「嫌韓サイト」はなぜ黙認されていたのか? 「保守速報」から広告会社が自主的に撤退

    ユーザーからの通報の動きが広がっていた。

    差別的な記事などが問題視されているまとめサイト「保守速報」への広告出稿を、企業が取りやめる動きを受け、広告を運用するアドネットワークなども相次いで撤退している。BuzzFeed Newsの取材でわかった。

    同サイトをめぐっては、広告売り上げなどの資金を断とうとするユーザーによる広告掲載企業への「通報」が広がり、サイトにバナー広告がなくなっている。

    打ち切りを決めた企業の中には、通報ではなく、一連の動きを報じたニュースを受け、自主的に撤退を判断したところもあった。

    これまでも、ヘイトや著作権保護に問題のあるサイトに広告を掲載することへの批判はあったが、対応する企業は少なかった。今回、直接の連絡がなくても、自主的に撤退を決める企業が出てきたことは、画期的だ。

    保守速報とは

    「保守速報」は「政治、東亜ニュースを中心にまとめ」(公式Twitterより)ているサイト。Twitterフォロワーが6万人近くいるなど拡散力が高い。中国や韓国に関する差別的内容や誤った情報などを配信し、たびたび問題視されてきた。

    サイトで名指しされた在日コリアンの女性が訴えた裁判では、2017年11月に大阪地裁が、記事は人種差別や侮辱にあたると認定。賠償命令を出した。運営側はこれを不服とし、大阪高裁に控訴した。

    サイトの収入源になっていたのが、さまざまな企業のバナー広告だ。自動車会社や銀行など、誰でも知っている大企業も多かった。

    こうした状態を問題視したネットユーザーが6月上旬、企業側への通報を始めた。まとめサイトの運営は広告料収入に依存しているため、それを絶つ狙いだ。

    エプソンは通報を受け、中1日で出稿を取りやめたという。BuzzFeed Newsの取材に「自動で掲載されていたため、把握していなかった。社内規定に基づき、中立性の維持の観点から出稿を見合わせました」と説明している。

    動きは他の広告主にも広がり、国内最大手のアフィリエイトサービス「A8.net」も提携を打ち切ったことが、BuzzFeed Newsの取材で明らかになっている。

    自主的な撤退も

    今回、BuzzFeed Newsの取材で、少なくとも2社の広告配信ネットワーク(アドネットワーク)提供会社と、1社の広告配信ツール(SSP)提供会社が「保守速報」との提携を打ち切っていたことが明らかになった。

    SSP「fluct」とアドネットワーク「Zucks」を運営するVOYAGE GROUPの広報担当者によると、いずれも利用規約に違反していることが打ち切りの理由という。

    前者では「人種、民族(中略)等による差別につながる表現」を、後者では「人種差別を推奨」「他人を差別もしくは誹謗中傷し、又は他人の名誉もしくは信用を毀損する行為」を、それぞれ規約で禁止している。

    いずれも、打ち切りの判断はサービスごと。「fluct」はユーザーからの通報を受けた措置だったが、「Zucks」は同サイトに関するニュースをもとに「媒体精査」を行い、自主的に打ち切りを判断したという。

    また、BuzzFeed Newsは「fluct」に通報した男性にも取材をした。

    「保守速報が在日コリアン個人に対し差別投稿をして賠償を命じられた件」について指摘し、規約違反の可能性とともに「反社会的なサイトに広告を出すべきではないのではないか」と促したという。

    なぜ、規約違反は見落とされるのか

    もうひとつのアドネットワーク「nend」も、打ち切り措置を取った。

    運営元は、すでに同サイトと提携を解除している「A8.net」と同じファンコミュニケーションズ。広報担当者によると、やはり判断はサービスごとだという。

    「nend」の場合もユーザーからの通報を受けた措置で「複数のSSP経由で広告配信がなされていましたが、既に規約違反で広告配信停止措置をした」という。

    ここも各社と同様、規約で「人種差別を推奨するサイト」の運営を禁じている。

    しかし、なぜ規約違反のサイトにずっと広告が掲載され続けていたのか。「事前チェック」をしているというが、それにも限界があるという。

    ファンコミュニケーションズの担当者はこうも話す。

    「配信先が膨大になっているので、チェックしきれていないのが実情です。システム開発などでチェック体制を強化し、違法や規約違反のサイトに掲載されないようにしていきたい」


    BuzzFeed Newsでは、保守速報や、同様のサイトとの提携を解除したと思われる複数の仲介サービスに取材を進めています。情報提供はこちら(japan-report@buzzfeed.com)。