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野党批判を繰り返すアカウント「Dappi」の運営法人?自民党支部や国会議員が取引、政治資金収支報告書などで明らかに

【アップデートあり】この東京都内の法人をめぐっては、立憲民主党の小西洋之参議院議員らが「Dappi」の発信者情報開示請求を経て、名誉毀損で損害賠償などを求める訴訟を東京地裁に起こしている。

Twitter上で野党批判を繰り返し、不正確な情報や誹謗中傷などが問題視されていたアカウント「Dappi」の運営に法人が関与しているとみられることが明らかになった。

関与しているとみられる法人は、東京都内に本社を置くWEB制作会社。民間の信用調査機関によると、得意先は「自由民主党」などとされている。

また、BuzzFeed Newsの調査で、同党の小渕優子衆議院議員や参議院選挙比例区の支部なども同社と取引があることもわかった。

この法人をめぐっては、立憲民主党の小西洋之参議院議員らが「Dappi」の発信者情報開示請求を経て、名誉毀損で損害賠償などを求める訴訟を東京地裁に起こしている。

「Dappi」は、フォロワーは16万人以上と、拡散力の大きいアカウントだ。

プロフィールには「日本が大好きです。偏向報道をするマスコミは嫌いです。国会中継を見てます」などと記している。

主に野党やマスコミ批判の文脈から、国会答弁の動画や、DHCテレビ「虎ノ門ニュース」の動画などをたびたび公開していたが、その発信内容には不正確な点もあり、問題視されていた。

今年6月には、立憲民主党の枝野幸男代表と菅義偉首相の答弁動画を大幅に編集し、「哀れな枝野」などと拡散。BuzzFeed Newsもファクトチェックを実施し、「誤り」と判定した。

注目されるのはそのツイート内容だ。実際の国会答弁の直後に編集動画をアップしたり、関係者向けの国会資料を投稿したり、インフォグラフィックなどを含むさまざまな種類の「まとめ画像」を公開してきた。

投稿は平日の朝9時ごろ〜午後9時ごろまでが中心で、土日の投稿は、ほぼないという特徴もある。こうしたことから、組織的な動きを指摘する声は以前からあがっていた。

「Dappi」は2015年1月から活動が確認されており、約12万のフォロワーがいた2019年に1度凍結されたが、別のアカウントで再始動。

2021年10月1日でTwitterの更新は止まっている。最後のツイートは、菅義偉前首相が緊急事態宣言の解除を伝える投稿のリツイートだ。

自民党との関わりは

「Dappi」に関わっている可能性があるのは、東京都内に本社を置くWEB制作会社。

法人登記によると、同社はサイトの制作やコンサルティング業務、インターネット広告の運営管理業務などを担っている。

民間の信用調査機関によると社員は15名。得意先には「自由民主党」の名があがっており、取引先銀行には大手銀行の衆議院支店の名前もあった。

BuzzFeed Newsが政治資金収支報告書などを調べたところ、同社との取引が確認できたのは、小渕優子・元経産相(衆院群馬5区、党組織運動本部長)と、同党東京都参議院比例区第18支部。

小渕議員の資金管理団体である「未来産業研究会」の政治資金収支報告書には、少なくとも2011年と2017〜19年に同社に対し、ホームページ関連の支払いがあることが記されていた。

4年間の支払い額は計193万7400円。この間、小渕氏は自民党幹事長代理や党組織運動本部長代理、政務調査会長代理などを務めている。


  • 2019年:ホームページメンテナンス計26万1600円、Webサイト制作83万1600円
  • 2018年:ホームページメンテナンス計25万9200円
  • 2017年:ホームページメンテナンス計27万円
  • 2011年:サイトメンテナンス計18万9000円、ホームページ作成12万6000円

さらに2017年の官報には、自民党の「東京都参議院比例区第18支部」の政党交付金使途等報告書に、宣伝事業費として、ホームページ運用管理費計18万9000円を同社に支払った旨が記載されている。

また、支部の政治資金収支報告書には、少なくとも2014年に、この会社に「レンタルサーバー・Webサーバー保守費」として計34万4268円の支払いがあったことが記されていた。

支部の代表は、当時参議院議員だった堀内恒夫氏。読売ジャイアンツの元監督だ。同氏は13年7月の参院選比例区に立候補。落選したが欠員により繰り上げ当選した。16年の参院選では再度落選。支部も同年で解散している。

直接の取材に対し…

BuzzFeed Newsは、登記簿に記載されていた本社所在地を訪れ、取材を試みた。都内近郊の4階建ビルの一室だった。

建物にはほかにも複数の事務所が入居しており、エントランスの部屋番号表に、この会社の社名が記載されていた。

インターホンを押したが、反応はない。サイト上には現在テレワーク中であると記されており、電話をかけても、「本日は営業を終了させていただきました」というアナウンスが流れるだけだった。

BuzzFeed Newsはこの会社のサイトを通じて取材を申し込んでいる。代表取締役にも直接の取材を試みたが、登記簿上の住所の応答はなかった。

一方、「東京都参議院比例区第18支部」の当時の会計担当者は取材に「サイトのことは(当時の)秘書に任せきりで、私も堀内さんもまったく関与していない。(会社の)名前も聞いたことがなく、わからない」と回答した。

このほか、自民党本部には郵送で、小渕議員の事務所にはFAXで、同社との取引の詳細や「Dappi」との関わりの有無について質問状を送付している。いずれも回答があり次第、記事化する。

UPDATE

「Dappi」のツイート内容や資料の性質などから、当初は「関係者向けの国会資料を事前に公開している」と記載していました。

しかし、国会議員がSNSで先に公開していた資料を転載した可能性もありました。SNS上で誰もが閲覧できる情報だった点への確認が不十分だったため、「関係者向けの国会資料を投稿している」に表現を修正いたしました。

修正の経緯について説明が不足していたので、さらに追記しました。(BuzzFeed News編集部)

UPDATE

一部記載を修正しました。