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妊婦のコロナ感染経路の「8割」は… 専門家がいま、呼びかけること

産婦人科医が指摘しているのは、妊婦におけるふたつのリスク。重症化しやすいことと、コロナに感染した妊婦を診られる医療機関が限られてしまうという現実だ。

新型コロナウイルスに感染し、自宅療養をしていた8ヶ月の妊婦(30代)の緊急搬送先が見つからず、自宅での出産後、男児が亡くなるという痛ましい事態が千葉県内で発生した。

妊婦のコロナ感染の8割は、パートナーからの感染だ。一方で、今回のようにコロナに感染した妊婦は、受け入れられる病院が限られてしまう現状もある。

東京都では妊婦の陽性者が7月だけで約100人いた。こうした状況を受け、ワクチンの妊婦やパートナーへの優先接種をはじめる自治体も出てきている。また、産婦人科医や学会も、強くワクチン接種を呼びかけている。

「妊婦さんは自分だけでなく、赤ちゃんと2人分の命ですので、ぜひ打たれた方が良いと思います」

千代田区が8月18日に公開した動画(テキストも公開)では、同区で開業する産婦人科医・宋美玄さんがこうワクチン接種を呼びかけている。

宋さんが指摘しているのは、妊婦におけるふたつのリスク。重症化しやすいことと、コロナに感染した妊婦を診られる医療機関が限られてしまうという現実だ。

「コロナに感染してしまうと40度の熱が1週間以上続いたり、妊婦さんは多少重症化しやすいということもあります。また、何といっても残念なのが、妊婦さんがコロナに感染した場合、診てくれる医療機関、入院させてくれる医療機関が一般の方に比べると、さらに限られてしまうという現状があります」

「身体的な面でも、入院しづらいという社会的な面を考えても、やはりワクチン接種でコロナの感染を防ぐメリットの方が大きいです」

「デルタ株が猛威を振るっている今にあっては、コロナにかかることに比べたら、ワクチンの副反応のリスクはだいぶ少ないのではと思います」

「デマを信じるよりも…」

妊婦へのワクチン接種をめぐっては、「不妊になる」「卵巣に蓄積する」「流産する」「先天的な異常につながる」などという誤情報も拡散している。宋さんはこれらの情報を明確に否定する。

「基本的に打ったワクチンの成分が胎盤を通って赤ちゃんに移行することは、まず考えられません。ワクチンを打ったことで、赤ちゃんに先天的な異常が起こるようなことに関しては、まず心配は無用だと考えます」

「実際にワクチンを打った後に妊娠して診察に来られた方も、私の患者さんだけでもたくさんいますし、実際に治験の後に妊娠した方も、すでにたくさんいらっしゃいます。コロナワクチンを打ったから不妊になるということは、完全なデマと言って差し支えないと思います」

一方で新型コロナの後遺症として男性の精子が減ってしまうケースもあるとして、「デマを信じるよりも、コロナへの感染をワクチンで防いだ方が、将来お子さんを授かりたい方にとっては良い」と訴えた。

妊婦だけでなく夫やパートナーも…

妊婦のワクチン接種をめぐっては、日本産科婦人科学会などが8月14日、「妊婦さんは時期を問わずワクチンを接種することをお勧めします」とする声明を発表している。

高熱や頭痛などの副反応が出た場合は、「アセトアミノフェンは内服していただいて問題ありません」ともしている。

加えて、前述の通り、妊婦の感染経路の8割が配偶者やパートナーによるものであるため、「妊婦の夫またはパートナーの方は、ワクチンを接種することをお願いします」と、さらに強いトーンで呼びかけている。

前出の宋さんも「出口はもうほぼワクチンしかない状態」と語る。自治体や病院によっては妊婦やパートナーへの優先接種を実施しているところもある。

普段から基本的な感染対策をとるだけではなく、うてるときにワクチンをうつことも大切だ。