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女性芸能人の「フェイクポルノ」めぐり逮捕者も。「まとめサイト」の問題点とは

音事協は声明で、ディープフェイクのみならず、「まとめサイト」による「画像の無断転載によるパブリシティ権侵害や人格権侵害によるまとめ行為など」が横行していると指摘している。

AIによる動画の加工「ディープフェイク」を使って女性タレントの顔写真をアダルトビデオに重ねたポルノ動画を、自らの「まとめサイト」で紹介していた5人が、名誉毀損や著作権法違反の疑いで警視庁などに逮捕された。

芸能事務所で構成される業界団体「日本音楽事業者協会」(音事協)は11月19日、声明を発表。「まとめサイト」による違法行為が横行している実態を批判した。

音事協や報道によると、5人は警視庁、千葉県警、京都府警に逮捕された。それぞれ、自身が運営、管理する「まとめサイト」にディープフェイクのポルノ動画のリンクを複数掲載していたという。

音事協は声明で、ディープフェイクのみならず、「まとめサイト」による「画像の無断転載によるパブリシティ権侵害や人格権侵害によるまとめ行為など」が横行していると指摘。

それらを「違法なまとめ行為」として、今回の摘発が「蔓延に歯止めとなるものとして社会的に極めて重要な意義をもつもの」との認識を示し、まとめサイトにおける「5つの問題点」を以下のように例示(要旨)している。


1:ファクトチェック

情報の正確性の裏付けがなされていない情報が開示されている。専門的な知識によるバックボーンがないままに記事化されている。ファクトチェックがないため、中には虚偽の情報も含まれる。

2:恣意的な編集

偏った内容の情報ばかりを集めるなどして閲覧者の意思を誘導させる。仮に、悪意のある編集意図をもって個人法人を問わずある特定のターゲットに不利益をもたらす情報ばかり集めれば、そのターゲット の社会的信用を失墜させることに繋がる。

3:違法コンテンツ

映像や画像の無断転載(著作権、肖像権、パブリシティ権の侵害等)や今回の摘発事例のような人格権を侵害するコンテンツの開示。また、タレントの卒業アルバムのまとめや、プライベート写真のまとめ
などはプライバシー侵害にあたる。

4:フリーライド

他者が取材した記事等の転載など。情報のフリーライド(タダ乗り)。他者の記事からのコピー&ペースト。

5:広告収益が目的化

記の問題点が横行する一因は、アフィリエイト広告の収益を目的としたPV(ページヴュー)至上主義にあるとされ、まとめサイトには広告収益のみを目的とした極めて悪質なサイトが多い。

タレントは、その著名性によって社会の耳目を集めるため、こうしたPV至上主義の格好の標的とされやすい。儲かればそれで良いといった風潮は、自ら苦労して情報を集め、取材や調査を経て記事の信用性を高めるといった当然のプロセスをたどることなく、安直で真実性の薄い記事の大量生産を招いている。

まとめサイトの影響力は?

音事協が今回の声明で指摘しているように、多くのまとめサイトには、記者による関係者への取材ではなく、ネット上の情報やコメント、伝聞などをまとめて記事を作成するという共通点がある。

メディアとして「事実関係」を提示するよりも、「意見」を紹介し、同調した人に広めてもらうことに焦点が当てられているのも特徴だ。

広告収入を目的として運営されているものも多いとみられている。以前、BuzzFeed Newsの取材に応じたある運営者は、「中堅サイトで月収100万円」と明かしていた。

また、著作権や他者の権利を侵害するコンテンツの流布だけではなく、誤っていたり、ミスリードだったりする情報の拡散の起点になっているという問題点もある。

昨今では日本学術会議や米大統領選をめぐり、そうした疑義言説の拡散に大きく寄与。前者では学術会議に、後者ではトランプ氏の対抗馬であったバイデン氏に対して、批判的な言説を広げ、世論形成に一定の効果をもたらした。

BuzzFeed Newsの調べでは、いずれも既存メディアと同等、ないしは大きい拡散力を持っていることも明らかになっている。

実際、過去1年にアップされたネット上の学術会議に関する記事のなかで、多くのテレビや新聞をおさえ2番目に拡散されたのはまとめサイトの記事だ。

また、「バイデン」が含まれる記事でも、SNS上でのシェアが最も多かったのはまとめサイトの記事で、この場合はトップ100記事のうち、35個がまとめサイトと、国内外の既存メディアを合わせた34個よりも多かった。

まとめサイトは元来「ネット上にあるものをまとめただけ」との立ち位置を取ることで、その法的責任を逃れようとしてきた。

しかし、在日コリアン女性が自らを誹謗中傷している記事をアップしていたサイト「保守速報」を提訴した訴訟で、「まとめる」という行為が「独立した別個の表現行為」であり、それによる不法行為が成り立つという判決が2018年に確定している。

しかしその後も、悪質なサイトによる記事の拡散は後を絶たない。その情報を安易に広げてしまうことは、運営者の広告収入にプラスになる反面、他者の権利の侵害や誤情報の拡散に寄与することにつながるおそれもある。

類似の「トレンドブログ 」に関しては、リツイートした人が訴訟の対象になったケースもある。SNS上で見かけた場合には、安易に拡散しないよう注意が必要だ。