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待機児童はゼロ、学費も医療費も無料。なぜデンマークは子どもの貧困率が低いのか?その驚きの政策たち

「子ども達の6人に1人が貧困」と言われる日本との違いは何なのか。大使館に、デンマーク国民が持つ価値観や政策を聞きました。

2016年11月末、いわゆる「子どもの貧困」をめぐるデンマーク大使館のツイートが話題を呼んだ。

デンマークは貧困率が最も低い国です! 母子家庭など一人親家庭の貧困率は世界最低です。

OECD主要国の子どもの貧困率(ひとり親家庭)を比べたグラフだ。ご覧の通り、日本はもはや枠からはみ出してしまっている。

この数値は、所得の中央値の半分(貧困ライン)を下回っている「相対的貧困率」を示している。

2012〜3年の各国の「相対的貧困率」を比較したOECDのデータによると、その値はデンマークは4.2%だが、日本は56%と最悪の値だった。

全体の子どもの貧困率でも、デンマークは2.7%で最低。日本は16.3%と加盟国の上位に位置している。

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日本の子ども貧困率は、想像以上に深刻だと言える。貧困家庭にいる子どもは、実に6人に1人、約325万人いるとされている。

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いったい、デンマークはどういう方法でここまでの状況を成し遂げたのか。BuzzFeed Newsは、大使館にその政策を聞いてみた。

「子どもは社会が育てるという価値観が根付いているんです」。デンマーク大使館の広報担当者はBuzzFeed Newsの取材にそう語る。

デンマーク大使館提供

「親がどんなに貧困であろうと、子どもが希望すれば学べられる。どんな子どもにも平等にチャンスがあるべきと考えているのです」

日本では貧困家庭に生まれた子ども達が、お金がないために十分な教育を受けられなかったり、働くために進学を諦めたり、必要な医療を受けられなかったりすることを強いられている。

そのため、子ども達自身も将来的に貧困に陥ってしまう「貧困の再生産」が大きな問題となっている。

しかし、デンマークではそういった事態を防ぐための仕組みが充実している。たとえば、こんな具合に。

出産:無料

出産にかかる費用は無料だ。また、母親は18週間の産休を取得できる。

教育:大学院まで学費が無料

小中学校は公立学校なら学費はなし。大学はすべて国立で、院まで無料だ。

日本のように教科書代などを支払う必要もない。

さらに、親と別居している学生全員に月額10万円弱の給付金が支給される。

医療:無料

高度医療を含む、すべての医療は無料だ。医療保険制度は1973年に廃止され、税金でまかなっている。

不妊治療や人工授精、海外でしか受けられない治療も公費負担だという。また、介護も必要なサービスを行政が提供している。

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待機児童:ゼロ

保育制度も充実しているなど、「働く親」に優しい国であることも、日本との大きな違いだ。担当者に待機児童について聞くと、「そもそも待機児童という概念自体、存在しません」と話す。

ひとり親家庭(主にシングルマザー)の子どもの貧困率が高い日本では、子どもを保育施設に入れられないことが、働き手の負担や子どもの発育に悪影響を及ぼすとされている。

一方のデンマークでは、行政が保育施設を提供する義務を負っており、待機児童はいない。さらに、低所得者(年収約250万円以下)は無料で利用できる。

最低賃金:1650円

デンマーク大使館提供

物価は日本より少し高いくらいだが、最低賃金は1650円だ。また、デンマークでは同一賃金同一労働が徹底されている。

これもまた、貧困世帯の働き手が非正規雇用などに就かざるを得ないことで、貧困を脱せなくなっている日本との違いだ。

担当者は「所得の再配分機能が日本よりも機能しているのだと言えます。困っている人がさらに苦しまないように、社会でケアを提供しているんです」と語る。

医療費や介護費、年金は保険制度ではなく、誰もがサービスを受けられるよう税金でまかなわれている。

その分、消費税は25%、所得税の平均も35〜48%と日本より高い。自分のお金が知らない子どものために使われるのを嫌に思う人はいないのだろうか。

担当者は言う。

「同じようなケアを自分も受けてきたし、自分の両親も受けてきたと思える人が多い。そして、それを未来の子どもたちや、自分に何かがあったときのために支払っていると思えているんです」

その根本には、子どもは将来、タックスペイヤーに、社会を支える存在になる、という考え方があるという。

デンマーク大使館提供

「もちろん、貧困率はゼロではありません。でも、できるだけゼロに近づけようとして、戦後ここまでの状況を築き上げてきました。格差が世代間を超えて連鎖することを防ごうと取り組んできた成果です」

デンマークでは、1970年代からこうした取り組みが積極的になされてきた。一方の日本では、ようやく議論が始まった段階だ。

12月22日、厚労省は国内で2016に生まれた日本人の子どもが98万1千人の見込みだと発表した。統計が始まった1899年以降、100万人を切るのは初めてだ。

子どもを産み、そして育てることが難しいという状況は深刻さを増している。

それだけではない。NHKの「貧困女子高生」報道にバッシングが集まるなど、問題への無理解も未だに根強い。

子ども達が、当たり前に生きられる世の中。そして当たり前に育てられる世の中にするために、何ができるのか。「はみ出たグラフ」へ危機感を持つことこそが、最初の一歩になるはずだ。

Kota Hatachiに連絡する メールアドレス:Kota.Hatachi@buzzfeed.com.

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