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コロナで休園、保護者が有給求めたら「クビにする」「不公平」… 小学校休業等対応助成金、企業の拒否が相次ぐ。不安の声も

「小学校休業等対応助成金」は、新型コロナウイルスの感染拡大による休校や休園、自粛要請やオンライン授業、さらに子の感染や濃厚接触認定などで休業を余儀なくされた保護者を支援する国の制度。休業に対応する「特別有給」を設置した企業などに、国が賃金相当額(上限あり)を支援する。

新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、保育園や幼稚園、小学校の休園・休校の影響が広がっている。

休園などにより仕事を休まざるを得ない保護者を支援するための国の制度「小学校休業等対応助成金」の導入が、事業主である企業などに申請や協力を拒否される事例が相次いでいる。

その場合、保護者自らが労働局に通告する必要があるなど制度利用のハードルが高く、当事者からは制度の改正を求める声もあがっている。

「この制度の利用を会社にお願いしたら、『子どもがいる人だけに手続きするのは、公平性がない』と断られてしまいました。月の4分の1の収入が減ることになり、生活費に影響が出るため、やはり不安です」

BuzzFeed Newsの取材にそう語るのは、横浜市の30代女性だ。5人の子どもを育てながら介護施設で働いているが、保育園が休園に。シフトが決まったあとからの有給申請もできず、1週間ほどの休業を余儀なくされた。

「小学校休業等対応助成金」は、新型コロナウイルスの感染拡大による休校や休園、自粛要請やオンライン授業、さらに子の感染や濃厚接触認定などで休業を余儀なくされた保護者を支援する国の制度。休業に対応する「特別有給」を設置した企業などに、国が賃金相当額(上限あり)を支援する。

正社員や非正規雇用にかかわらず利用ができるのが特徴だ。また、フリーランスも対象となっている。現行のものは、今年3月末までが対象。ワクチンの付き添いや副反応の看護も対応する方針という。

保護者から特別有給の設置の求めに企業などが応じない場合、個人申請をすることができるが、まずは労働局に相談をする必要がある。この場合、労働局は事業主側に制度の運用を働きかけ、それでも応じない場合、保護者が個人で「休業支援金・給付金」を申請をするーーという流れになる。

「休業支援金・給付金」の必要書類には、企業などの協力も必要で、拒否をされる可能性もあるなど、ハードルは決して低くはない。さらに大企業に勤める正社員は対象外で、支援金も満額分にならないというデメリットもある。女性はいう。

「労働局から会社側へ通告をされてしまうと、今後働いていく上で会社との関係性が悪くなってしまうのではないかと不安です。私は前回の申請でも拒否をされ、悔しい思いをしたので今回は労働局に相談しましたが、申請をあきらめる人もたくさんいると思います

「それに、会社が特別休暇扱いにしてくれていたらすぐお給料に反映されますが、助成金の個人申請に切り替えたら支払いまでどのぐらいの期間を要するのだろうとの不安もあります」

そのうえで女性は「子どもを抱えて働いていると仕事と保育園の板挟みになり、とても辛いです。助成金を把握していない企業さんが多いのかもしれません。手続きも会社からすると面倒くさいのかもしれません。手続きを簡素化し、個人でも申請できるようにしてほしい」と語った。

「助けて」という書き込みも

この制度は、新型コロナウイルス拡大初期の2020年4月、当時の安倍晋三首相による一斉休校を機に創設された。

当初は「個人申請」の仕組みがなかったが、保護者たちからの訴えを受け、制度が改正されたという経緯がある。

この時に声をあげ、署名運動や申し入れの活動をした「小学校休業等対応助成金の個人申請を求める親の会」事務局の沖田麻理子さん(41)は、BuzzFeed Newsの取材に問題点をこう指摘する。

「私自身も勤め先に制度を使ってもらえなかった当事者ですが、個人申請は簡単にできるものではない、厳しいものだと感じています。制度の利用を一度断られているなかで、労働局に話をして、そこから会社に連絡があるというのは、恐怖でしかない人もいるはず。これは当初から指摘していたことでした」

会にはいま、当事者40人近くが参加している。個人申請を断られたり、申請後に退職を余儀なくされたりした人も、いるという。

「そもそも子育てをしながら仕事をし、会社に交渉をしたり、労働局に相談したり、個人申請の場合の書類を用意したりするのはとても大変です。間に会社を入れない簡単な制度設計にするのが本来であればベストだと思っていますが、日々の生活を一生懸命やっている末端の人間たちの困りごとは、なかなか国の中心には届いていないのかなと感じてしまいます」

Twitter上には、同じように悩む保護者の声が相次いで書き込まれている。「労働局に連絡するな、クビにする的なことを言われた」として、「有給もお金もありません。助けて」という悲痛な叫びを、岸田文雄首相に直接メンションしたものもあった。また、事業主に対し、制度の義務化を求める声もあがっている。

制度の変更を求め、会では今後、こうした声を再び申し入れなどを通じて国や与党に伝えたり、SNSで積極的に発信を続けたりしていきたいという。

国会では大臣が…

この問題は、2月1日の衆議院予算委員会でも取り上げられた。

後藤茂之・厚生労働相は、制度の導入を拒否された保護者からの相談を受け、労働局が企業などに働きかけたケースが昨年9月以降1010件あったと答弁。

さらに、「特別休暇制度の導入や、労働者が個人申請を行う際の協力について事業主にご理解いただいたものや、検討するとされたものの割合は約9割」だったと明かした。

一方で、残りの1割の人や、制度の対象になりながら利用ができない人の人数などについては、「対象が非常に広く、ご指摘の人数についてお答えすることは困難」とした。

質問をした共産党の宮本徹議員は「非正規雇用の1人親だったりしたら、本当に深刻な問題になる」と指摘。労働局に相談できない保護者もいる点や、雇用主を挟む個人申請の仕組みを簡素化すべきと求めた。後藤厚労相の回答はこうだ。

「何とか厳しい状況にある方を、対応をしなければならないという委員のご指摘については、よく理解をさせいただきました」

「法律上の制度の仕組みでございますので、なかなか難しいご要請だと思います。しかし、いずれにしても少しでも良い形で改善ができないかの道を探ることは必要だという風に思っております」

助成金を担当する厚生労働省の職業生活両立課の担当者は、BuzzFeed Newsの取材に対し、指摘されている課題は把握していると回答。「今後も制度の周知や問い合わせへの対応、さらに労働局を通じた事業主への働きかけをしていく」と話した。

そのうえで、制度の仕組みや対象についてはコールセンター(0120-60-3999)やLINEを通じた相談を、雇用主に拒否された場合などの相談は、居住地の労働局の特別相談窓口の利用を呼びかけた。

相談窓口の一覧はこちら。