安倍首相、新聞各紙が「誤報」と認識 野党の質問時間削減めぐり

    各メディアが自民党の萩生田光一・幹事長代行の発言を報じていたが…

    11月27日から始まった衆議院予算委員会で、安倍晋三首相が「国会における野党の質問時間削減を首相が指示した」という各メディアの報道が「誤報」であるという認識を示した。立憲民主党の長妻昭議員の質問に答えた。

    各メディアは「首相の指示」と報じていたが…

    そもそも、この「野党の質問時間削減」問題については、10月27日、安倍首相が自民党の萩生田光一・幹事長代行に対し、選挙結果を受けて与党の質問時間の拡大を指示した、と各メディアが報じている。

    多くの情報のソースは萩生田氏だ。たとえば、朝日新聞はこう伝えている。

    萩生田光一・幹事長代行によると、安倍晋三首相(自民党総裁)は27日、首相官邸で萩生田氏に「これだけの民意を頂いた。我々(自民党)の発言内容にも国民が注目しているので、機会をきちんと確保していこう」と指示したという。

    一方、産経新聞も同様の報じ方をしている。萩生田氏が首相の言葉を、記者団に紹介したという内容だ。

    萩生田氏は衆院選後の10月27日、首相と官邸での面会後、国会の質問時間に関して首相が「これだけの民意を頂いた。われわれの発言内容にも国民が注目しているので、機会をきちんと確保していこう。その努力を党もやってほしい」と発言したことを記者団に紹介した。

    日経新聞も「萩生田氏が明らかにした」として同様の報道をしているほか、時事通信は「萩生田氏に配分見直しを指示」と、共同通信も「安倍首相が党幹部に検討を指示した」と報じている。

    首相「ファクトを申し上げます」

    安倍首相はこの日、答弁でこれを否定。長妻氏の質問に対し、こう述べた。

    「私が国会の質問時間などについて指示をするわけもなく、指示をしたことはございません。萩生田もインタビューに応じ、指示をしていないと答えている」

    長妻氏は、首相が5月の国会で「熟読」を呼びかけた読売新聞も同様の報じ方をしていると言及。「各紙が誤報したのか」と問い詰めた。

    安倍首相は「私はファクトを申し上げます」として、こう答弁した。

    「私は指示をしておりません。第三者がいないのですから、一方の当事者の私が指示をしていないとはっきり申し上げておきます」

    「萩生田氏は、先般、NHKの日曜討論で『総理から国会の運営については指示があったというのは全くの誤報です。国会のことは国会でお任せしたいと前置きをしたうえで、私の説明に一定のご理解を受けた』と述べているわけであります」

    「つまり、萩生田氏が私に説明をし、私は聞いていたというわけであります」

    各メディアが報じた「削減を指示した」という「萩生田氏」の発言は、誤報だったという認識だ。長妻氏は「日本の大新聞が全部揃って誤報をするのか」と述べた。

    野党の質問時間は削減されたが…

    国会での質問時間については、与党には法案作成の過程で議論ができることを踏まえ、これまで「2対8」が慣例とされていた。自民党が野党時代だった頃から続いていたものだ。

    しかし、今回の選挙結果を受け、与党側は「5対5」を提案。野党と対立していたが、11月15日の衆院文部科学委員会では「1対2」でまとまった。

    27日始まった予算委については、国政の大きな課題を議論する場ということもあり、野党が抵抗を続けていた。しかし、最終的に与党側が押し切り「36%対64%」となった

    この日、長妻氏は、野党の質問時間削減は「国会による政府の監視機能の問題からも重大だ」と指摘。

    安倍首相に「監視を受ける政府のトップが監視を緩めてくれと取られかねない発言をしたとは思いたくはないが、ほとんどのマスコミが報じた。時間の配分については従来通り元に戻していただきたい」と求めた。