Updated on 2020年3月31日. Posted on 2020年3月27日

    「まるで予言の書」新型コロナの感染拡大、半世紀前のSF小説が話題→増刷に

    『復活の日』は、小松左京氏が1964年に発表したSF小説。感染者の70%に急性心筋梗塞を引き起こし、さらに残りも全身麻痺で死に至らしめるウイルス「MM-88」が人類に襲いかかるという物語だ。

    新型コロナウイルスの感染が広がるなか、半世紀前以上に書かれたある小説が人気を集めている。

    SF界の巨匠、小松左京氏の『復活の日』(角川文庫)だ。担当者も「まるで予言の書」と語る一冊は、すでに1万2000部増刷されている。いったい、どのような内容なのか。

    Kota Hatachi / BuzzFeed

    『復活の日』は、小松氏が1964年に発表したSF小説。感染者の70%に急性心筋梗塞を引き起こし、さらに残りも全身麻痺で死に至らしめるウイルス「MM-88」が人類に襲いかかるという物語だ。

    イギリス軍の秘密施設で開発されたMM菌を持ち出したスパイ機が墜落、それをきっかけに世界中でパンデミックを起こすという設定になっている。

    物語の世界では、未知のウイルスはその症状から「チベットかぜ」という新型インフルエンザだとされていた。

    「たかがインフルエンザじゃないか」と感じていった人々が「まさかインフルエンザなんかで」と気持ちの比重を変えるなかで、じわじわと感染が広がっていく描写は、特にリアリティに満ち溢れている。

    4月のはじめ、インフルエンザの記事は、新聞の社会面の左下にあった。それは次第に左下から右上へ、と移動しつづけた(…)三段ベタ記事から、社会面トップへーー、ついでそれは、家庭、文化面へととび火し、やがて第二面の国際面へ、世界各地の惨状の短信として、ぼつぼつとあらわれ、たちまち国際面全面を醜い無数の発疹のようにおおってしまった

    このいまわしい、ゴシック活字の発疹は、国際面のみならず、経済面から、スポーツ、娯楽面にまでひろがり出していた(219-221ページ)

    空っぽになった満員電車

    Kota Hatachi / BuzzFeed

    「巨人ー広島戦」が選手多数の感染により流れてしまったり、ミュージカルや映画製作が中止になったり、ニューヨークのダウ平均株価が暴落(化学、薬品株のみ急騰)をしたり、生鮮食品が暴騰したり、「チベットかぜインフレの危険」が増大したりーー。

    「新聞」の見出しは、パンデミックが日本でも広がる様子を如実に伝えている。

    そして5月下旬、突如世界を震撼させた、”ソ連首相インフルエンザで急死”の大ニュース以来、”チベットかぜ”の記事は一挙に第一面におどり出て、以後、決してそこからおりようとしなくなった

    第一面ーー政治面のトップに、また国際記事の大見だしに……。あるいは、「政府、チベットかぜ問題で緊急閣議」とか、「チベットかぜ対策に、臨時行政措置」とか、「首相、インフルエンザ蔓延による国内危機について、国民に訴える」とか、「WHO(世界保健機関)チベットかぜ対策のため国連安保理に、国連警察軍の協力要請」あるいは「ローマ、ベネルックス三国、戒厳令」などという記事が、矢つぎ早に一面にあらわれ出した(220-221ページ)

    そして、物語はこう続く。

    これらのぶきみな変化は、人々の”まさか”という感覚のもう一つ下にかくされている、ひえびえとした、カチンと堅い恐怖の姿を、さらにあばき出したみたいだった。まさか!ーーいや、ひょっとしたら……(222ページ)

    本来であればラッシュ時なのに、空っぽになった東京の国鉄。ゆったりとした社内で不安な表情を浮かべる乗客。医療崩壊が起き、「戦争同然」になった病院に列をなす人々。

    結果として治療法は見つからず、地球上に生きる多くの命を奪われていくがーー。

    現代への警鐘として

    時事通信

    小松左京氏

    新型コロナウイルスの感染拡大をめぐっては、カミュの名作『ペスト』(新潮文庫)も1万部増刷する人気ぶりを見せていた。

    角川文庫によると、『復活の日』も3月11日のWHOによるパンデミック宣言を受けて大きく注目を集め、重版されたという。

    「小説・ノンフィクションに限らず感染症やパンデミックを扱った書籍に関心が高まっているのは実感しています」といい、角川文庫の担当者はBuzzFeed Newsの取材に、こうコメントする。

    「2月の半ば頃より、社内外から、まるで『復活の日』のようだ、という声が聞こえてきました。半世紀以上前に書かれた作品ですが、全く古びないどころか、まるで予言の書のように、現代への警鐘として捉えることができます」

    『復活の日』は深作欣二監督により、1980年に映画化されている。担当者は「小説ももちろんですが、映画版と一緒にご覧いただけると、ご家族で考えていただく一つのきっかけにもなるかと思います」とも話した。

    小説『復活の日』には、こんな一節もある。

    誰しも、この災厄が、いつかは終わるものと考えていた。「人類」にとって、災厄というものは、常に一過性のものにすぎない、と。(258ページより)

    果たして人類はどうなるのかーー? 気になる方は、ぜひ手にとってみてはいかがだろうか。


    Contact Kota Hatachi at kota.hatachi@buzzfeed.com.

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