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「韓国に日本が捨てた税金一覧」は誤り。借金を「返していない」「踏み倒し」とも言われるが…

あくまで「円借款」として貸した金額をまとめたものであり、韓国側の返済はすでに終了している。韓国への支援をめぐっては、「円借款は返済されていない」などという誤った言説も拡散。その総額を「60兆〜70兆円」とする情報も多くあるが、誤りだ。

韓国に対して日本がこれまで払ってきた「税金一覧」をまとめたとされる画像が、ネット上に拡散している。

1960年代から80年代にかけて日本が韓国に「支払った」金額の一覧として広がっている画像だが、これは誤りだ。

あくまで「円借款」として貸した金額をまとめたものであり、韓国側の返済は全額分がすでに完了している。BuzzFeed Newsは、ファクトチェックを実施した。

拡散しているのは「これ見たことない人おります? いくら払ったんやこれ」などとして、Twitter上にアップされた3枚の画像だ。

「永久保存版!韓国というドブに日本が捨てた税金一覧」とされており、1965年以降日本が韓国に対して「支払ってきた」とされるものがまとめられている。

5000件以上「いいね」されるなど広がりを見せている。なお、この画像は2018年10月ごろから、ネット上に大量に拡散しているものだ。

しかしこれは先述の通り、誤ったデータだ。そもそもこの画像は、韓国に対して日本が実施した「有償資金協力」(円借款)の情報をまとめたものとみられる。

BuzzFeed Newsが国際協力機構(JICA)の公開している情報と、この画像に載っている案件名や日程、金額をBuzzFeed Newsが照合するとほぼ一致したことからも、それは明らかだ。

前提として、そもそもこの「円借款」とは、利子付きで貸していたお金のことだ。これらを含む韓国側の円借款返済は、2015年に完了している。すでに精算の終わった貸し借りを「(日本が)支払った」とするのは、誤りだ。

拡散している画像には不備も見つかった。2枚目の途中(1970-02-04から1981-02-27まで)には1枚目と同じデータが記載されており、件数が水増しされていた。「教育施設拡充事業」が59億2000万円のところを、5920億円と表記しているものもあった。

さらに、画像では「現在の価値にすると53兆円規模」などと記しているが、JICAが公表している1966〜90年のデータを合計しても約5962億円だ。物価指数の上昇を考慮したとしても100倍になっているとはいえず、この点も誤りであることがわかる。

「返していない」という誤情報も

国際的な支援には返済の必要がある「有償資金協力」(円借款)と、その必要のない「無償資金協力」がある。今回の画像では、それを混同していたとみられる。

日本は韓国に対して、返済の必要がある支援と、そうではない支援の両方を実施してきた。これが始まったのは、1965年の日韓国交正常化時からだ。

この際に締結された日韓請求権・経済協力協定に基づき、日本政府は有償2億ドル(日本円で約677億円)、無償3億ドルの経済協力を10年間にわたって行ってきた。なお、この際は民間借款による3億ドルの支援も約束されている。

その後も有償資金協力は続けられていたほか、返済の必要がないものとしては、「無償3億ドル」以外に約47億円の無償資金協力、約244億円の技術協力も実施してきた。韓国の経済発展に伴い、資金協力は1990年度、技術協力は2001年度で終了している。

外務省がBuzzFeed Newsの取材に答えたところによると、返済が必要な「有償資金協力」(円借款)の総額は約6455億円(有償2億ドルを含む)。2015年10月20日に全額の返済が完了しているという。

韓国への支援をめぐっては、「円借款は返済されていない」などという誤った言説がこれまでもたびたび拡散してきた。

その総額を「60兆〜70兆円」とする情報もあり、現在も検索で多くヒットする。前述の通り、これらも同様に誤りであることから、注意が必要だ。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知しました。

また、これまでBuzzFeed Japanが実施したファクトチェックや、関連記事はこちらからご覧ください。

  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
  • ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
  • ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
  • 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
  • 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
  • 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
  • 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
  • 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。