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「CNNがトランプ大統領再選の可能性を報じた」はミスリード。“パニック放送”と拡散したが…

拡散しているCNNの動画は、選挙前の9月27日に公開されたもの。仮にトランプ氏が選挙で敗北した場合、その状況下で当選するためにどのようなシナリオを取りうるのか、解説している内容だ。

「CNNがトランプ大統領再選の可能性を報じている」という情報がSNSなどで拡散している。

アメリカで広がりを見せたあと、日本でもやはり広がっているが、これは「ミスリード」な情報だ。

拡散している動画やスクリーンショットは9月末に放送された内容であり、トランプ氏が「負けた場合」に取りうるシナリオを解説したものだ。

国内で広がりを見せているのは、YouTubeの《CNNがトランプ大統領の再選の可能性を放送!!》という11月27日の動画。

すでに24万回近く再生されており、計測ツール「BuzzSumo」で調べたところ、TwitterとFacebookでも8000以上シェアされるなど、広がりを見せている。

これは、沖縄を拠点に「琉球新報、沖縄タイムスを正す県民・国民の会」の代表などとして活動する女性によるライブ配信で、「ブラックフライデーパニック」と題する英語のネット記事を紹介しながら「CNNがブラックフライデー(11月27日)にトランプ氏勝利の可能性を放送した」などと伝えた。

女性は今回の選挙に際して渡米し、主にトランプ氏側の訴える不正に関する情報や支持者の声などをYouTubeやSNSで発信しており、動画のコメント欄には「日本にジャーナリストは皆無」「日本のメディアは早く報道しろよ」などというコメントも散見される。

CNNが反トランプ氏の報道姿勢を示していたことから、「まさかの再選予測を出した」「ついに再選の可能性に触れ始めた」などと、「驚き」を軸に広がったようだ。

この情報は、別の政治評論家の男性がTwitterで引用し、さらに拡散。また、「Total News World」という運営元不明サイトの《【速報】CNNが2020年大統領選挙にトランプが勝ってしまうとパニック放送!/ジェナエリス弁護士「どんでん返し」》とする11月28日の記事も広がりを見せている。

アメリカで拡散→日本に「輸入」?

しかし、これは先述の通り「ミスリード」だ。拡散しているCNNの動画は、選挙前の9月27日に公開されたもの。仮にトランプ氏が選挙で敗北した場合、その状況下で当選するためにどのようなシナリオを取りうるのか、解説している内容だ。

アメリカでは、大統領の当選は2段階の投票で決まる。まず11月3日に行われた一般有権者の投票で、州ごとの勝敗が決まる。その上で各州には3〜55人の「選挙人」が割り当てられている。

各州の選挙人は、各州の一般有権者の投票で勝った方の候補に投票し、その結果で正式な当選者が決まる。選挙人による投票は12月14日に行われる予定だ。ただし、選挙人投票でいずれの候補者も過半数(270人)の選挙人を獲得できなかった場合、下院が大統領を選ぶという仕組みがある。

全米の各州に1票ずつが割り当てられ、過半数(26票)を取った候補が当選することになる。この場合、トランプ氏陣営の共和党が26票を投じる可能性が高くなり、再選の道筋が見えると、CNNは伝えたのだ。

CNNの放送内容は、投票が行われる前の時点で、こうした複雑な制度に基づいて起きうる様々な可能性を解説したものだ。一般有権者の投票が終わり、せでに選挙の大勢が見えている現状で、トランプ氏に再選の可能性があると報じているわけではない。

そもそもこの情報は、アメリカで拡散していたものだ。元FOXニュース記者のジャーナリスト、カイル・ベッカー氏がツイートをし、トランプ氏の弁護団のジェンナ・エリス氏が引用リツイートするなど、広がりを見せていた。

実際、前出の運営元不明サイトの記事もベッカー、エリス両氏のツイートを紹介している。また、女性がYouTube動画で紹介していたネット記事は、ベッカー氏のツイートをまとめた保守系サイト「Gateway Pundit」のもので、1万8000以上シェアされている。

なお、このサイトは陰謀論や誤情報の拡散起点となっていると多くの米メディアが指摘していることに留意が必要だ。

これらのことから、アメリカで広がったミスリードの情報が日本に「輸入」されたことがわかる。

陰謀論は広がるが…

トランプ氏が敗北した場合、郵便投票などの不正を訴えながら激戦州における訴訟を長引かせ、期限までに選挙人の獲得ができない状況にすることで、このシナリオに持ち込むのではないか、との指摘はかねてからなされてきた。

実際に選挙が終わると、トランプ氏が事前に報じられたシナリオ通りの動きをしていることがわかる。しかし、バイデン氏の勝利となった結果が覆る状況にあるとは言えない。

なお、トランプ氏は11月26日、「もし選挙人による投票で敗れればホワイトハウスを去る」と述べた。一方で「選挙は不正だった」という主張を繰り返した。29日にも、不正があったという主張は曲げなかった。

選挙不正に関しては、郵便投票だけではなく、集計システムの「ドミニオン社」などを名指しした陰謀論も多く展開されている。

しかし、トランプ氏の側近であるバー司法長官が「大掛かりな不正に関する証拠はない」とAP通信のインタビューに否定しているほか、国土安全保障省サイバー・インフラ安全局も2020年大統領選の選挙での不正の存在を否定する声明を出した。

アメリカ大統領選をめぐって、ネット上に大量の誤情報や、根拠のない情報、さらにはミスリードな情報が拡散している。日本国内でも「まとめサイト」やインフルエンサー、一部の政治家らを通じて広がりを見せており、注意が必要だ。


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