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九州でマグロの自主禁漁が始まっている いつまでトロを食べられるのか

「子、孫の代まで漁が続けられるように」

長崎県・壱岐市の漁師たちが、全国で初めて、クロマグロの禁漁を始めている。

それも、減り続けるマグロを守るため。

生活の糧を失う覚悟で下した苦渋の決断。「このままだと先が見えない」と、地元の漁師はつぶやく。

いったい、何が起きているのか。


自主禁漁をしているのは、「壱岐市マグロ資源を考える会」。

「マグロが釣れないんです。ちっちゃいのも、おらなくなったんですよ。親もおらんごつなるし。子も生まれよらん」

そうBuzzFeed Newsの取材に答えるのは、会長の中村稔さん(48)。

壱岐市の勝本町漁協におけるマグロ漁獲量は激減している。2005年度に358トンだったのが、2012年度には145トンに、2014年度はたったの23トンまで減った。売り上げで見れば、9億6千万円減となる。

中学を卒業し、漁師になって30年あまり。中村さんは、マグロの減少をその肌で感じてきたという。

「昔は一晩に200本釣ったりしていたんですよ、手釣りで。でもいまは、以前に比べると、10分の1も上がらんやろ。とてもじゃないけど釣れない」

国に窮状を訴えようと会を結成をしたのは3年前。しかし遅々として進まぬ対応を待っているのでは何も変わらないと、自分たちで行動を起こすことになった。

「全体量ば増やすためには、親に卵ば生ますのが一番いいんじゃないか」と仲間たちに呼びかけ、去年から成長している親魚の禁漁を始めた。

産卵期である6〜7月末までの2ヶ月間が対象だ。地域の各漁協も応じており、壱岐・対馬で漁を営む約1千人の規模になる。


「高級寿司の定番」は世界的に減り続けている。

クロマグロの減少は、壱岐に限ったことではない。

1995年に約8万7千トンだった親魚の全体量は、2012年には約2万6千トンに激減。一方の漁獲量も95年の約3万トンから半減している。

2014年には、国際自然保護連合(IUCN)から絶滅危惧種に指定されたほど。一昨年に国際会議が開かれ、まだ親にはならない30キロ未満の未成魚の回復目標が決まった。これに伴い、日本でも未成魚の漁獲量の上限が設けられた。

日本は全世界のクロマグロの約8割を消費している。

減少の主要因は、紛れもなく、日本における大量消費だ。

中国などの途上国での需要が取りざたされることもあるが、クロマグロの約8割を消費しているのは日本。IUCNもその主な取引先は「クロマグロが高く評価されている日本の刺身市場」と指摘し、乱獲に影響を及ぼしているとした。

「国としても危機感は持っています」。水産庁漁業調整課の担当者はBuzzFeed Newsの取材にそう語る。

これまで国際的な合意に基づき、未成魚の漁獲上限だけを求めていた日本でも、今年7月から規制を強化することが決まった。

「しっかりとこの状況に対応していくために、国と都道府県で数量管理を試験的にやることに決まりました」

都道府県と連携し、クロマグロの水揚げ量を管理する。漁獲量が枠組みを超えた場合は、休漁を要請することもあるという。


国際的な合意は未成魚の乱獲こそに減少の理由があるとし、国の規制も大枠はそれに基づいている。

しかし、「産卵期の禁漁」までに踏み出さなければ「早期回復はしない」と、中村さんは思っている。

「科学的な根拠はないかもしれないけれど、漁師の実感ですね」

海の幸が生活の糧である漁師にとって、禁漁は生半可なものではない。稼ぎのために「ここ20年くらいしてなかったイカ釣りにもいかないといけない」という。

そんな中村さんが憂うのは、島の未来だ。

「この壱岐っちゅう自分らの住んでる島は、漁業の人がほとんど。そこをやっぱ、大事にしていかんと、島自体が終わってしまう。マグロを増やすっていうのは、漁師を活気づけて、島を活気づけたいということにつながってくるんです」

禁漁に、自らの希望を託しているとも言えるのだろう。

「去年禁漁したじゃないですか。そいで秋には少しはまた泳いでくるようになったんですよね。幾分か釣れたんですよ、悪いなりにも。今年も増えてくればいいんですけれどね。子や孫の代のためにもね」

食卓で、寿司屋で、飲み屋で……。切り身になったそれを食しているだけでは忘れがちな、「マグロは無限ではない」という当たり前の事実。

「少しでも現状を知ってもらいたい」

自分たちの行動のインパクトが、国やほかの漁業者にも届くことを願いながら、中村さんたちは訴え続ける。

Kota Hatachiに連絡する メールアドレス:Kota.Hatachi@buzzfeed.com.

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