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「新型コロナ感染者、ほとんどが外国人」は誤り。元東大特任准教授らがグラフ拡散

ネット上で広がっているのは、「流行曲線:日本国籍とそれ以外」「日本人は累計でグラフの18%」などとするグラフだ。出典は明らかではなく、厚生労働省の担当者も、「多くは日本国籍であると推測できる」と否定している。

新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、感染者のほとんどが「外国人だった」などとして、グラフが拡散している。

7月ごろから広がりを見せているものだが、こうした解釈は「誤り」だ。グラフは「日本人と国籍不明者」の人数をまとめているが、そもそも厚労省は「国籍不明者」の発表を行っていない。

感染者の国籍については公表しない自治体などもあるが、厚生労働省の担当者は「多くは日本国籍であると推測できる」と述べている。BuzzFeed Newsは、ファクトチェックを実施した。

Twitterより

ネット上で広がっているのは、「流行曲線:日本国籍とそれ以外」「日本人は累計でグラフの18%」などとするグラフ画像だ。

「日本人」と「国籍不明」の人数を比較したグラフで、今年7月ごろにTwitter上に出現し、「新規感染者の実態は、殆どが国籍不明者」との文言で4千以上リツイートされた。

現在拡散しているグラフも7月のものとよく似ており、11月までの情報が加筆されている。同じ人物が作成した可能性が高い。

また、グラフにはそもそも「外国人」とは一切明記されていないにもかかわらず、複数のアカウントが、以下のような文言で拡散している。

「これはひどい!。群馬県山本一太知事が言っていた通り、外国人は8割だったと。このグラフと同じぐらい。外国から感染者の観光客が入国?」(11月22日、2500以上リツイート)

「【悲報】新型コロナ感染者、ほとんどが外国人だった」(12月4日、2000リツイート、差別発言で懲戒解雇となった元東大特任准教授による)

こうしたツイートには、「これが本当だったら、許しがたい」「外国人は治療目的の入国」「私たちの血税が日本人患者より多いこの外人患者にも使われている」などというリプライや引用コメントがついている。

厚労省「多くは日本人と推測」

Twitterより

拡散しているグラフ自体にソースは一切明示されていないが、その数値などからしても、厚生労働省が発表している「国内発生動向」を引用しているとみられる。

この動向は、各自治体から送られる個票を厚労省がまとめたもの。陽性者のうち「日本国籍が確認されている者」や「外国籍が確認されている者」の人数も公表されている。

ただし、動向では「国籍不明者」という人数は公表されておらず、全体数などから「日本国籍」と「外国籍」の人数を引いて「それ以外」の人数を算出している可能性が高い。

こうして算出した「それ以外」の人数は、日本人よりも多くなる。しかし留意が必要なのが、そもそもここには「国籍を確認中」だったり、自治体が個別の国籍を公表していなかったりするケースが多く含まれているという点だ。

厚労省新型コロナウイルス感染症対策本部サーベイランス班の担当者もBuzzFeed Newsの取材に「日本国籍が確認されている者」は、あくまではっきりと国籍が確認できたものに限っている、と指摘。

「確認中もしくは公表していない自治体もあり、それ以外の人数が必ずしも外国籍というわけではありません」と回答した。

つまり、ある自治体が送ってきた感染者が全員、日本国籍であっても、その自治体が国籍の内訳を公表していない限り、「日本国籍が確認されている者」としてはカウントされない。

12月2日時点でも「日本国籍が確認されている者」が26505人なのに対し、「外国籍が確認されている者」が1522人であり、こうした感染状況からすれば、「それ以外の人数も、多くは日本国籍であると推測されます」と述べた。

群馬では「8割」?

時事通信

なお、拡散したツイートで引用されている群馬県の山本一太知事の発言は9月25日の会見のもので、その週の県内の感染者の8割が外国籍だったと発言している。

しかし、これはあくまで特定の1週間の状況であり、群馬県の累計感染者数の8割が外国籍というわけではない。

また、外国籍感染者のほとんどは、県内在住・在勤の定住外国人だという。群馬県はその後、駐日ブラジル大使を招いて県内のブラジル人コミュニティと懇談を行ったりして、日本語での情報収集が難しい外国籍の県民に感染拡大防止策や感染が疑われる時の対応策などを伝え、状況は変わっている。

山本知事は11月12日の会見で、発言の意図をこう説明した。

「公表にあたっては、差別や誹謗中傷を懸念し、内部で相当な議論を行った。しかし、必要な対策を取るため状況を事実として公表することが必要だと判断した。でなければ市町村や大使館、企業などと連携し、外国籍コミュニティに感染予防策などを母国語で伝えるのが難しい状況だった」

「こうしたことを通じて何とか感染拡大を食い止めることができたと思う。現状を正しくご理解いただき、外国籍の県民に対する差別や誹謗中傷は絶対に行わないよう、改めてお願いしたい」

国籍を「公表しない」理由は

感染症をめぐっては、一類感染症についての「患者発生に関する公表基準」が取りまとめられており、これに基づいて情報が一般に公開されている。

「個人が特定されないように配慮する」目的で「公表しない情報」も定められており、国籍は「一時的な旅行者か居住者かわからない」ことも理由として、氏名などとともに、ここに加えられている。

厚労省は2月27日に新型コロナウイルスを含んだ一類感染症以外の感染症についても、この基本方針を参考にするよう各自治体に事務連絡を通達している。

なお、厚労省の担当者もこの基準に触れながら、そもそも感染抑止のためには国籍ではなく、居住地や海外渡航歴が重要との見解を示している。

新型コロナウイルスの感染拡大をめぐっては、当初から「感染者のほとんどは国籍不明」「3分の1が外国籍」などという情報が拡散。11月末〜12月頭にも「感染者上位の多くが中国人」などという情報も広がっていた。

感染拡大当初は厚労省が「国籍確認中」の人数も公表していた。この人数が、「日本人」と「外国人」に比べ多かったことから、こうした疑義言説が広がるきっかけとなったようだ。

しかし、前出の通りそれ以外の多くも「日本国籍であると推測」される状況があることから、「感染者のほとんどが外国人」などとする解釈は誤りだと言える。

拡散する言説の多くはそれらしい「グラフ」や表が添付されていることもある。差別的な言動につながりかねない、ソースのはっきりしない、もしくは恣意的なデータの扱いには注意が必要だ。


BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。

ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説の一部は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知、参考にし、リサーチャーの協力を得ました。

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  • 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
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  • 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
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