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Updated on 2020年6月21日. Posted on 2020年6月21日

「ウチみたいな小さい会社は…」父親は、なぜ上司にそう言われたのか。

政府は5月末、男性の育児休業の取得率を5年間で30%に引き上げることを目指すと少子化社会対策大綱に明記したが、現場はどのような実態なのか。

日本の男性の育休取得率は、2018年度で6.16%と依然として低い。

政府は5月末、男性の育児休業の取得率を5年間で30%に引き上げることを目指すと少子化社会対策大綱に明記したが、現場の実態はどうなっているのか。

中小企業ゆえ、金銭面、さらには人員不足から……。育児休業を取得できなかった人たちの声を聞いた。

慢性的な教員不足… 教育現場の現実

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「中学校三年生の担任中、12月に二人目の子どもが産まれました。半年ほど前からダメ元で管理職には相談しましたが、別のやり方を考えようなどと先伸ばしされ、特になんの提案もなく子どもが産まれました」

公立中学校で教員をしているという男性(30代)は、BuzzFeed Newsの調査にそう書き記した。取材に対し、教師の育休取得が難しいと、その実態を吐露した。

2歳の長男がいるという男性は、第一子の出産を機に退職し育児をしている妻の負担を少しでも減らそうと、1ヶ月程度の育児休業の取得を考えていた。

しかし、冒頭の通りの現場の状況から、それは叶わなかった。育児や出産に関する最大7日間の休暇を利用し、半休などを活用したという。

同僚の理解もあったが、罪悪感は常に付き纏った。さらに自らの仕事も回らない。「当然半日の勤務ですべてが終わるはずもないので、毎日始発で出勤し、可能な限り長男が寝ている朝の間に時間外で勤務する生活を続けました」と語る。

なぜ、こうしたことが起きるのか。男性は、慢性的な教員不足が大きい理由であると指摘する。

「男性教員が育休を取得するのは非常に困難であるというのが現状だと思います。その大きな原因は仕事の量と内容、人手不足でしょう。どの職場もそうだと思いますが、本当にぎりぎりの人数で学校を動かしている以上、一人欠けたことによる影響は甚大です。また、現状臨時採用等で働きたいと考えている教員免許取得者は多くなく、空いた穴を埋めることも難しいのではないでしょうか」

また、管理職の無理解も大きいとも感じている。だからこそ「育児の大変さが共有されるならば、子育てする親とその子どもに優しい社会になるのではないでしょうか」ともいう。

「これは願望ですが、誰かが育休を取得することで必死になって穴埋めをするような社会ではなく、それぞれがゆとりをもって自分の仕事と向き合えるようになるといいなぁと思います」

「家賃相当額」の減収は…

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「休めることは大切だが収入も減ってしまうので、今後の生活が苦しくなる可能性がある」

そのような現状をBuzzFeed Newsの調査に吐露したのは、介護や福祉事業などの会社で訪問介護やリハビリに当たる男性(30代)だ。

妻は第一子の育休を継続している最中。自らは、制度上の育児休業ではなく、会社の特別休暇や有給休暇を組み合わせて、2週間ほどの休みを取った。

会社が50人ほどと小規模で、担当している仕事も2人で回しているものだったため、数ヶ月前から綿密に調整をし、担当している客側にも説明をしたという。会社側は「モデルケース」と歓迎している。

とはいえ、育休そのものの取得は見送った。

現在、育児休業を取得した場合、半年間は給与の67%(それ以降は50%)が雇用保険の「育児休業給付金」から支給される。これは非課税で、さらに社会保険の支払いも免除されるため、実際の手取りは8割ほどになる。とはいえ、子育て世帯の給料2割減の影響は少なくない。

男性も、金銭的な補填がより充実していれば、育休を取得していたとの気持ちもあった。「お金が原因で子供の可能性を狭くしてしまうことはしたくない」。取材にそう語る。

「私まで取得すると子供の学費を準備する際などに、『あの時に育休を取らずに働いていれば良かった』とならないかが心配でした。妻が復帰後、このままフルタイム正社員で働くことができるのかも分からない」

「我が家の場合は1年間でシミュレーションした時に約100万の手取り減収で、ひと月あたり9万円ほどとなり、家賃相当額でした。この差が50万円ほどでしたら育休取得に踏み切ったかもしれません」

そのうえで男性は、現状の育児休業の仕組みについて、このように語った。

「育休制度は従業員にとっては良い制度ですが、企業側からすると育てた戦力が一定期間いなくなる制度です。そのため、『育児休業を取りやすい』『積極的に取得を勧めている』というような企業は大手企業ばかりになると思います。人手不足の中小企業の場合は会社の存続にも関わってくるような問題にまで発展するかもしれません」

中小企業は「倒産する」

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「小規模の会社(社長1人、社員2名)という体制で、とても育休を取りたいと言い出せるような状況ではなかった」

住宅の企画販売などをしている会社に勤める建築士の男性(30代)は、そのような切実な現状を、調査に書き記した。

妻は専業主婦。1人目のときには育休取得を特に考えることはなかったが、実際に育児をはじめてみて、その大変さを痛感した。

2人目が生まれた時、社長に中小企業向け育休の補助金制度の話題をそれとなく振ってみると、このような言葉が返ってきたという。「その間仕事が止まっちゃうな、ウチみたいな小さい会社は無理だ」。男性はいう。

「もちろん、無理に取ることは(権利ですから)可能だったのかも知れません。その場合、僕のような極めて小規模な会社の場合、代替人員を手配することになります」

「その人を雇うと、逆に僕の居場所はなくなってしまう。そういう不安もありました。今後のキャリアを考えると、この会社に居続けるためには育休を取得しない方が良いという判断をしました」

男性は制度としての育休、特に長期の取得は中小企業などでは「難しい」とも感じているという。

「例えば有休などがあるのは当然であるように、少しずつ周知されているように思いますが、実際にそれを使えるかどうかは、社内の人員体制による、そんな風に思いました」

育休をめぐっては、2019年には自民党有志が育休義務化に関する議員連盟を設立。議論が活発化したが、一方で「強制」ではなく現行制度の改善を求める声も少なくはなかった。

男性もこうした「義務化」がひとつの解決策だと賛意を示しつつ「中小企業は倒産する」かもしれないとして、フレキシブルな育休取得などが現実的だと考えている。

「妊娠出産は女性にしかできません。ですが母乳を出す以外の家事育児は男性でも全てできます。今まで家事育児負担が女性に偏っていたことが、男性が育休を取得することで改善されるのではないかという期待があります」

「僕自身が育つ中で、優秀な女性が周囲にたくさんいました。けれど妊娠出産で離脱したり、そうではなくても、その事を考えて自らの限界を決めてしまっているように思えたことが何度もあります。それって社会にとってとてもマイナスなのでは?。その人のポテンシャルを最大に引き出す社会であってほしい、そのためには家事育児は夫婦で、あるいは社会で、うまく分担していきたい」


BuzzFeed Newsでは、育休取得に関するアンケート調査結果をまとめた記事【「まだ辞めてなかったのか」と上司に言われた。育休を取った父親たちの現実】も公開しています。


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