死刑執行数、上川法相は「歴代最多」ではない 23人同時サインの法相も

    執行命令を下したのはオウム死刑囚13人を含む計16人だが…

    オウム真理教をめぐる一連の事件で、13人の死刑囚全員に刑が執行された。

    時事通信

    7月6日に麻原彰晃死刑囚ら7人が死刑となり、26日には残りの6人にも刑が執行された。

    同一事件の共犯者の死刑は同時執行が原則とされているが、ともに7人、6人という大人数が同じ日に執行されるのは、極めて異例だ。

    そもそも死刑の執行は刑事訴訟法に基づき、法務大臣の命令によって行われる。

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    同法476条では、「法務大臣が死刑の執行を命じたときは、5日以内にその執行をしなければならない」と定められている。

    上川陽子法務大臣は2回の在任期間で、オウム死刑囚13人を含む計16人の執行命令書にサインをしたことになる。

    Twitter上などでは、「上川法務大臣の死刑執行数が過去最多」という指摘もあがっている。ただ、これは正確ではない。

    Kim Kyung-hoon / Reuters

    毎日新聞東京新聞は「最多」という見出しを取っている(デジタル版)が、それぞれの記事中でも示されている通り、日本で死刑が一時的に執行されなくなっていた1989〜93年以降では最多ということで、現行憲法下での最多ではない。

    再開されて以降は鳩山邦夫氏の13人だったが、現行憲法下では、さらに多くの執行命令書にサインをした法務大臣もいる。

    たとえば、1966〜67年に在任していた田中伊三次氏は、1度に23人の執行命令書にサインをしたことがある。

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    田中氏は命令書にサイン後、記者会見をしたという話も残っている。

    現場に居合わせた元毎日新聞記者の勢藤修三氏は、著書「死刑の考現学」でこう振り返っている。

    田中は新聞記者を前にことさら深刻げな面体を作り「只今二十三人の死刑囚の方々の執行命令にサインしました」とうず高い書類を指さした。各社のだれもが仰天した。

    われわれは田中に、かかる厳粛なるべきことをれいれいしく公開した真意を訪ねたが、田中はこれに答えず「みなさん、このことを新聞にお書きになっても結構ですよ」といってのけたのである。

    記者クラブでは「無視すべし、書くべきだの両論に分れた」といい、「結局、書いたのはサンケイ一社と記憶している」とある。

    田中氏は、サンケイのカメラマンの注文に応じ、「数珠を片手に殊勝らしく書類にサインするポーズをカメラに収めさせ」たという。

    実際、元「サンケイ」記者の俵孝太郎氏もこの会見のことを、著書「政治家の風景」にこう記している。

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    この発表を無視して記事にしなかった記者も多かったが、私は記事にした。死刑は、密行主義、といって、いつ、どこで、だれに対して執行したかについて、公式な発表はしないことになっている。

    いかにも自己顕示的な田中のやり方には問題があるにせよ、密行主義に風穴をあけるためにも、書いた方がいいというのが私の判断だった

    この会見が実施された日について、勢藤氏は1967年の「10月16日夕刻」のできごととしている。

    ただ、BuzzFeed Newsが翌日の産経新聞(名称はサンケイ、国会図書館所蔵のマイクロフィルム)確認したところ、同様の報道は見当たらなかった。

    なお、田中氏のWikipediaにも、この情報をもとにしたと思われる記載があるが、日にちは「10月13日」となっている。

    大量の執行は、田中氏に限らない。

    Kim Kyung-hoon / Reuters

    1940〜50年代には、年間39人の死刑を執行した年度もある。ただ、法務大臣ごとの執行数は不明だ。死刑に関しては長年、年度ごとの執行数しか公表してこなかったからだ。

    法務省が死刑執行の事実と被執行者数を公表し始めたのは1998年のため、それ以前の「同日執行」や、各法務大臣による正確な執行件数はわからない。

    ただ、各年の統計と在任日数を照らし合わせると、1948〜50年に在任した殖田俊吉氏は少なくとも33人(役職は法務総裁)の、50〜51年に在任した大橋武夫氏(同)、52〜54年に在任した犬養健氏は少なくとも24人の執行命令を下していることになる。

    一方、一切のサインを拒んだ大臣もいる。

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    たとえば田中氏の次代に在任(1967〜68年)した赤間文三氏は、秘書課長から暗にサインを促されるたび「勘弁してくれ。そんなことをしたら今度はオレにお迎えがくる」と拒否していたという(死刑の考現学より)。

    また、3年4ヶ月にわたって死刑が停止されていた期間の当初に在任(90〜91年)していた左藤恵氏(写真)は、自らが真宗大谷派の住職であるという宗教上の理由で執行を拒否。

    2005~06年に在任していた杉浦正健氏も就任会見で、宗教観や自らの哲学を理由に「サインしない」と発言。1時間後に撤回したが、10ヶ月の在任中には刑を執行しなかった。

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