6月23日、東京都議会議員選挙が告示されました。小池百合子都知事率いる「都民ファーストの会」と自民党都連の戦いに注目が集まっています。
小池知事と言えば、会見などで様々な「横文字」を使うことで有名です。応援演説でも、「ワイズ・スペンディング」が飛び出しました。
小池知事は待機児童問題や高齢化に言及し、「13兆円というスウェーデン一国に匹敵するこの東京都の予算をワイズ・スペンディング、賢い支出にしていかないといけない」と指摘。こう続けました。
「そのためにも、皆さんの代表であるその都議会には、しっかりとワイズ・スペンディングをチェックしてもらわなければなりません」
なぜ、横文字を使うんでしょうか。告示前のBuzzFeed Newsの単独取材に対し、小池知事は「横文字になるのは日本にそのコンセプトがないからだと思いますね」と答えています。
そのうえで、「横文字」を活用しない日本メディアの批判もありました。
「日本のメディアは日本語に守られすぎで、煮詰まっていると思いますね。日本語の論理だけで回していると、世界はもっと動きが早いですよ。乖離してしまう」
「そういう世界で日本とか東京が生き残らないと、存在そのものがもはや、なくなってしまいますよ。だから私は世界に向けて一生懸命英語、アラビア語で発信しているんです」
グローバル化が進む中、日本語では概念化されていない言葉を使い、それによって多くの人が意味を知ることが大切なのだそうです。
ということで。ワイドショーではありませんが、小池知事が使ったいくつかの「横文字」をリストアップしました。
1. ワイズ・スペンディング(Wise spending)
直訳すると、「賢い支出」になる英語。
告示日の演説でも語っていた単語。都議会の予算を見直そうと訴えるために使ってきました。2017年2月の所信表明では、予算案に触れる文脈で使っています。
今後の社会保障やインフラの維持更新など、都は膨大な財政需要を抱えております。まさしく「ワイズ・スペンディング」、賢い支出が求められる中、「新しい東京」の実現に向けた真に必要な投資を積極的に行う
2. サスティナブル(Sustainable)
「持続可能な」を意味する英語。
2016年9月、就任直後の所信表明ではこんな風に活用していました。
誰もが希望と活力を持って安心して生活し、日本の成長のエンジンとして世界の中でも輝き続けるサスティナブル、持続可能な首都・東京を創り上げることであります。
また、名詞の「サスティナビリティ」(Sustainability、持続可能性)を使うこともあるようです。
3. ダイバーシティ(Diversity)
「多様性」を意味する英語。都市(City)と掛けて使っているようです。
小池知事が選挙戦のときから訴えてきたテーマ「セーフ シティ」「ダイバーシティ」「スマートシティ」のうちのひとつです。
「サスティナブル」と同じく就任直後の所信表明では、目指す東京像を述べる際にこう活用しました。
女性も、男性も、子供も、シニアも、障がい者も、いきいき生活できる、活躍できる都市。多様性が尊重され、温かく、優しさに溢れる都市。そのような「ダイバーシティ」を実現してまいります。
4. レガシー(Legacy)
「遺産」を意味する英語。
五輪の後に残ることになるインフラや、社会的に引き継がれる文化などを指して使われています。たとえば、2016年12月の所信表明ではこのように。
皆様に長く愛されるレガシーを遺すための投資をしっかり行い、大会を成功に導いてまいります
ちなみに、大会組織委員会のサイトには「アクション&レガシープラン」があります。こんな文章です。
スポーツ以外も含めた様々な分野でポジティブなレガシーを残す大会として成功させなければいけません。東京2020大会組織委員会は、多様なステークホルダーが連携して、レガシーを残すためのアクションを推進していく
ステークホルダー(Stakeholder)は「利害関係者」という意味の英語です。
6. ユビキタス(Ubiquitous)
「偏在する」という意味のラテン語に由来する英語。「あらゆるところにある」という意味で使われ、いつでもどこでもインターネットにアクセスできる環境を指します。
2017年6月、築地市場の豊洲移転問題についての会見で飛び出しました。豊洲市場をどう強化していくかという内容です。
豊洲市場でございますが、冷凍冷蔵・加工などの機能を今もこれをベースに作られたものでございますけれども、そこを一層強化をして、ITを活用するユビキタス社会の物流、総合物流拠点となる中央卸売市場になると考えております。
7. フィンテック(Fintech)
「Finance」(金融)と「Technology」(技術)を掛け合わせた造語。ITを駆使した金融サービスなどに対して使われます。
2017年6月の所信表明演説では、東京の成長戦略に触れる場面で飛び出しました。
IoT、AI、フィンテックなど、日本経済の中長期的な発展の鍵を握る先端分野。これらの活性化は、東京の成長戦略の中核であります。
ちなみに「IoT」は「Internet of Things」(モノのインターネット)のこと。家電や自動車などをはじめとしたさまざまなデバイスがつながることを意味します。「AI」(Artificial Intelligence)は人工知能を意味する英語です。
9. アウフヘーベン(Aufheben)
矛盾・対立する2つの概念を、その状態を保ちながら、より高い次元段階で統合、発展させることを指す、弁証法の哲学用語(ドイツ語)です。
2017年6月、築地市場の豊洲移転問題に関する会見で出てきました。小池知事が雑誌のインタビューでこの言葉を使った意図を、記者が問うたためです。
「アウフヘーベン」というのは、一旦立ち止まって、そして、より上の次元にという、日本語で「止揚」という言葉で表現されますが、これまで安全、安心、法的、科学的、さまざまなチェックが行われてきました。
そういったことを全部含めて、どう判断するかという、そのための「アウフヘーベン」が必要だということを申し上げた。
ちなみにBuzzFeed Newsの取材中、小池知事は「アウフヘーベンはアウフヘーベンでしょう」と説明していました。