オーストラリアで続く大規模な火災。「NASAが撮影した衛星写真」として、世界中に拡散している写真がある。
結論から言うと、これはNASAのデータを元に合成された画像であり、衛星写真ではない。拡散している情報は「誤り」だ。BuzzFeed Newsはファクトチェックを実施した。

オーストラリアでは2019年9月ごろから各地で森林火災が発生している。
BBCなどによると「高温と乾燥した気候」により200件以上の火災が起きる、「前代未聞の事態」が続いているという。
これまでに1200軒以上の家屋が被害を受けたほか、数百万ヘクタールが焼け野原になったとされている。
また、オーストラリアの環境保護団体「The North East Forest Alliance」によると、この火災の影響で、2000匹以上のコアラが死に、北部海岸エリアにおけるコアラの生息地の約30%が焼失したという。
SNS上では、新年から被害の実情を訴える投稿が相次いだ。「NASAの衛星写真」もそうした状況で拡散した。
「写真ではありません」と自ら強調
日本でも「NASAによるオーストラリアの山火事の様子」「宇宙から見たオーストラリア」などとして拡散したこの画像。
実際は、オーストラリアで写真やポストプロダクションを手掛けているAnthony Hearsey氏が作成した合成画像だ。
氏自身のFacebook投稿によると、NASAが作成した火災に関する2019年12月5日〜20年1月5日までの衛星データを3Dで視覚化したものだという。
そのうえで、一部がレンダリングのために少し誇張されていること、すべての領域がいまも燃えているわけではないことも留意事項として示している。
なお、画像が世界中で拡散したあと投稿には「こんなに拡散すると思わなかった。まず下記をちゃんと読んでください」と加筆された。
そのうえで、「これは写真ではありません」「(地図上にレイアウトされた)綺麗なチャートのようなものだと考えてください」と改めて強調されている。
作成者も多少の誇張があることを認めているこの合成画像を、「衛星写真である」と拡散することは間違いだ。あくまで、今回の火災の深刻さを考えるヒントとするために作成されたものだと考えるべきだ。
過去の写真も拡散

オーストラリアの火災をめぐっては、過去に起きた森林火災の様子が今回の写真として広がっているものもある。
たとえば5万以上リツイートされた上記のツイートは、右上の写真は2013年のもの、右下の写真は2009年の火災ものだ。
また、このツイートにもあるように、日本のメディアで「火災が報道されていない」という情報もたびたび拡散している。実際は複数のメディアで報じられており、これもやはり誤りだと言える。
2018年に起きたアマゾンの森林火災でも、同様の現象が見られた。
前述の通り、オーストラリアで続いている火災が、極めて大規模で深刻なものあることには、違いはない。
とはいえ、SNS上の「パニック」とも言える状況に巻き込まれないよう、センセーショナルな情報を目にした際は注意が必要だ。
BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。
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- ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
- ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
- 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
- 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
- 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
- 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
- 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
- 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。
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レーティング表記を修正しました。