保守速報、高裁でも敗訴。在日女性への差別を認定した判決内容とは

    判決は、まとめ行為が「2ちゃんねると独立した別個の表現行為」とした。

    まとめサイト「保守速報」をめぐり、その差別的な内容によって名誉を毀損されたとして在日朝鮮人の女性が同サイトを訴えていた裁判で、大阪高裁(江口とし子裁判長)は6月28日、損害賠償200万円を命じる地裁判決を支持し、双方の控訴を棄却する判決を出した。

    高裁の判決では、ネット上の書き込みを「まとめる」行為は独立した表現であると指摘。それによる不法行為が成り立つという判断を下した。

    原告弁護団は「その悪質性について、非常に厳しく断罪をした」と評価している。

    「保守速報」は「政治、東亜ニュースを中心にまとめ」(公式Twitterより)ているサイトで、Twitterフォローが6万人近くにあるなど拡散力が高い。中国や韓国に関する差別的内容や誤った情報などを配信し、たびたび問題視されてきた。

    同サイトをめぐっては、その収入源でもある広告に関して、記事内容を問題視したユーザーの通報を受けて企業側が掲載を撤退する動きが相次ぎ、仲介会社もそれに続いていることが、BuzzFeed Newsの取材でわかっている。

    裁判は、フリーライターの李信恵さん(46)が、自身に関する同サイトの記事が「名誉毀損、侮辱、いじめ、脅迫、業務妨害」に当たるとして、2200万円の損害賠償を求めて起こしたものだ。

    大阪地裁は2017年11月、記事内容の差別性を認めて200万円の支払いを命じる判決を出した。双方が控訴していた。

    「2ちゃんねるとは情報の質、性格は変わっている」

    大阪高裁は判決で、「保守速報」の記事に名指しをされた原告の李信恵さんの訴えを認めた地裁判決を支持し、管理人男性の控訴を棄却した。

    そのうえで、名誉毀損や侮辱、業務妨害や脅迫などの不法行為については地裁判決よりも踏み込み、「人種差別および女性差別に当たる内容も含んでいるから、悪質性が高い」などとも指摘した。

    保守速報側は裁判で、記事は2ちゃんねるにあった「第三者による複数のレスで構成」していたとして、ブログ全体が名誉毀損などの不法行為には当たらないと主張していた。

    しかし判決はこれを認めず、「まとめる」という行為を「独立した別個の表現行為」と指摘。管理人の「一定の意図」があるとして、こう言及した。

    本件各ブログ記事は、控訴人が一定の意図に基づき新たに作成した一本一本の記事(文書)であり、引用元の2ちゃんねるのスレッド等からは独立した別個の表現行為である。

    そのうえで「ブログ記事の掲載行為は、新たな文書の『配布』である」「素材は2ちゃんねるにあるとしても、情報の質、性格は変わっている」とし、こうも指摘している。

    読者に与える心理的な印象もより強烈かつ扇情的なものになっているというべきである。そして、2ちゃんねるの読者とは異なる新たな読者を獲得していることも否定し得ない。

    「読者の扇動もあり得ないとはいえない」

    保守速報側は「李さんが論争相手に対し、侮辱的表現である『ネトウヨ』を乱発して煽り立てていた」「対立する思想の支持者全体に対する過激な批判的言動に対抗するための対抗言論」とも主張していたが、高裁判決はこれも否定した。

    言論の応酬の法理が適用される場面は、自己の正当な利益を擁護するためやむを得ず他人の名誉を毀損するような言動をした場合である。

    そのために「言論の応酬の法理」は適用されないとし、「仮にこの点をおくとしても」としたうえで、「その内容において適当と認められる限度を超えている」と指摘した。

    判決ではそのほか、記事にあった「マジこいつゴミ」などの表現についても、「社会通念上許される限度を超え」ていると厳しく批判。

    「帰ってくれ」などと、日本から出ていくように促すようなヘイト表現についても、「これを閲覧した一般読者がおよそ具体的行為を扇動されたりすることもあり得ないとはいえない」とした。

    保守速報側は上告の方針

    原告団の上瀧浩子弁護士は「理論的にも明確になり、人種差別や女性差別、名誉毀損について非常に厳しい判断をしている」と評価した。

    また、原告の李さんは会見でこう語った。

    「ちゃんとした公平な司法判断が下された。朝鮮人として、女性として、この日本に生まれてよかったなと、初めて思いました」

    そのうえで、裁判所の判決が「ひとつひとつ丁寧に批判、どのように間違っているか詳しく批判してくれた。ほかの女性・民族差別が起きた時の判例としてすごく役に立つのではないでしょうか」とも述べ、言葉に力を込めた。

    「路上でもネット上でも、私たち在日の声はかき消されていた。この裁判を機にネット上でも差別やヘイトを許さないと訴え、同じような想いをする人がいなくなるよう後押ししていきたい」

    保守速報側の代理人弁護士はBuzzFeed Newsに「間違いなく上告でしょう」と述べた。


    BuzzFeed Newsでは【「嫌韓サイト」はなぜ黙認されていたのか? 「保守速報」から広告会社が自主的に撤退】という記事も掲載しています。

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