多様性を受け⼊れることができる社会にむけた運動を行う。
  3. 国民が正しい情報を得るための情報リテラシー力を醸成する運動を行う。
  4. 国民が国を愛する力を養うために、建国からの歴史認識を深める事業を行う。
  5. 世界に誇る日本の精神性を継承していくために、伝統・文化の見識を深める事業を行う。
  6. 力強い共同体を創りあげるために、次世代が道徳を学べる事業を行う。


3番目にあるのが「情報リテラシー力」だが、そのほかの項目を見れば、保守的な政治性を孕んでいることは一目瞭然だ。津田教授は、こう指摘する。

「これを見る限り、JCが考えていることは抑制的なメディアリテラシーみたいなものではなくて、あからさまに情報の解釈のところまで踏み込もうとしているように感じます」

「極端な話をすると『国を愛するために邪魔になるような情報』をはじき飛ばす力として、思想性をリテラシーと結びつけているようにも読めてしまう。このような認識で『正しい』と『間違い』を選り分けるとなると、それはただJCの考えを補強するだけになりかねません」

「リテラシーがある」と思わないで

Twitterより

今回のパートナーシップについて、Twitter Japanは「今後の内容については、現在協議中であります」としている。津田教授はいう。

「いまのままのパートナーシップだと明らかにバランスが悪いので、いろいろな団体とも協定を結べばよいのかもしれません。そうしたなかで共通の『ここはよくないね』という最低ラインの合意を取れば運用が改善する可能性もあるでしょう」

また、この問題をめぐっては、そもそも「メディアリテラシー」について考えるきっかけにもなった。いったい、私たちはそうした力をどう高め、「自衛」すればよいのだろうか。

「すごく怖いのは、自分に『リテラシーがある』と思い込んでしまうと、世界の真理を知っているという独善的な考えになりかねないということ。そもそも、個々人のレベルで世界のあらゆる事象についてリテラシーを発揮するのは無理だと思います。手間もコストもかけられない、知識もあるわけではないですから」

そのうえで津田教授は、「自分の外側ではなく、内側の心理的傾向みたいなもの、自分自身の心理的な偏りを知っておくことが大切なのではないでしょうか」と語った。

「人は、自分が信じたがっていることを信じやすい。メディアから得られた情報に自分は影響をされないが、他人はされていると思ってしまう(*第三者効果)し、メディアが自分と反対方向にバイアスがあると判断しがち(*敵対的メディア認知)です。あるリスクを非常に過大に評価してしまって、リスク認知がおざなりになることもある」

「とはいえ、すべての情報を疑ってしまうとキリがありません。最後はどこかで覚悟すること、自分がどこかで間違っている可能性を担保しておく必要があると思います。そういうことを学んでおくのは、ある意味の『リテラシー』として有効な面があると思います」


Contact Kota Hatachi at kota.hatachi@buzzfeed.com.

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