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「大企業として考えられない」DHCの在日コリアン差別問題、日弁連の「警告」めぐる人権団体の要請に応じず

問題となっていたのは、DHCのサイト上に掲載されていた吉田会長名義の複数の文書。在日コリアンに対する差別的表現を繰り返し記載していた。文書を問題視した複数の自治体が包括連携協定を解除したほか、日本テレビもCM枠の販売を取りやめるなどの事態に発展。取引先も対応を求め、削除されたがDHCは公に謝罪はしていない。

化粧品販売大手DHCの吉田嘉明会長が、自社サイト上に在日コリアンに対する差別的なメッセージを繰り返し載せていた問題。

日本弁護士連合会が同社に対し、差別や人権侵害にあたるとして「警告」を出したことを受け、人権団体が5月25日、東京都港区の同社本社を訪問し、面会を申し込んだが、同社は応じなかった。

この団体はこれまでもDHC側に文書で対応や謝罪を求めていたが、返答はなかったという。同社側はこの件についてコメントをしていない。

(注:問題の実相を伝えるため、この記事には差別的表現が含まれます)

問題となっていたのは、DHCのサイト上に掲載されていた吉田会長名義の複数の文書。

ライバル企業であるサントリーが「チョントリーと揶揄されている」と記したほか、「日本の中枢を担っている人たちの大半が今やコリアン系で占められている」「似非日本人はいりません。母国に帰っていただきましょう」などと在日コリアンに対する差別的表現を繰り返し記載していた。

文書を問題視した複数の自治体が包括連携協定を解除したほか、日本テレビもCM枠の販売を取りやめるなどの事態に発展。

取引先であるイオンやJR西日本が対応を求めるなどしたことから2021年5月末までに文書は削除されたが、DHC側は謝罪などを含む見解を一切公にしていない。

日弁連が同社に警告を出したのは、今年3月28日。人権救済申し立てを受け、調査した結果、会長名義の2つの文書の内容が、在日コリアンへの差別や人権侵害にあたると指摘した。

調査報告書では、「在日コリアン等に対する不安を煽り社会からの排除を呼び掛けており、危険性を持った表現であり、悪質性の程度は強い」などとも指摘。「公的領域における社会的影響力のある表現行為」と問題視した。

そのうえで、DHCには差別的言動をウェブサイトを含む同社の媒体に掲載しないよう、吉田会長には差別的言動を繰り返さないよう警告。調査報告書もあわせて送付した。

DHCは「対応しかねる」

日弁連に人権救済を申し立てていたのは、在日外国人の人権問題や差別解消に取り組むNPO法人「多民族共生人権教育センター」(大阪市)だ。

同センターは以前も2度にわたって謝罪や問題の経緯説明、再発防止策に関する書面を求めていたが、同社側から反応がなかったことから人権救済の申し立てに踏み切ったという。

日弁連の警告の発出後も同社からは反応はなく、同センターは5月18日に改めて面会を求める文書を送り、1週間後の訪問を通告。しかし同社からの返答はなく、当日に直接「対応しかねる」との返答があったという。

同センターの文公輝事務局長は訪問後、BuzzFeed Newsの取材に「何も回答がなく、当日は門前払いという対応には怒りを覚えます」と語った。

「これまで何度も文書での申し入れをし、さらに日弁連の警告などがありましたが、DHC側は無視し続けています。今回もそれは同様でしたが、差別を批判されている一般的な大企業として、謝罪もせず、話し合いにも応じずシラを切り続けるのは、到底考えられない対応だと感じています」

「文書が削除されたことで、今回のヘイト問題が解決したわけではありません。DHC側の態度は何も変わっておらず、いまだに取引している企業や自治体、さらに社会全体が差別に加担しないためにも、厳しい目線をむけ続ける必要があると思っています」

センター側は今後、改めてDHCの吉田会長や責任者に対し、面会の場を設けるように繰り返し、強く求めていく方針だという。

一方、DHC広報側はBuzzFeed Newsの取材が警告文への見解や面会に応じなかった理由などを聞いた質問に対し、「コメントは控えさせていただきます」とだけ回答した。