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Updated on 2018年10月12日. Posted on 2018年1月25日

草津白根山噴火「自衛隊員8人が円陣になって民間人を守り、死亡した」は本当か

元国会議員も拡散したが…

1月23日に起きた群馬県・草津白根山の噴火に関連し、ネット上に「自衛隊員8人が民間人を円陣を組んで守り、その後1人が死亡した」という情報が拡散している。

元国会議員がツイートするなどし、噴火から2日すぎた1月25日現在も広がりをみせているが、この情報には明確なソースが見当たらない。掲示板への書き込みに端を発したものとみられる。

Twitter

そもそも、ネット上に拡散しているエピソードは複数のパターンがある。その大枠は「自衛隊員が円陣を組んで民間人の親子を噴石から守り、うち1人がその後死亡した」という内容だ。

当日からSNSで広がっているが、なかでも元衆議院議員・中津川博郷氏のツイート(1月24日朝)は大きく拡散。1月25日夕方までに2万1千件近くのリツイートと、2万5千件近くのいいねを獲得している。

過去3回当選している中津川氏は「北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会」の委員長も務めた。2017年の衆院選では、日本維新の会の比例東京ブロック単独で立候補したが、落選。「正しい歴史を伝える会」の顧問でもあるという。

なぜこのような情報が…?

5ちゃんねる

この「円陣を組んだ」情報には、明確なソースが存在しない。

その発端は噴火直後の午後2時すぎ、インターネット掲示板「5ちゃんねる」(旧2ちゃんねる)の「スキースノボ板」への匿名書き込みにあるとみられる。

万座温泉・表万座・草津国際 part2」というスレッドには、「現地からです」という言葉とともに、以下の文章が書き込まれている。

現地からです。
ゲレンデ内の避難は全員完了してます。
たまたま近くに自衛隊が居てくれて助かりました。私たち親子と噴石の間に円陣組んで立ちはだかってくれて、ずっと声を掛けてくれました。
円陣組んでくれた自衛隊の方、1名に石がぶつかったんですが、1度倒れたあと、また立ち上がって私たちを守ってくれました。
本当に感謝です。
避難終えてその自衛官と思われる若いお兄さんがタンカでヘリに乗せられてる所を見たときは涙が出ました。
どうかご無事で。
避難場所に警察官がいましたが、オロオロしてるだけで、機能していません。
自衛官の勇姿を見た直後だけに少し残念です。
今のところ死亡者はいませんが、行方不明者が2人とのことです。
山頂へスキー客が残っていないか、雪上車?で見に行ったパークスタッフ2名と連絡が
取れないそうです

書き込みには、人数などの詳細は記されていないが、円陣を組んだ隊員たちが親子を救い、1人が噴石に当たったという点において、拡散している情報の原型とみられる。

その後、この書き込みを引用したツイートがTwitter(すでにアカウント削除)で拡散。

さらに、現地で訓練していた自衛隊員の人数や訃報とあいまって、「円陣を組んでいたのは8人で、うちの1人が死亡した」という内容に置きかわり、Twitterやブログ、ニュースサイトのコメント欄などで引用されていったようだ。

マスコミがこの情報を報じないことに対する非難も、一部で噴出。実際、先出の中津川氏も、メディア批判の文脈でこの事実を引用している。

自衛隊の見解は

時事通信

被災者の救助活動にあたった隊員たち

陸上幕僚監部広報室の担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、拡散している情報と同じ状況は現段階で把握していないとし、こう語った。

「ネット上の情報は把握しているが、全員の隊員から聞き取りできていない以上、それを完全に否定することも、肯定することもできません」

「ただ、聞き取りができる隊員の情報では、円陣を8人で組み、民間人を囲んで噴石から守ったということは、可能性として極めて低いと言えます」

軽傷だった2人への聞き取り結果として、広報室が明らかにした状況はこうだ。

訓練中に噴火に巻き込まれた隊員は8人いた。噴火直後、隊員たちは林の中に逃げ込んだ。

その後、噴石が落ち着いた段階で、軽傷の隊員がすべての隊員に声をかけ、麓の隊員に携帯電話で救助を要請。

現場付近に来たレスキューが6人をスノーモービルや救助用ソリでピストン搬送し、軽傷だった2人はほかの救助を補助しながら下山したという。

現場付近には隊員と民間人が近くにいたという報道もある。実際、担当者も「現場に民間人がおり、少数名の隊員がかばったという可能性は否定できない」としている。

だが、防衛省が「可能性は極めて低い」と言うように、拡散している「8人で円陣」の情報自体がデマである可能性は限りなく高い。

災害時に拡散しやすいデマ

youtube.com

噴火直後のスキー場の映像

多くの情報が錯綜する災害時は、デマや誤った情報が拡散しやすい。これまでも、震災などのたびに起こってきたことだ。

今回のケースでは、ソースのあいまいな情報に訃報が重なったことで、より真実味を帯びた「美談」として拡散した。

「災害時に一般人を守った自衛隊員の死」というストーリーは、受け手の同情を誘う、思わず拡散したくなる内容だ。さらに「マスコミが報じない」という枕詞がつき、拡散される。

マスコミが事実に基づいた報道をしようとすれば、防衛省や当事者などに確認できなければ、報じることはできない。こうして、デマは広がっていく。


BuzzFeed Newsでは【スキー場のカメラに噴火の瞬間か 草津白根山、ゴンドラに迫る噴石も】という記事も配信しています。


Contact Kota Hatachi at kota.hatachi@buzzfeed.com.

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